【Lv.3 電気局】
光が漏れている扉を勢いよく開け、白く輝いて何も見えない場所に、突撃するかの如く中に入っていった。
勢いよく入ったと同時に、身体が床に打ちつけられた部分に痛みが走る。逃げられた事に安心を覚えたが、現実はすぐに残酷な真実を目に見せつける。
艶のあるレンガの壁、パイプの中に流れるエネルギー源と高熱の液体が混ざり合い、雑音が鳴っている。
それのせいか、すごく暑い。
さっきの部屋より幾分かマシだが快適とは言えない。喉の乾きが更に進行していくのが嫌でも分かる。
一言言うならば、電気局の重要な部分が沢山集まっている場所に思える。
用途不明な機械がたくさんあり、どれも自身の役割を果たす為に動き続けている。
何処へ向かうかの選択肢はたくさんあって困りはしないが、迷わないかが不安だ…
こっちにしよう。と独り言を呟き決めてから進んでいく。
行先の道が途中少し狭くなり、しゃがんで歩いていかないと通れない道もあった。
窮屈というわけでもなく、かと言って快適とも言えない環境の中、手足を動かし前に進んでいく。
通った道でもそうだが、切れたケーブル線があちこちにある。電気が満ち溢れているのかバチバチ音を立てている。そんな中を歩いて行かないといけないのだ。
生を感じなかった。いつ感電してもおかしくない。
そんな中を探索なんて控えめに言って正気ではない。
しゃがみ歩きで通り抜けた先の広くなった部屋で、小休憩をとる事にした。暑さによって流れ落ちる汗と冷や汗をかきながら、汗を服で拭う。息を整えて何とか落ち着かせようとする。
どこからか転がってきた空き缶のような物がコロコロと音を立てて転がってきた。
不明の機械の傍を通り、カコンと当たる。その瞬間、缶に複数の衝撃が襲いかかり、缶はぐしゃぐしゃになった。
今迄は現実ではありえない事が、当たり前に起こる世界だとは分かっているが、 到底信じられないのだ。
ヒッ…と一瞬声を上げ躊躇うが、いつまでも此処にいるわけにはいかない。雑音とむき出しのケーブルに囲まれながら次の目的地に辿り着く為に走り出した。
というよりすぐその場から逃げ出すかのように。
あの場面を見せられてからはすっかりパイプにトラウマを植え付けられたようで、ビクビクしながら歩いている。無理もない。無邪気な無機質が、意味を問われる事無く生命を奪いに来ていたのだ。
極力自分から近づかないようにした。
歩いている途中に、ドアがない部屋があった。
中は暗く、何かの電力であろう機械が音を立てて動いている。特に重要な物はないと判断し、先に進む。
道中パイプを目にしては、恐怖心が煽られる。
ここで負けるわけにはいかない。
頭を横に振って頭の中を空っぽにする。
探索し始めて何部屋か回った頃、戻り道の方から聞こえてくる。
ヒタ…ヒタ…と聞き覚えのない音が響く。
何処からだ!?慌てふためきながら警戒する。
その音は徐々にこちらに近づいてくる。最も恐れている事が起き始めている。それはすぐに正体を現した。
犬のように四つん這いで人間の顔のようにも見えるそれは、自身の身長の2倍…
…いやもっと?
とにかく大きく、フシュウウウ…と唸りながらヨダレをダラダラ流してこちらを見ている。
顔からサーッと血の気がどんどん無くなる。
いざ目の前にすると、この化け物はこんなにも恐ろしいモノだったのか。
足は言う事を聞いてくれずにガクガク震え出す。
頭は真っ白に気を失ってしまい楽になりたかった。
許されるはずもなく化け物がこちらに向かってくる。
同時に我に返り死に物狂いで化け物から逃げ出した。
地面を足で蹴り出し走るその姿は、敵から難を逃れる為だけに生を与えられた生き物。傍から見たら滑稽だろう。
こんなにも障害物が邪魔な事にどれだけ腹立たしいと思ったか!
相変わらず危険な電気が流れるチューブに、汗が吹き出る暑さ。それさえも忘れてしまう巨大な化け物。
化け物も障害物には当たってしまうようで、避けながらこちらに迫っている。
距離は遠くも近くもならない。
ひたすら走る…
ただ走る!
前を見て走る!
何なんだよあいつは!?
今までの疲労が溜まっており、疲れを十分にとれていない。足は走る事を少しずつ拒み出す。
痛みに変えて訴えてくる。
肺のあたりが痛くなり少しずつ呼吸も苦しくなる。
此処に来てから喉の乾きが更に加速する。
喉の奥から息苦しい息がたまに溢れ出す。
地面に大きな影が出来た。嫌な予感しかしない。
もっと足を前に動かして走る。
化け物が攻撃してきたが、間一髪避ける事が出来た。
次の攻撃に当たらないように足をもっと早く動かす。
それに合わせるように化け物も追いかける。
死の鬼ごっこのようだ。
息を切らして次に繋がる場所を探す。
その間も化け物はずっとずっと追いかける。
終わりが見えない道の先。
ドゴオォォン!!
後ろで機械の爆発音が鳴り響く。
蹴った何かが不明の機械に当たり、時間差を置いてまた爆発する。
爆発が化け物にも当たったようで、グルルル!と鳴き叫びどこかに消えた。自身も爆破に巻き込まれて全身が前に大きく吹っ飛ぶ。乱暴に床に全身をぶつけられ痛みが全身を走り、すぐに起き上がる事は難しい。
くっ…と声を漏らしながらも、ゆっくり起き上がる。
さっきの爆発のせいか、電気が消えて暗くなっているが、全く見えない訳では無い。
身体が痛い。次こそは死んでしまう…。
自分の視界に光が入る。
少し強い光がふわっと後ろから光るのが目に入り感じる。
そちらを振り向く。
前の部屋で見た時と同じように、ぼんやりと光るボタン。
どこ行きかも書いていないエレベーターがすぐ近くにあったのだ。
どうしてもっと早く気づかなかったのか?と思ったが今はそんな呑気な事は考えていられない。
そう考えた時にはもうボタンを押していた。
エレベーターは、静かに扉を開いた。
フラフラしながら乗り込んだと思ったら、その場にへたりこんでしまった。
心はすり減ったままエレベーターは動いた。
その揺れさえも心地良いと感じる程に参っていた。
懐かしさも感じながら、疲れも手伝って眠るように気を失った。
そしてエレベーターは長い時間止まる事はなかった。
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