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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

因果を灯す者の罪 〜私が灯した慈愛の光が、蹂躙の道標になるのだとしても〜

掲載日:2026/01/27

善意は、いつも正しい形で届くとは限らない。

それでも人は、良かれと思って手を動かす。


火を灯すこと。刃を研ぐこと。

誰かを傷つけるつもりはなくても、

その結果がどこへ辿り着くのかを、

私たちは本当に見ているのだろうか。


これは、

救わなかった罪ではなく、

「疑わなかった」罪についての物語です。


静かに読んでいただければ幸いです。

私は、火を灯す人間だ。

火は、温かくなければならない。

明るすぎれば目を痛め、弱すぎれば道を欺く。

だから毎日、同じ時刻に点検し、同じ量の油だけを使ってきた。


子どもたちが階段で転ばないように。

手すりの釘が浮いていれば、すぐに金槌で打ち直す。

雨の日は、灯りを少し落とした。雷に驚かせないためだ。


誰かを救うことはできない。

ただ、誰かが傷つかないようにすることなら、できる。


「いつもありがとう、リナ」

「この灯りがあると安心できるよ」


そう言われるたびに、私は火をより慎重に扱った。

同じ言葉が重なるほど、

私は灯りを低く、長く見つめるようになった。


村の老婆や旅人の感謝と賛辞。

人々はそう言い、私はその言葉を誇らしく思っていた。


パンの匂い。

スープの湯気。

それくらいの温もりが、この仕事には十分な報酬だと、そう思っていた。


その夜、灯りが揺れた。

風のせいだと思った。

私は迷ってから、油を少しだけ足した。ほんの少し。大丈夫な程度に。


火は安定した。

だから、安心してしまった。


――けれど、私が慎重に掲げたその光は、災厄になった。

救いを求める者ではなく、略奪者を呼び寄せてしまったのだ。


悲鳴が聞こえた。

灯台の下にあったのは、食事の並ぶ食卓ではなく、燃える家と血に濡れた地面だった。


彼らは、私の灯した火を道標にしてやってきた。


「……嘘」


階段を上る音がする。

逃げ場はなかった。


後ずさりした拍子に、足を滑らせて転ぶ。

扉が開き、影が私を覆った。

誰かが笑った。


言葉はあった。

けれど、意味は残らなかった。


息が詰まった。

身体が言うことをきかなかった。

声を出そうとしても、喉はもう固まっていた。


目を閉じた。

この光景が、すべて記憶になってしまいそうで、

最後まで、開けなかった。


それでも――

奇跡は、起こらなかった。


気がつくと、私は広場にいた。

石畳が冷たかった。


仰向けに倒れていて、

空が見えた。


呼吸は、まだあった。

身体は、動かなかった。


視界の端に、焼け落ちた家の輪郭が引っかかる。

黒く固まった壁。崩れた屋根。


煙はもう消えていて、匂いだけが残っていた。


灯台は、見えなかった。

それを認識するまでに、少し時間がかかった。


視線を動かしても、灯りはない。

だから、わかった。

もう、終わったのだと。


「……全部、終わったんだ」


身体は、生きていた。

腕も脚もあった。指先も、足先も、感じられた。

けれど、それだけだった。


息を吸っても、胸が満たされない。

声を出そうとしても、口が開かなかった。


何かが、欠けていた。

それが何なのかは、思い出せない。

代わりに、内側で何かが壊れ続ける音だけがしていた。


とても小さく。

止まることなく。


そのとき。


空気を裂く音とともに、銀色が広場を走った。


「――落ち着け」


その声は、切迫していなかった。

誰かを救おうとする者の声ではなかった。


剣を持った女は、私を見なかった。

地面に落ちていた武器を拾い上げる。


柄の擦り減った部分を、親指で押し。

刃を月明かりにかざす。


しばらく考えるような顔をしてから、

低く、言った。


「これ」


一拍置いて、


「私が手を入れたやつだな」


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。


この物語では、

誰かを明確な「悪」として裁くことはしていません。

善意と結果の間に生まれるズレ、

その静かな重さを描けていれば幸いです。


もし、

少しでも心に残るものがありましたら、

ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

読者の反応は、次の物語を書く力になります。


感想も、短い一言だけでも大歓迎です。

それもまた、この物語の続きを考えるための

大切な「灯り」になると思っています。


最後まで、ありがとうございました。

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あとがき

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

この物語は、誰かを救わなかった罪ではなく、
善意を疑わなかった結果について描いています。

正しくあろうとしたこと。
慎重であろうとしたこと。
それでも生まれてしまう因果が、
静かに伝わっていれば幸いです。

もしこの作品が少しでも心に残りましたら、
ブックマークや評価をいただけると、とても励みになります。

感想も、一言だけでも構いません。
読者の反応は、次の物語を書くための大切な支えになります。

最後まで、ありがとうございました。


キーワード

  • 因果応報
  • 善意の代償
  • 無自覚な罪
  • 心理描写重視
  • ダークファンタジー
  • 後味の悪い話
  • 救われない
  • 灯台
  • 剣と因果
  • 短編
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