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転生したら貴族の娘になっていたけど、前世の後輩君まで一緒に転生していた

作者: にしはじめ
掲載日:2025/11/13


「お嬢様、朝でございますよ。起きてください」


 ゆさゆさと布団越しに身体が揺さぶられ、徐々に意識が覚醒していく。

 んー、朝?

 寝ぼけ眼を手でこすると、すぐさま何者かに手を捕まれた。


「いけません、手で目をこすっては。こちらをご使用ください」


 手に暖かいタオルをかけられた。

 それを広げて顔にあてると、かなり意識が覚醒してきた。

 あったかい、気持ちいい。


 かちゃかちゃと食器の奏でる音をモーニングコールにしながら、タオルを顔に当てる。

 そして三分程度で音が止まった。


「お嬢様、朝食の準備が整いました」


 すっかり冷えたタオルを顔から離して、目の前にいる十五歳くらいの、執事服を着た男へと手渡す。

 彼はそれを受け取った後、私がベッドから起き上がるのを手助けしてくれる。

 そのまま彼に手を取られて室内にある一人用の小さなテーブルと椅子、ダイニングテーブルみたいなものに座った。

 座ったと同時にテーブルの上に朝食が並べられていく。

 今日のメニューはバターロールパン、果物のジャム、それとサラダに紅茶。あと茹で卵もある。

 まずは軽く紅茶を一口。熱い、もう少し冷めてから飲もう。

 次にパンを手に取り一口サイズにちぎったあと、テーブルナイフでジャムをパンに塗って頬張る。

 うん、甘くておいしい。

 そのままドレッシングのかかったサラダを口に入れると……。


「にがい」

 

 子供は舌の味蕾、つまり味覚を感じる機能が強く、苦みや辛みなどに強い反応が出るらしい。

 私は八歳なので、そろそろそういった時期から卒業だと思ってたんだけど、まだ苦みに弱のか身体に拒否反応が起こる。

 吐き出しそうになるけど、ぐっと堪えて、顔をゆがめさせたまま飲み込んだ。


「お野菜食べられてえらいですねー」


 給仕も兼ねてくれた男が、にこにこしながら私の頭を撫でてきた。

 むっとしつつ、その手を振り払う。


「ちょっと、後輩君! 子ども扱いやめてくれない?」

「子供扱いというか、子供そのものですから、今の先輩は」


 先輩後輩、と言っているがこれは前世でのお話だ。

 前世の高校時代、私は文芸部に所属していたが、その一年後輩にいたのが目の前の男の前世である。

 当時、やけに懐かれて子犬のように私の後ろをついて回ってた後輩君。

 私が卒業して大学へいったあと、後輩君もなぜか私と同じ大学を選んで入学してきたっけ。

 大学時代も高校時代と同じように先輩先輩と私を追っかけてきて、更に同じゼミにきたりと、まあここまで来れば鈍い私でも分かる対応だった。

 私は別に可愛いとか美人でもなく至ってごく普通の、いや少々野暮ったい文系女だったのに対し、後輩君は身長は低いものの顔面偏差値高めで、結構モテてたらしい。

 さらに高校時代の私は年下より年上が好みだったので、割と塩対応だったのに、どうして? などと思ってた。

 

 そして四年目の冬、卒論で忙しかった私は割と寝不足気味で、それでも大学へ行く途中、気が付けばいつの間にかこの世界で目覚めた。

 たぶん交通事故か何かで死んだのだろう。全く記憶に残ってないけど。


 そして目覚めたのは五年前、三歳の時である。

 当初一年ほどは何が何だかわからず情緒不安定になってたが、四歳になってから多少落ち着いた。

 またそれと同時に自分の立場を理解した。


 ファンダム王国のミステリス伯爵家次女アリシアよんさい、である。


 そして後輩君との出会いは三年前。

 ミステリス伯爵家はライム公爵家の寄り子であり、寄り子内ではかなり高位の貴族だ。

 このため、ライム公爵家主催のパーティで私の五歳のお披露目会が行われたが、そこで給仕をしていたのが当時十二歳の後輩君だった。

 彼は同じ寄り子貴族の更に婚外子だったので貴族籍には入れられなかったが、能力が高かったため寄り親の公爵家へ下働き見習いという形で紹介され働いていたらしい。


 下働きなのによくパーティの給仕になれたよね。


 もちろん私は後輩君のことは全く気が付かなかったが、彼は私に気が付いたらしい。

 五歳児なのに割と動きが洗練されていて、更に前世の私の仕草とそっくりだった事から、もしやと思ったそうだ。

 そして私へ飲み物を持っていく時に、日本語で私に話しかけてきたのだ。


 そのあと、私は父上に後輩君を貰い受けるようお願いし、五歳の誕生日ということで公爵閣下に許可を貰って、めでたく私の従者となった。

 色々と無茶を通して貰ったようで、父上には感謝しかない。


「っていうかさ、後輩君。あの時よく私のことが分かったよね」

「そりゃあもう、先輩のことなら何でも知っていますからね!」

「なにそれこわい」

「それにあの時の先輩って、捨てられ雨に降られた子猫って感じでしたからね。割と無茶して日本語で話しかけたんですよ」


 私のお披露目パーティなのだ、主役は私。そこへ下働き見習いが給仕しにくるってのがおかしい。

 公爵家からすれば私はお客さん、失敗は許されない。当然ベテラン給仕が対応するはず。

 後輩君が無茶したってのは事実だと思う。


「どういうことそれ?」

「寒さで震えてるけど警戒心が強く、それでいて必死に親を探して鳴いているような感じ」


 そんなに!?

 まあ実際のところ一人は心細かった。確かに家や部屋は綺麗だったし、きちんと食事も出てくる上に服も上質で不便は全くなかったが、いきなり見知らぬ世界へ一人放り込まれたのだ。

 不安しかなかった。


 だけど彼との遭遇でずいぶんと心の余裕が生まれた。前世の顔なじみ(顔は違うけど)がいるだけでも全く違う。

 父上にも、それまでは全体的に硬かったが、彼をそばに置いてからずいぶんと柔らかくなったと言われた。

 それまで到底家族と言えないレベルの距離感だったらしい。

 実際最初の頃は、見知らぬおじさんおばさんだったからね。

 記憶が戻ってからお披露目までの二年で何とかご近所のおじさんおばさんまで距離を縮めたけど、それでも一歩二歩引いたところにいた。


 彼を受け入れてから淑女教育もどんどん進むようになり、八歳にして神童と呼ばれるようになった。

 なお神童呼びは両親限定である。

 子煩悩というか、親バカじゃね?


「さあお嬢様、残りのお野菜もちゃんと食べましょう」

「分かってるわよ、うー」


 苦みに苦しみながら何とか全部食べ終えた。

 うん、わたしえらい。




============================================================




 十歳になった。

 そしてとうとう後輩君以外にも専属の侍女二名が付くようになった。

 それまで着替えやお風呂などは、お手すきの侍女に後輩君からお願いして貰っていたが、これからは専属侍女がずっと担当することになる。

 もちろん専属なのでおはようからおやすみまで、ずっと一緒である。

 つまり後輩君と二人だけのところに、異物混入してきたのだ。

 しかも父上が気を回したのか、どちらも若い侍女である。年が近いほうが良いだろう、的な考えだろうね。

 近いといっても私より五~六歳くらいは年上、たぶん貴族学園を卒業したばかりの子だと思う。


 全然年近くねぇよ。むしろ三十代四十代くらいのベテラン侍女のほうが良かったよ。


 思わず言葉遣いが下品になってしまった。

 初めて侍女二人と会った時思わず、チェンジで、と言いそうになったのを堪えたわたしえらい。

 それまで二人だけという内輪の世界に入ってくるのだ。

 いわゆる空気読みが必須な状態。

 ベテランならその辺はうまくやってくれると思うけど、どう見ても下級貴族のお嬢様が、花嫁修業にきましたって感じなのだ。

 不安しかない。

 でも部活で考えれば私が三年生で後輩君が二年生、そこに新入生二人を迎えたと思えばいいのかな?

 よし、ビシバシ教育してあげようじゃないか。主に後輩君が。


「お嬢様は割とお野菜が苦手です。涙目になりながらも食べようとしますが、情に負けてそれを止めてはなりません。きちんと食べ終わってから褒めて差し上げましょう」


 おい後輩君!

 変なことを教えるな!




============================================================




 十一歳になった。一年もすれば侍女二人も慣れてくる。

 当初は初心者感丸出しの二人だったが、今では普通に使えるようになった。

 そして徐々に遠ざかっていく後輩君との距離。

 分かっている。

 十歳までは子供として許されたが、さすがにこれからは男性との距離を広げる必要があるのだ。

 お仕事も今では八割以上を侍女二人が担当している。

 そして後輩君は兄上、次期伯爵家当主の侍従として仕事を移行していっている。

 それでも一日一回は顔を合わせて、割とくだらないおしゃべりをしているけどね。


 次期当主の侍従だ、貴族ではない彼にとって大幅な出世である。

 おめでとう、と言いたい気持ちはある。でもなぜか言えない。どうして私ではなく兄上なのか、という思いが強いからだ。


 そして十二歳になれば私は貴族学園へ通うことになる。そこから三年間勉学に励みつつ知己を増やして、家のために活動するのだ。

 貴族学園には側仕えとして二名、家の中から連れていけるが、もちろん女性であり男性の後輩君はついてこれない。女性寮に入るからね。

 たぶん一人は学園を卒業したばかりのいわば先輩、もう一人は家の中にいる母上か姉上付きのベテラン侍女になると思われる。

 たぶん姉上だと思う。

 来年姉上は侯爵家へ正妻として嫁ぐことに決まったので、姉上付きの侍女が浮くからだ。

 今いる侍女二人は花嫁修業を終えて、実家に戻るだろう。


 そして学園を卒業すれば、私もどこかの貴族と婚約を結ぶだろう。おそらく父上の頭の中にはすでに候補が数人浮かんでいると思う。

 私は公爵家を寄り親とした伯爵家の次女なのだ。しかも寄り子の中ではかなり高位である。

 同じ寄り子内の伯爵家か子爵家の正妻という形になるだろう。

 可能性としては低いが、格上貴族の第二、第三夫人辺りに収まる場合もあり得る。


 当然の事ながら、この中に貴族ではない後輩君の名前は載らない。

 それが悲しいと感じている。


 彼と出会ってから前世で六年、今世でも六年だ。うち一年は大学と高校で空白があるけど、それでも十一年、ずっと一緒だった。

 残り一年しか彼と一緒には居られないのだ。

 それなのに、彼は一日一回しか顔を見せない。

 彼は悲しくないのだろうか?

 あれだけ先輩先輩と私の後ろをついてきていたのに。

 そして気が付いた。

 分かってはいたけど、改めて理解した。私は彼のことが好きだということに。




============================================================




 とうとう十二歳となり貴族学園へ入学する年齢となった。


 伯爵領を出て学園のある王都へ出発する最後の夜、後輩君から「先輩、僕のこと好きですか?」と聞かれ狼狽えてしまった。

 素直に、うん、と答えれば良かったのに、つい「そりゃ好きだが、それ以上に後輩君が出世してくれて嬉しいよ」と答えてしまった。

 これじゃ家族として好きって事になるじゃない。ラブではなくライクだ。

 何やってるんだろ私。

 後輩君がその瞬間悲しそうな顔を見せたのが辛かった。


 でも私と後輩君が付き合うことは出来ない。

 この世界では家格というものが大事にされているのだ。

 どうあがいても平民である後輩君のところへ嫁ぐなんて、それこそ全てを捨てて駆け落ちでもしない限り不可能だ。

 そして貴族として生まれた私に平民の仕事は全く知らない。

 後輩君だって、私が五歳の時からずっと私の家にいたし、それ以前も侯爵家の下働きをしていたのだ。平民の仕事など私と同じくらい知らないだろう。

 つまり駆け落ちしても、生きていけないということだ。

 そんなバッドエンドは出来ないし、ここまで育ててくれた両親にも申し訳ない。


 だからこそ、この回答は正解だったと思いたい。


 後ろ髪を引かれつつ、私は王都へ出発した。




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 三年が立ち無事学園を卒業することができた。

 何やら高位貴族の婚約破棄が盛大に起こっていたが、今のところ婚約者のいない私には関係ない話であり、何事もなく伯爵領へと戻ってきた。


 帰宅して早々に当主である父上のところへ顔見せへと赴く。

 彼の姿は見えない。

 兄上は次期当主のお勉強で色々各地を渡り歩いているらしいので、おそらく彼もそれに付いて行っているののだろう。


「久しぶりだな、アリシア。見違えたな」

「お父様もお久しぶりでございます」


 執務室は三年前と全く変わっていない。父上の顔も若干老けたかな、といった程度だ。

 反して私は成長期という事もあり、三年前とずいぶんと変わった。

 十二歳の時は可愛らしい顔つきだったが、まだまだ子供というイメージだった。

 しかし十五歳になった私は、身長も前世と同じくらいに伸びたし、体つきも色々ぼんぼんと付いてしまった。そのためか自分でも、うわ何だよこいつ、ほんとに十五か? と思ってしまうレベルである。

 成長した今の私を本当は父上ではなく、彼に見てもらいたかったんだけど、残念ながらいなかった。


「さて、帰宅した早々に伝えるのは悪いが、アリシアに良い報告がある。お前の婚約が決まった」

「……はい」


 ああ、やはり決まっていたか。

 分かってはいた。

 高位貴族は早ければ生まれた直後に決まるらしいが、伯爵以下の貴族は学園を卒業すると同時にだいたい婚約が決まるのだ。

 婚約はおおむね二年間、長くても三年間続き、そこで問題がなければ結婚となる。

 以前私のところへ侍女としてきていた二人も、婚約してから二年間うちで花嫁修業をし、その後領地に戻って結婚している。

 あの二人にも、定期的に婚約者から手紙や贈り物などを貰っていた。

 私も似たような形になるだろう。


「気が早いのだが、相手が待ちきれないみたいでな。この後すぐ挨拶にくるそうだ」


 え? それはまた早すぎじゃない?


「この後……すぐですか? 帰宅したばかりですし、少々色直ししたいのですが」


 王都からここまで馬車で三日かかるのだ。

 最初思ったのは、三日もかかるのか、遠いな、だった。

 でも馬車の速度って時速十キロ程度、自転車でちょっと早く走るよりもずいぶんと遅いのだ。

 そして実際に走っている時間は午前中に二~三時間、午後も二~三時間程度だ。

 あまり長く走らせると馬がもたないらしいし、馬を休ませるため昼休憩も長くとる。

 このため、一日に大体五十キロ程度の距離を走ることになる。

 三日だとおおよそ百五十キロ。東京から静岡くらいまでかな?

 前世なら車で高速を走れば二時間ほどの距離だ。渋滞がなければね。


 それでも長時間馬車に揺られるのは疲れるし、そもそもお風呂にも入れない。

 道中は軽く濡れたタオルで拭いていたけど、やはりお風呂に浸かってゆっくり綺麗に洗いたいのだ。


「疲れているのは分かっているが、先方がどうしても、短時間でも良いから、ということでな」

「かしこまりました。お部屋はどちらになりますか?」

「お前の部屋、だそうだ」

「……は?」


 どういうこと??

 ご挨拶というのなら普通は談話室か、天気が良ければ中庭でお茶しつつ、という形だろう。

 食事をしながらだと食堂になるが、さすがに初見で食事しながら挨拶はないはずだ。

 そしてもっとあり得ないのが私室である。

 なんで私の部屋で挨拶するのかな?


「とにかく行ってこい」

「え? お父様は?」

「私はまだ仕事が残っているのだ。お前だけで良い」

「はぁ……かしこまりました」


 大きく首を傾げつつ、それでも当主の命令だ。受けなければいけない。

 というか私の部屋なら、挨拶受けて早めに帰ってもらって、あとはそのままのんびり休みたい。

 そう思いながら執務室を後にする。




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「うわぁ先輩、すっごく可愛くなりましたね」

「え? え? 後輩君?」


 どういうこと??

 なぜ兄上について各地を回っているはずの後輩君が私の部屋にいるんだ?

 可愛いと言われたのは素直にうれしいし、彼に今の私を見せることが出来たのもうれしい。

 そして後輩君もずいぶんと見た目が大人になった。さわやか少年からさわやか青年になっている。

 あら素敵……じゃなく、これから婚約者が挨拶に来るんだから、早々に出ていって貰わなければならない。

 いくら当家の侍従とはいえ、婚約が決まった淑女の部屋に男が一人いるのは、非常にまずい。


「あ、いや、えっと、とにかく出ていって!」

「え? 酷いな先輩。せっかく三年ぶりに会ったというのに」

「これから私の婚約者が挨拶に来るの! 後輩君がここにいるとダメでしょ!」

「あー、それなら心配ないですよ先輩。だって先輩の婚約者って僕ですから」

「……どういうこと?」


 そして混乱している私に後輩君は事情を説明してくれた。

 彼は実は先代国王の隠し子で、うちの寄り親であるライム公爵家へと預けられたそうだ。表向きは寄り子貴族の婚外子として。

 今の国王陛下はそこまででもないが、問題が多いのは王子殿下たちらしい。でも我が子が可愛いのか国王陛下は王子殿下たちをかばっているようで。

 そういえば、卒業パーティの時に高位貴族が色々と婚約破棄してたな。あれって王子殿下絡みだったのかな。

 そこであちこちの貴族から、先代国王陛下に差配して欲しい、という要望が少なからず上がっているようで。

 そんな中、先代国王陛下の隠し子の存在が出てきたら、後継者問題で色々とあるそうだ。


 国の安定のため、公爵閣下は後輩君を成人と同時に公爵家の一部を割譲して、男爵家として密かに匿うつもりだったらしい。


 そこへ五歳の私が登場。

 なんと私は国王陛下の隠し子を所望したというわけだ。

 父上が色々無茶を通してもらったと言っていたが、本当に無茶だった。

 後輩君も私のところへ来てもいい、むしろそのほうが隠し通せるだろう、と公爵閣下を説得したようで。


 そして私が学園に通っている間、次期当主の兄上と一緒に領主の仕事を学んでいたらしい。

 で、つい先日領主のお勉強に合格が出て、無事男爵家を興したそうだ。その際、後輩君は婚約者に私を指名して。


「ということで、めでたく先輩は僕の婚約者となりましたとさ」

「とさ、じゃないっ! 何その、僕何かやっちゃいました? という顔は! ニヤニヤするな!」

「だってね、前世含めて四十年以上待ったんですよ。そりゃ嬉しいに決まってますよ」

「四十年? あれ?」


 今の彼は二十歳だ。ということは前世も二十歳少々で死んだってこと?

 え? 早くない? どうして?


「先輩が亡くなったとき追いかけました」

「馬鹿か後輩君は!」

「先輩の居ない世界なんて意味がないんですよ」

「何でそこまでして私を……」

「それは秘密です」

「馬鹿か後輩君は!!」

「それより、三年前にした質問をもう一度言います。先輩、僕のこと好きですか?」


 うっ。

 真顔で聞いてくる後輩君に恥ずかしくなり、思わずぽかぽかと殴りかかる。


「痛いってば先輩。態度じゃなく言葉で返事してください」

「好きだよ! こんちくしょー! 学園に通っていた三年間すっごく寂しかったよ! 悪いか!」

「悪くないですよ先輩、だから痛いですって」


 しばらくぽかぽかと殴っていると、次第に落ち着いてきた。

 ふーふー、と息を荒くしていると、後輩君がどこからともなく暖かいタオルを出して、私の手に乗せてきた。

 恥ずかしいやら嬉しいやら混乱した顔に、タオルを押し付ける。

 あったかい、気持ちいい。次第に落ち着いてくる。

 

 三分ほど押し付けていたらタオルが冷えたので、ようやく顔を離した。


「そういえばさ、三年前の時は悲しそうな顔してたのに、それでも待っててくれたの?」

「そりゃあもう、先輩のことなら何でも知っていますからね。あれも恥ずかしさから、つい出てしまった言葉という事くらい分かります」

「なにそれこわい。じゃあ何で悲しそうな顔したのよ」

「そりゃ、これから三年間も会えなくなるんですから、悲しいですよね」

「あーそうですか、そっちの悲しいだったのか」


 さて、と彼がつぶやいたあと、私を抱き寄せた。

 後輩君のイメージは、ちょっと力弱い系男子だと思ってたのに割とがっしりした体格している。

 そして思ってた以上に力が強かった。


「ではこれからよろしくお願いします先輩」

「わ、分かったから離れて恥ずかしい」

「だめです。会えなかった三年間分の先輩補給させてください」

「三日もお風呂に入ってないからいやです離れて後輩君」

「それが良いんじゃないですか!」

「離せ後輩君! このへんたいっ、ばかっ!」



 こうして私は一年間の婚約期間を経て、後輩君のところへ嫁いだ。

 小さい領地だったし、よくからかってくる後輩君が少々うざかったけど、それでも幸せな生活を過ごせた。

 あと後輩君には色々と謎があったらしいのだが、それはまた機会があれば。





書いてて思ったけど、後輩君ストーカー気質高いですよね。

あと駆け落ちエンドと悩みましたが、こちらにしました。

後輩君の秘密については、好評であれば後輩君視点で書いてみたいと思います


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― 新着の感想 ―
楽しく読ませてもらいました。 後追いした後輩くんのが早い転生だったのはストーカー故の先回り?とか色々気になります。 後輩くんの秘密もお願いします。
たしかに。 読みやすい筆致だったので、深く考えずにニヨニヨしていましたが、後輩君のストーカーレベルは高いですね。
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