【Lv.4 廃オフィス】
どこかで出来た傷にまだ痛みが残っている。
長く乗っているエレベーターはまだ上昇している。
敵に会わないだけマシとさえ思えるくらいに疲弊してしまっている。
動こうという気力があまり残っていなかった。
床に突っ伏して眠るような形で横たわっている。
半目を開けながら扉が開かれるのをただ待つ事しか出来なかった。
チーンと到着の音と共に、ガゴン!と揺れ、身体は少し吹っ飛んだ。
これにはさすがにビックリして、身体を起こして先の展開を待つ。
そこから何か起こる事無く、エレベーターの扉は問題なく開かれた。
急に明るさを感じ、目を隠す。
徐々にゆっくり開けていく。
前の部屋のような雰囲気は1ミリも感じられなかった。
中はビルのオフィス内のような雰囲気を感じる。
窓が一定間隔で存在していて、恐らく外からなのであろう場所から光を感じる。
ちょっと強すぎるような気もするが。
天井に蛍光灯はあるが、何も無いように感じる。
エレベーターから降りて探索する。
家具らしき物は見当たらない。
おや?あれは何だ?
遠くに見つけた物を確認しに向かう。
大きくて四角い形状の物。見覚えがある。
間違いない!あれは自動販売機だ!
小躍りしながら自動販売機に向かう。
品物を確認する。
アーモンドウォーター…と、非常食?
…見た感じはチョコレートバーだろうか?
いや、まだ買えると決まったわけじゃない。
まずアーモンドウォーターの下にあるボタンを押してみる。
ガタガタ…ガコン!
見るとアーモンドウォーターが1本出てきている。
買えた!成功だ!もう一度同じボタンを押す。
同じ物が出てきた。2本手に取り、1本開けてあっという間に胃の中に流し込んだ。
これ程までに嬉しい事が他にあっただろうか。
ぷはぁっと息を吸い込む。今確かに生きている実感がした。
次に非常食らしき物の下にあるボタンを押す。
カコン!と音が鳴って非常食らしき物が出てきた。
それは袋に包まれている。梱包を開けて確認する。
見た目は予想通りチョコレートバーを感じる。
香りを嗅いでみる…。
チョコレートだ!
…一口齧る。
すっごく美味しい〜!!
自身が大人である事も忘れて、子供のようにチョコレートバーにかぶりつく。
疲れとかも何もかも吹っ飛んでいった。
数日も甘味料がある食べ物を食べていなかった反動は相当大きいらしく、嬉し泣きしながら食べている。
何度も何度も自動販売機にある、チョコレートバーの下にあるボタンを押して梱包されているチョコレートバーを出した。
もっと食べていたかったが探索もしないといけない。
さっき買ったアーモンドウォーターを片手に探索を始めた。
ご機嫌になりながら探索をしていると、ウォーターサーバーとトイレマークらしき物、カーテンがかかっているボックス部屋…更衣室らしき物があるのを見つけた。
今まで巡っていた部屋が嘘かのようにこの部屋は天国だ。初めにウォーターサーバーに近づく。
見た目は現実にもよくあるタイプだ。
蛇口を小さく捻ると水が出てきた。
一旦触ってみる…変化なし。
香りを嗅ぐ…無臭。
ゆっくり飲んでみる…普通の水だ。水!
貴重な水が沢山飲めそうだ!
もっと沢山飲もうと手加減知らずで蛇口を捻ってしまい、大量の水が顔に襲いかかる。
あー勿体無い…
全身ずぶ濡れになってしまった。
床には小さな水溜まりが出来ていて、髪もぐっしょり濡れている。汗をかいていたからそれはそれで良かったが。
このままにするのも風邪を引いて良くないので、一先ず更衣室に向かう。ついでに中を探索する為にも。
カーテンをサッと開けると、鏡はないものの、シワやゴミが1つもついて無い新品の服が1式とタオルが1枚セットで置かれていた。
今まで頑張ったご褒美なのか。
にしては都合が良すぎる。
が別にそれは自分の為だ。
有難く置いてあった新品の衣類のセットに着替える事にした。シンプルな物だから着やすい。
タオルで拭いてから着替えて更衣室から出る。
更衣室から出たら最後にトイレマークらしき物があったところに向かう。これも公園やデパート内によくあるタイプのトイレだ。恐らく男女に別れているのであろう、マークが2つある。
中に入ると、此処も現実と変わりがない。
問題ないと判断し、トイレの中に入る。
(やっぱり用をたさない▶︎ https://ncode.syosetu.com/n9780lt/8/)
手を洗ってからトイレ前に出て探索の続きを行った。
眩しい光を放つ窓からは、シルエットが見える。
人魚姫らしきシルエットだが真相は分からない。
ここは敵も存在せず食料が確保出来る貴重な所かもしれない。今迄なら敵に追われて生命に危険があり、逃げる事に精一杯だった。
しかし此処ならゆっくり出来るかも。
幸いにも寒くは無い。
落ち着いて部屋をもう一度見渡す。
エレベーターの扉は開きっぱなしで止まっている。
またボタンを押せば動くだろう。
危険な雰囲気も感じないし、1度睡眠を取ろう。
床に横になり、目をゆっくり閉じて意識を夢の中に託した。
…
同じ場所で目覚める。
何も変わっていない雰囲気にホッとして、背伸びをする。
手元にあったアーモンドウォーターを飲んだ。
やっぱりどこか安心する味がする。
天国のような此処にいつまでも居たかったが、帰る為には行かなければならない。名残惜しそうにその部屋を見ながらエレベーターに乗る。
エレベーターに乗り、ボタンを押して扉を閉める。
エレベーターは動きだし、また何処かに向かっているのである。
防護服の男がくれたいくつもの紙は、ぐっしょりと濡れたまま元々履いていたズボンの中で、サラサラッと消えていった。




