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【The Back Rooms】  作者:
42/55

【Lv.11η 一服分の夜景】

森の中を歩き、微かな光が見えて登ってきた。

山林と山の麓?にも思える場所に辿り着いていたら見下ろすようにして覗くと、その下には数々の建物の光が見える。


地球にもよくありそうな光景だ。

下に降りていけばあの街にもいつかは辿り着くかもしれないが、食糧も無くなった今、無防備に行ってもただ体力を削られるだけであろう。

 

近くには焚き火が燃えている。

パチパチと音を鳴らしてユラユラと火が靡いている。

 


ふとここである事に気づく。

 

ズボンのポッケの中に、タバコが1本だけ入っていたのだ。そのタバコを手に持ちながらボーッとする。

 

███はタバコを吸った事が1度もない。

故にポッケやカバンの中にタバコを入れる事自体がありえないのだ。それなのに何故か知らぬ間に入っていたのだ。それはどうして?


頭の上に?が沢山浮かびながらも、ハァッとため息を吐き出す。

確かに普通じゃない事が沢山起きる世界だから、こういう事があってもおかしくはないけれども!

これはまた別だ!


それにしても、こんな不思議な事が毎度起こる世界に悠長に長居をするのは得策ではないと嫌でも分かる。否、それはずっと前からか…。

どうするか…頭を掻きながらこの状況を打破する方法を考える。

 



 



 







 

 

 

 

何も浮かばない。

 

 

こんな場所で咄嗟に解決方法を提案してくださいと言われて、即答えられる人がいるのだろうか。いたら尊敬する。

考えるのにも疲れた。


ずっと燃えている焚き火の近くに座る。



心地良い音を聞きながら。


ぼんやりとどこかを見つめる。


風が微かに吹いている。


それに合わせて焚き火も揺れる。



こんな風景、どこかで似たような体験をしたような…なんて思ったりもしたが、それも気の所為かもしれない。

 

来た道をチラッと見る。

ここに来るまでの間、草が動く音や何かが動いた音はしたが、それらしき物に会う事はなかった。


危害を加えられなければそれに超したことはないが、敵が絶対に居ないと保証出来る訳では無い。

焚き火の近くにいるおかげかは知らないが、葉と葉がぶつかり合い擦り合う音が聞こえてもいいものだが、聞こえてこない。


気にも止めはしなかった。

今迄に何回もあったからだ。

 

 

ただ何をするかって言われても、娯楽も道具もないのだ。あると言えば手に持ったタバコ1本のみだ。真顔でそのタバコをじっと見る。銘柄も知らないし、名前を言われてもさっぱり分からない。

生きてきた中で吸った事はなかったが、どうせこの世界を彷徨い息絶えるのならば、今迄やれなかった事でもやってしまおうか…。

 

 

タバコを焚き火に近づけると、問題なくタバコに火がつく。

焚き火の近くにいると、焚き火の煙も一緒に吸い込んでしまいそうだ。火をつけたタバコを持って、来た道とは違う林の中に少し入る。

 

風はまだ吹いていて少し涼しい。

そんな中で、ドキドキしながらタバコに口をつける。少しだけ手が震えているような気がする。

 

 

ゆっくり…


呼吸をするようにゆっくりと…


スゥッ…と吸い込む。




身体は慣れない異物が入ってきた反動で押し返し、ゴホゴホと咳き込むているタバコという物なのか…。

味はしないし、美味し

本当に最悪な気分だ。最悪な気分なのに…。



タバコを吸うのをやめない。




やめないというより、止められなかった。


肺の中に入り込む煙は嫌いなはずなのに。


分かっていても止めてくれない。


暗い林の中にただ1人、普通の人間がタバコに手を取られ、為す術なく踊らされる。

それはそれは愉快な茶番であろう。

 

 




タバコの長さも数cmになったところで我に返り、咄嗟に地面にタバコを投げ捨てた。


目を瞑り手を胸の辺りに抑える。

ハァ…ハァ…と呼吸をする。


体感した事ない感覚が襲いかかっている。

苦しいがそれはすぐに収まる。

フラフラとしながら元いた場所に帰ろうとする。


針葉樹林を抜け出して足を踏み入れる。


しかし着いたのは焚き火が待つ夜ではなかった。


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