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【The Back Rooms】  作者:
21/55

【Lv.0η ロビー】

黄色の壁紙に、湿ったカーペットのような感触をしたカビ臭い床。そんな部屋に取り残された人間の目は何か全て知ってしまったような目をしていた。

瞳孔が少し小さくなって目を見開いて天井を見つめていた。

 

そもそもこんな世界に2度も好んで落ちてくる生き物を見た事がない。

せっかく知らないまま生きていくチャンスを与えたのにこのザマだ。身体に怪我はないが、精神は蝕まれたまま時間だけ巻き戻された。


ああなんてたる滑稽な。


 

自分の行動の違和感にもっと早く気づいていれば今頃はマシな選択肢を選んでいたはずなのだ。

 

自身と向き合っていたがこれだけでは足りなかったというのか?普通に暮らす事を神はまだ許していなかったというのか?

 

虚ろな目をしながら力無く立ち上がる。

ゆっくりとした足取りであてもない道を歩く。

人間は記憶のタンスの隅に記憶をしまい込む。

このレベルのルールや、何が出るかはある程度覚えている。心にズキズキとした…痛みと言うには難しいが、言葉を言い表す方法を忘れている。喉まで出るが出すと全てを吐き出して嘔吐く感覚に陥る。

 

死を1度受け入れた直後のこちらへの出戻りは、皆が思うより辛くて苦しいものである。

尚更人との付き合いが重なるのを拒む事になった。それ程までに苦しい。

そう思っているのも今だけなのかもしれないけども。

自分の意思ではなく、ちょくちょく第三者からの意思で動かされていた(気のせいだと願いたい)と思い込み、怒りそうな、泣きそうな気持ちになっていたが、また此処から抜け出す大まかな目的には変わりない為、仕方なく受け入れていた。今更他責しても結果はもう変わらない。


 

ここまでの出来事を鮮明に覚えてはいない。

どれも朧気気味で思い出そうとしても思い出せないのである。これからどうしていけばいいのか…いや、そう考えても仕方ないのは分かっているけども…等、頭の中で自問自答を繰り返す。そうしながらただこのレベルを歩き回っていた。

 

時間経過の概念の確認も出来ないこの部屋でどれくらい歩いただろうか。足は歩き疲れてきているし、疲れはあるはずなのに、足が止まってくれなかった。

次の階層に行く為なのか。

それとも新たな道に導いてくれるのか。

 

ズボンのポッケ内を確認してみる。

1つだけ包み紙に包まれた飴が入っていた。

…はて、こんな物持ってきていたかな?それとも知らない間に入り込んだ?


まあ、今はどうでもいい、水分補給がてら食べてみるかと、飴玉を口の中へ。

 

リンゴ味が舌の上で広がり甘さがジュワッと溢れる。

懐かしささえも感じてしまう程に疲れていた。

目にうっすらと涙が浮かんでいた。

声を上げて泣きはしなかったが。

 

1回1回味を楽しみ、舌の上で飴が無くなった頃、顔を上げると少し前に階段が待っていた。

あの時の階段とは違い、上に上がっていくタイプのようだ。

これで下に行く階段だったらスルーしていたが…こんな所にいるよりかは…そんな気持ちで何の躊躇いもなく、その階段に足を伸ばし、何を思うわけでもなくその階段を使って上に行くのだ。

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