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【The Back Rooms】  作者:
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【Front Room】

███はごく普通のサラリーマンだ。


朝早く起きて朝食を食べてから出勤し、21時頃には帰宅をする。これが当たり前の生活だった。

平凡な人生を送れているならそれで満足するのだ。

世界に不満がある訳でもなかった。


今日は休日だ。

友人がいたらどこか遊びに行くのにと思うが、電話帳の中には小さい時からの親友のKと務めている会社しか連絡先が入っていない。

しかも親友とは数年連絡を取れていない。

連絡を送っても返事が返ってこない。


実質今は独りの状態だ。

ふと思い出した事に悲しくなり、それを忘れる為にカレンダーと時計に目を向けて確認する。



20xx.10/x 午前7時30分



仕事に行く習慣もあり、目覚めは早い方だ。

いつも食べている卵のせトーストと飲んでいるコーヒーを作り、食べながら携帯を見てネットサーフィンを行っている。お気に入りのサイトを閲覧していると、サイトの下にある他サイトのある記事を見つける。

 

【The Back Roomsとは?】

 

初めて聞くその名に、好奇心と興味を抱いてその記事をタップした。

パッとサイトが切り替わる。時折写真も混ぜながらの解説と考察記事のようだ。

 

《The Back Roomsは、地球と対になる世界。入ってしまったが最後、戻る事が困難と言われている。エンティティと呼ばれているモンスターが存在しており、敵もいれば味方になるのもいる。各部屋に"レベル"が存在しており、移住が出来る部屋から、入るだけでも危険とされている部屋もある…》


等説明がされている。

少し下に写真が貼ってあり、その部屋についても少し書かれている。


挿絵(By みてみん)


《黄色い壁紙が貼ってあり、湿ったカーペット、一貫性のない電灯が天井に並んでいる》と書いてある。

 


…なんだこれは?


理解するだけでも精一杯だった。

この地球の他にも存在する空間があると書いてある。

そこは実在するとは書いてはいないし、かと言ってフィクションと書かれている訳でもない。


…少し頭が痛い。

気分転換しようと考えると、サイトを閉じて身支度を行い外出した。

 

快晴のようで雲はひとつも無かった。

財布と携帯だけ持って玄関の鍵を閉め出ていった。

車は持っていない為、遠くに行く時は電車に乗って行く。行き先が明確に決まっている訳でもないが、今はその場にいたくない気がして、遠く行こうと考えた。



最寄りの駅に着くと、いつもより人が多い事に気づくが、特に深くも考えなかった。

目についた遠い駅を選んで切符を買い、改札を通っていく。ボーッとしながら階段を降りていると、不意にぶつかって来た後ろからの衝動に驚きながらも、咄嗟に受身を取ろうとする…が間に合いそうにない。痛みを少しでも抑えようと目を閉じてその時を待つ……

 

 

…来るはずの痛みがやってこない。

それどころか、人が多くて賑わっていた時の声さえもなくなっていて、代わりに聞こえるのは『ヴゥゥゥン…』と音が鳴っている。この音で電灯があるという事は分かった。次に感触に気づく。少し水を含んだような湿り具合。それが手に伝わってくると同時に、少しのカビっぽい臭いもする。今起きている事に戸惑いつつも、現状を知る為に閉じていた目をゆっくり開く。




黄色い壁紙にカーペットのような感触をした床。電灯は天井にあるが並び方が不規則になっている。周りを見渡すが人らしき影もなければ家具もない。


追いつかない自身への立場に混乱しながらもこの状況を理解しようと、立ちながら頭をフル回転させる。さっきまで最寄り駅にいたはずで、電車に乗る為にホームに行こうと階段を降りていたら後ろからぶつかって…いやそれよりも此処は…状態を見る。

怪我はないし持ち物もそのままなのは幸いした。


 

…ハッとして思い出す。

今朝、朝食を食べながらこの部屋の写真を見た時の事を思い出した。と同時に此処が何処なのかを理解してしまった。

こんな事が現実に起きる訳がない。そうだ、きっとそうだ。近くの壁まで歩き、頭を何度も強くぶつける。

 

痛い。痛みを感じる。ぶつけた分の痛みが跳ね返ってくる。信じられなくて、壁に向かって拳をぶつける。夢ならば痛くて起きると考えた。


 

夢から醒めてくれ!

 

何度も願った。

 

それも虚しく、ベッド上から目覚める事もなく、変わらない景色に痛む拳。

 

痛みと置かれている状況を嫌でも知れと言わんばかりの感情はぶつかり合い、その場でへたりこんでしまった。



もう帰れないんだ。


モンスターに襲われて死んでしまうんだ。



深い絶望を心に刻んだ。

どれぐらい時間が経ったかも分からない。


ただ1人。

お前は孤独になったのだ。


そんなお前を見て嘲笑うかのように


『ヴゥゥゥン…』


この部屋の中でいつまでも鳴り止まない。

 

 

ようこそ、The Back Roomsへ。

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