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境界世界のブリガンテ  作者: りくつきあまね
エリス=ベェルフェール
12/36

――― 計略綴り ―――

 深淵以上の常闇を照らすように銀色の髪が煌めく。

「彼の魂の奪取、及び【事象隷属経典アポカリプス】の創生はご覧の通り失敗に終わりました」

 肩に掛かる長い金髪を後ろへ払いながら、落ち着き払った声音で告げる一人の女性。

 常闇に溶け込むように統一された黒のシャツとスラックス、その上には黒のロングコート姿の女は頭上に映し出された映像――――『死神』の死が確定した瞬間。その一場面で停止た映像に小さくため息を付き言葉を続ける。

「未だ不完全とはいえ覚醒されては高位の『死神』でも打つ手なしだったようです」

 延々と闇だけが広がる空虚な世界で女はたった一人で佇み、


『必然。彼の者は理の外の存在』


どこまでも無機質な声音と共に深淵に紅い波が打ち、静かでありながら重い脈動が響く。

 抑揚のない重く硬質的な声音に、女は別段驚いた様子も見せずゆっくりと頭上へ顔をあげ、投影された映像に眼を細める。

 光のない冷たい碧の双眸に映し出されるのは銀髪の少年――――萩月凜はぎづきりん


『神の系譜に連なる者であっても、理の内なる愚者に勝てる道理など無し』


 体を締め上げるように重たい威圧感を放つ姿なき主に、女は楽しむように口元を緩ませる。

「確かに。ですがの彼であれば、まだ理側の我々でも攻略は可能です」



『無論。手段は十二分』



「次の手を打つべきかと」



『模索。次なる一手…………我が同胞にて、我が子等」



 常闇に息づくように赤い波紋が広がる。

「…………まさか【煉獄支柱れんごくしちゅう】ですか?」

 女は対峙している無形の存在の発言に、眉を寄せた。



『妥当。彼の者に対し、過信も慢心も無し』



 女はやむをえまいと小さく息を付き、体の奥底から膨れ上がる感情に瞳を尖らせる。

「数は?」


『確定。【煉獄支柱れんごくしちゅう】の七柱を許可』


 重厚な声音と共にもう一度赤の波紋が常闇を揺らし、



『同時。彼の者を除く障害……【殲滅斬手せんめつざんしゅ】の排除、および汝が『血族』の排除の進言』



 女は小さく頷き、

「【殲滅】と『血族』は私があたります。それと七柱とのことでしたが……一柱を除き、六柱の召喚を行います。それに支柱を二柱程【殲滅】狩りに御借りしても?」

対峙者に問いかける。



『是非。手段は自由、汝の赴くままに示せ』



「ありがとうございます」

 姿無き対峙者に女は誠意に深く頭を下げ、体を起こすと同時に視線を正面へ向け――――両手を前に突き出す。

「創生に使用する肉体および魂は先に収集した『死神』達のモノを依り代に」

 その言葉に合わせ、女を取り囲む様に暗闇から六の黒い柩が突き上がり、

「肉体の創生を開始。同時進行により【煉獄支柱れんごくしちゅう】六柱の魂召喚を行う」

紅の波紋が黒の柩を嬲り、強烈な血色の閃光が場を裂いていく。

 全ての柩がその身を漆黒から深紅へと墜とし、



『断罪。己が利の為に犯した罪は、自ら断つべきモノ』



平坦だった声が初めて強い感情に震えた。

 それはどこまでも冷徹で。


『愚行。世界の創者とて許されることばかりではない。絶対たる支配者さえも、償いの運命から逃れること叶わず』


 どこまでも苛烈で。


『贖罪。故に――――――』


 どこまでも苦渋にまみれた――――――哀しい想い。






『――――――――――――滅べ』






 深淵の常闇と鮮血の如き紅の閃光が互いを喰らう様に溶け込んで、その光景はまるで――――――憎悪にまみれた業火の様だった。




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