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【The Back Rooms】  作者:
26/55

【Lv.966 η:東欧の長屋】

元気良く走ってきたこの場所は、多階層の長屋の部屋が廊下や階段で結ばれて、複雑に組合わさっているようだ。窓は1つも見つかりはしないが、電気は通っているようで電球は白く淡い色で優しく照らされている。まるでこの中に入りなさいと導かれているように。

 

 

近くのドアノブを捻ってドアを開け、謎の長屋に足を踏み出す。窓はないものの、生活感はそのまま残っている。部屋の中には電球という概念はないようだ。

代わりに天井がその役目を果たしているようだが、時計も一応あるようで、時刻は11時を少し過ぎた頃だった。昼前だからなのか、灯りも強くは光っていない。


中はよくある家の中を再現したような感じだ。

初めはリビングルームのようで、大きなテーブルと大きなテレビ、テレビの前には黒いソファー、テーブルを囲むように、何人か座れる椅子が置いてあり、キッチンも完備のようだ。不意にポツンと心の中に、少し寂しさの穴が空いたような気持ちになったが、今に始まった事では無い。

 


ソファーを目にする。

真っ先にソファーに向かってダイブし、ソファーの上に横になった。本当はベッドで寝るのが1番安泰だが、休憩出来る事が何よりも最優先だった。


ハァ…と一息ついて、天井を向く。

特に変わりがない真っ白な天井が広がっている。ボーッと見つめたり、目を閉じて睡眠を取ろうとする。けれど、やはり落ち着かないのだ。

ゆこの世界に落ちてしまってからどれぐらいの月日が流れたかは知らないが、あの頃思っていた地球への帰還の思考が、消しゴムでゆっくりゆっくり消されていくような感じがしている。


強くこの世界への移住希望…ではなく、どこかのレベルでひっそりと芽生えていた諦めの気持ちが蕾になる少し前のような気持ちなだけだ。

 

眠れはしなかったが、目を瞑るだけでも少しは効果はあるようだ。





目を開けて時計を見ると、12時前。

満足した。ゆっくり起き上がり、キッチンに向かう。

 

 

 

 

 

 

真っ直ぐに冷蔵庫に向かい扉を開けると、中にはお皿の上に乗っている美味しそうなお肉や見た事あるアーモンドウォーターが1本入っていた。

お肉は1口サイズに切ってあり、すぐに食べられる状態になっていた。迷う事無くお皿を手に取り、もう片手でお肉を口の中にひょいひょいと投げ入れるように食べていく。

これは…とても美味という訳でもないが、胃袋を満たすには十分すぎる満腹を味わえそうだ。喉に詰まりそうな時はアーモンドウォーターで流し込み、またお肉を口にする…今まで好きな時に食べる事が出来なかった我慢が、少し暴走気味にしているようだ。



満足するまで食らい尽くす。

お皿を洗い乾くのを待ちながら、軽い運動がてら中を探索する事にした。

 

 

 

 

テレビの横にあった扉をそっと開けると、その先には少し幅が広い廊下がある。扉が3つほどあり、2つは茶色、1つは黒い扉がある。目を細めてその扉達を見つめる。

何処に入るかなんて人の自由だが、慎重に選ぶ必要はあるだろう。

 

 

(睨んだ先にある扉、黒くて不気味な雰囲気なドアを開ける場合。開けたなら、暗い中を落ちていくだろう)▶︎ https://ncode.syosetu.com/n9780lt/11/


 

リビングに1番近い扉を開けて中をそっと見る。


そっと開けると、中は予想以上に広い部屋だ。

下手するとあのリビングより大きいのではないだろうか。なぜなら、2人が寝ても余裕がありそうな大きなベッドが複数…そしてタンスがいくつか置かれているからだ。

 

 

中に入ると、何の変哲もない部屋のように見える。1人で寝る分には広すぎるベッドがいくつもある。友達や恋人を泊まらせる時の部屋のようにも感じる。にしてもこんなにもいらないとは思うが。


タンスもパッと見ただけでは、普通のタンスと変わりない。開けると誰の物か分からない服や下着がびっしり詰まっている。あまり気はすすまないが、ずっと同じ服を着るよりかは…と、下着と服を変える。少しスッキリして落ち着いた。傍から見たら窃盗とか言われるが、そんな事気にしてる場合じゃない。


 

ふかふかのベッドに腰掛けて周りを見渡す。

確かにこの世界は現実世界とは真逆の存在なのに、此処はなんだか妙に安心感を覚えるのだ。今まで見た景色が異常すぎたというのもあるかもしれないが…。



ベッドの横にあった小さな机の上に置かれているランプの電気を消して、部屋の電気を消す。

ベッドの上に横になる。

…ボーッと何も考えず呼吸だけしていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。


無理もない。

身体的にも精神的にも負担が大きいのだ。

その姿は見た目は大人だが、どこか幼少期のような雰囲気が少しだけ感じ取れる。



静かな寝息は、寝室中に微かに響く。











時刻は5時を示している。まだ目覚める様子はない。静かに呼吸をして眠っている。



 

 

 

 

 

 

次に起きたのは、8時を少し過ぎた頃だった。

少しの合間の休憩だったが、それでも十分な程だ。

背伸びをしてからは、地球にいた頃の朝の過ごし方をする。あのリビングに戻ってキッチンで朝ごはんを作る。冷蔵庫を覗いた時、前見た時になかったジュースが何故か追加されていた。コップに入れてテーブルに着く。本当はコーヒーが良かったのだが、贅沢も言ってられないのだ。


ゆっくり朝ごはん?を堪能する。

久しくゆっくり出来たのは何日も…何十日ぶりだろうか…。

何日経ったかも分からない。


音楽を聴く機械もないので、静かな中でご飯を食べ終わった。



食べ終わって1時間経ったくらいだろうか、ソファーに座ってゆっくりしていると、玄関側の方から音が聞こえる。



まずい、此処に住んでいる人達が帰ってきたのか?

見つかる前にどこかに隠れないと…!



幸いソファーがドアの近くにあったのですぐ寝室に戻り、寝室の部屋の中で隠れられそうな場所を必死に探す。

どこか良い所はないのか…!


と、部屋に入るだけでは気づかなさそうな場所に見知らぬクローゼットが置いてある。今はあそこに隠れるしかない!

 

 

急ぎつつも、音を立てないようにゆっくり閉めて息を潜める。中は結構広く、2人入っても少し余裕があるほど大きい。上着が何着かかけてある。



…しかしこのクローゼットの中、変に冷たい空気が流れていないか?何故だか嫌な予感がする。

かけてあった厚着の上着を羽織って荷物をポケットに突っ込みつつ、変な部分がないか確認する。


特に変な模様があるわけでもないし…とクローゼットを触っていると、手がズポッと壁を貫通し、思い切り体勢を崩し前に倒れる。壁に吸い込まれるかのようにすり抜けていくではないか!

下に落ちていき、乱暴に次のレベルの床に叩きつけられたのだ。

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