表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【The Back Rooms】  作者:
30/55

【Lv.256 η 無限空島】

梯子を登りその先に辿り着いた世界。

時間は昼頃だろうか。

正確な時間は分からないがそれぐらいだ。

何処までも青く広がる空に小さな空島が、上下左右にたくさんある。

RPGで天空のステージがあるなら、それに近いものを感じる。

 

 

此処は外だからだろうが、気温が少し低いようだ。

冬よりかは寒くないが、春より暖かくもない。


ここには一体何があるのだろうか。

何があったって今更驚きもしないとは思うが。

 



『おや、君は...前にも会った事あるよね?もちろん僕は覚えているよ』




後ろから声をかけられ振り向くと、遠い昔にも思えるくらい前に会った事ある、聞き覚えのある声の男が、黒いフードを被りながらそこにいたのだ。

思わぬ再会?に驚いていると男が笑いながら

 

 

『君まだこの世界にいたんだ。てっきり死んだんじゃないかって思ったけど...。まあ生きてるなら良かったよ』

 

 

こちらは笑い事では済まされないくらいには大掛かりな出来事に出会ったんだが...。

そんな少し不機嫌な態度で男も察したのか、一つ咳払いをする。

 

 

『まあ、冗談はここまでにして...。僕は君と初めて会ったあの場所以外にも拠点を持ってるんだ。といっても誰か仲間といるとかそんなんじゃないけどね。群れるの嫌いだし。本当は仕事する時は居ないといけないんだけど…まあそこは仲間が理解してくれてるからさ…』

 

 

苦笑いしながら男は話を続ける。

 



『しかしオフの日に、こうして一度会った君と再会するなんてね。これも何かの縁だ。…一つお願いがあるんだ。この世界で何を見てきたかという、探索者の話は貴重な資料になるんだよね。調査が進んでよりそのレベルに対しての対策がしやすくなるんだ。君に手間をかけさせるのを重々承知の上でお願いしたいんだけど、どんな世界を見たかを覚えてる限りでいいから、教えてほしいな。お礼に僕の拠点に泊めてあげるからさ。ね?悪くはないでしょ?』

 

ここでも悩んだ。

しかし初対面ではないのも事実だし(着ている服は違うが)到底人に話したところで誰も信じてはくれないだろう。

それならば正体は知らない人ではあるが、話して心に整理もつけたい。その話に乗る事にした。

 



『やったあ!じゃあ僕の拠点に来てもらおうかな。

...とその前に、僕の手を握ってから目を閉じてくれるかな?』

 

 

男の言う通りに手を握り、目を瞑る。

男の手は少し大きく、手袋をしているせいか温かさなどは感じられなかった。

 

 

『じゃ、僕がいいよって言うまで開けちゃだめ。いーい?』

 

無言で頷く。

 



『行くよ!離しちゃだめだよ!』

 

 

男が大きな声で言うと、足元が不思議な感じになる。

何が起きているか確かめたくて仕方ないが、必死に男の言う事を守り、強く目を閉じると同時に手を更に強く握る。



...

 

 



 

...

 

 


 

...

 

 

 

 

不安定なバランスは少しずつ安定していく。

 

 

『...お疲れ様!もう目を開けていいよ!』

 

 

明るい男の声にホッとしつつもゆっくり目を開ける。

目の前に見た物に口をぽかんと開けて見上げていた。

 



そこには拠点なのであろう建物が建てられているが、予想していた大きさより10倍は大きいのだ。

色は白く、材質は何で出来ているか分からない。だがちょっとやそっとした事では崩れないだろう。

 

 

『すごいでしょー!これ僕の拠点なんだ!自慢の拠点なのさ!もう此処が家と言っても過言じゃないね!』

 

 

男は嬉しそうに自慢している。

これには素直に拍手した。

 

 

『此処で立ち話するのもあれだからさ、早速入って入って!』

 

 

嬉しそうに男は前に走りながら拠点の中に招き入れてくれた。それに続いて中に入る。

 

 

 

 

 

男の拠点の中は、あっちこっちに分からない物が乱雑に置かれている。

箱らしき物もあれば、薬っぽいものもあるが、いずれも触らないほうが吉だろう。



『疲れたでしょ、とりあえずそこの椅子にでも座ってゆっくりしてよ。今飲み物持ってくるから』



そう言って男は近くの扉を開けて中に入っていった。

男の言う通りに椅子に座る。

この男は片づけが苦手なのだろう、さっきも思ったが床に物が乱雑に置かれている。


壁には何かの研究をしているのか、資料がたくさん貼られているが見てもチンプンカンプンだ。

隣に何枚か写真が貼ってある。

これは此処の景色を撮ったものだろうか。

見た事ある青空が映っていた…と同時に、どの青空の写真にも、左上に256と数字が書かれていた。フォントや色は様々だ。

 


『物が散らかっててごめんねえ。僕は物を片付けるのが嫌いでさ。まああまり気にしないでよ』


男は片手にノートパソコン、片手にお盆をもち、二人分の飲み物を持ってきた。

 

『疲れたでしょ、飲みながら君が旅してきた話を聞かせてくれたまえ』

 

自身の目の前と男の近くに飲み物が注がれているコップが置かれ、近くにノートパソコンも置かれる。

コップの中身を見ると、透明な液体が注がれている。



『それは僕が少し改良したアーモンドウォーター。飲んだら少しずつ疲労回復する効果があるんだ。飲んで大丈夫だよ』



そう言って男はゴクゴクと喉を鳴らしながら飲んでいく。プハーっと美味そうに飲んでいる。

なんて飲みっぷりだ。

ゆっくりと一口飲んでいく。

男の言う通り、味わった事がある味だ。

ホッとしながらまたゴクゴクと飲んでいく。



『じゃ、早速君が今まで旅してきた冒険の話を聞かせて頂こうかな』


男がノートパソコンを開いた後、カタカタとキーボードの音を鳴らして何かを入力している。

 

 

『ゆっくり質問していくからゆっくり答えてくれたら嬉しいな。じゃあまずは...』



男に質問された事をたどたどしくも答えていく。

初めは慣れない事に戸惑いを感じていたが、男が優しく接してくれる事にゆっくり心を開いていく。


この世界に来たきっかけは?


この景色に見覚えはないか?


あそこで会って以来、何があったのか?


他にも誰か見かけたか?


…あげていくとキリがない。

男は質問に答える度に、小さな子供が好きなおもちゃで遊んでいるような…とにかく、とても嬉しそうに話を聞いてくれたのだ。


それから男との話は何時間も何十時間も続く。


自分がこれまで見てきた世界を男は少なからず知っており、その苦労を心から分かる人だからこそ、普通の人には言えない冒険を億劫になる事なく話せたのだと思う。


その間に二人の間に沈黙が流れる事は一度もなかったし、不思議な事に睡魔が訪れる事もなかった。


 

 

 





 

 

 

『…いやあ、まさかこんなにレベル調査が進むとは思わなかったなあ、ありがとう』

 

何日経ったか分からない時が過ぎた頃、███は机にぐったりして疲れて果てていた。

男は嬉しそうにカタカタキーボードを鳴らしながら資料をまとめている。


一体この男は何者なんだ。

この男は疲れというものを知らないのだろうか。



『協力してくれてありがとう。疲れたでしょ、ベッド用意しといたから使ってね』



男が扉に向かって手をかざすと、自動的に扉が開かれる。ほらあの開いた所、と指を指した。

甘えて遠慮なく指さされた扉に向かって、ふらふらと歩いていく。



その部屋の中には、大きなベッドが用意されている。そこに飛び込む形で眠りにつく。

何か考える暇もなく、眠りの底に落ちていった。

その間、悪い夢も良い夢も見る事はなかった。

 

 

...



 

 

...

 



 

...

 



 

...

 

 

 

 

 

何日眠ったのだろうか。

ゆっくり目を覚ますと、勢いよく飛び込んだあの布団の中に潜っていた。

ゆっくり身体を起こし、ゆっくり動かす。

軽く体操をしていると、男が様子を見に入ってきた。

服装は黒いフードからあの時見た黄色の防護服になっている。

 

『あ、やっと起きた。君結構長い時間寝てたねえ。君が寝てる間に研究が2つも終わるくらいにはね。余程疲れてたんだね。ありがとうね』

 

優しい声が心に響く。

泣きそうになる程の思いをしたのはどれぐらい昔の事だろう。泣くのをグッと堪えて、男に軽く手を振る。

 

『ご飯は作ってあるからゆっくり食べてね。あ、でも今は外が暗いから外には出られないからね。今出ると見えないナニカにやられちゃうからね』



男が言った通りに窓からの景色を見ると、外は真っ暗の状態で何も見えない。

こんな中を歩くのはごめんだ。


男の言う通りにして、用意されていた朝食がある所にまで向かい、椅子に座る。

目の前に用意された朝食から良い香りが漂う。

地球によくあるパン、スープが置かれている。

いただきます と小声で呟き、勢いよくかぶりつく。

久々に味わった懐かしい味が口の中に広がっていく。美味しさと相まって涙が止まらなかった。

そんな様子を男は研究しながら後ろから静かに見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

食べ終わった後、男に多大なる感謝を贈った。

男もまた嬉しそうにしていた。


『別に何かしたわけじゃないし、気にしなくて良いのに〜』


どこか嬉しそうだ。


ふと景色を見ると、あの窓から淡い光が差し込んでいた。

恐ろしい夜が知らぬ間に終わっていたみたいだ。

男にこの事を言う。

 

『...うん、もう少し経ったら出ても大丈夫だね』

 

男からのお墨付きも出た。

そろそろ旅に出ないといけない。


それを男に話す。

男もまたそれを分かっていたような反応を示す。

座った席や寝室を少しでも綺麗にしようと掃除する。



『そんな気を使わなくて良いのに〜、でも嬉しいな。ありがとう。またいつでも此処においでよ。歓迎しているからねえ』

 

男は嬉しそうに話して、███を見送る。

 

その言葉に振り向く事なく、男の言葉に軽く手を上げて応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

男と別れた。

空島を調査しようと歩いていると、石ころか地面に足をひっかけ勢いよく地面に向かって倒れていく。



転ぶ!と思うよりも先に ああ、また落ちるのか...と思い身構える様子もなかった。

予想は当たり、地面に当たる事無くすっぽりと抜け落ちてしまった。

 

もう落ちる事に少し慣れてしまったのか、何も思わないままただ真っ逆さまに落ちていく。

 

 

 


 

そんな事を知らない男のフードが風で少し揺らぐ。

揺らいだその先に、男の顔の一部は見えなかった。


見えない?…存在していない。



ただ、深淵から何か雫が1粒だけ零れ流れ落ちた…気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ