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君がいる街  作者: 文記佐輝
謎集い
6/26

六日目『この世界は…』

僕は昨日のことを、あまり良く覚えていない。

確か、ミラさんが来て、それに対して驚いて、そして…

ー琉海

「…ダメだ、思い出せない。」

気づいた時には家へ帰宅していた。

だけど、問題はそこじゃない。

記憶がないだけならまだマシだったと思う。


ーーー昨日

ー未怜

「おかえりー、どこ行ってたの?」

ー琉海

「知ってるだろ?神社だよ。」

ー未怜

「神社〜?なんでそんなとこに行ってたの?」

ー琉海

「…は?」

ー母

「おかえり琉海。スイカは見なかった?

今朝採ったはずなんだけど、どこにもなくてぇ。」

ー琉海

「な、何言ってんだよ、スイカならじん……」

ー沙織

「お義母さんありました!」

ー母

「本当?どこにあったの〜?」

ー沙織

「おかえりなさい琉海くん。

スイカなら冷蔵庫の、野菜室の中にありました。」

ー琉海

「………みんな、何言ってるんだよ…」

僕は走ってスイカを見に行く。

冷蔵庫の野菜室を開き、それを見た。

ー琉海

「なんで、あんだよ…」

ー沙織

「どうしたの琉海くん?もしかしてもう食べたい感じ?」

ー未怜

「私も食べた〜い!」

ー母

「じゃあ早速切っちゃいましょう。」

ー琉海

「……どうなってんだ…、何の冗談だ?」


ーーー現在

理由は分からないが、なぜかみんな、僕が神社へ行っていたことを忘れており、スイカもなぜか野菜室に入っていた。

僕はなにも理解できず、眠りに落ちてしまったわけだが、やはりというべきか、昨日のままだった。

ー未怜

「…お兄ちゃん、なんだか顔色が悪いよ?大丈夫?」

昨日のことを考えていると、未怜が僕のことを起こしに来た。

しっかり寝たはずだが、確かに体がダルい。

僕はフラフラとしながらベッドから立ち上がると、未怜に「大丈夫」と伝えた。

未怜は心配そうに見ていたが、きっと現状について話したとしても信じてもらえないと思い、これは僕の胸の奥に収めておくことにした。

前へ歩き出そうとした時、足がもつれ、その場で倒れかけた。

ー未怜

「あっぶないよ!お兄ちゃん!」

寸前で未怜が僕をベッドへ引き戻してくれた。

ー琉海

「ご、ごめん…。」

ー未怜

「んも〜、今日はこのままゆっくりしておいて、疲れがたまってるのかも。お兄ちゃん、昨日も変だったし。」

ー琉海

「んー……。」

僕はまともに返事もできず、落ちる瞼に勝てず眠りについてしまった。


ーーー

お兄ちゃんが気を失うように眠りについた。

私はお兄ちゃんの額に、自身の額を当て熱を確認する。

とても暑かった。

まるで、熱のこもったスマホのような暑さだった。

ー未怜

「お兄ちゃん、無理してたんだ…。」

汗を流しながら眠るお兄ちゃんの手を握り、私はなにもできない現状に、とてつもない無力感に襲われた。

お兄ちゃんが帰ってから、毎日お兄ちゃんの顔を見ていたはずなのに、私はお兄ちゃんの体調に気づくことができなかった。

ー未怜

「…待っててね、今タオルと熱冷ましのシート持って来るね。」

そう伝え、私は早足でダイニングへ向かった…

ダイニングでは、続々と家族が集まっていた。

ー沙織

「未怜ちゃん、琉海くんはまだ起きない?」

ー未怜

「沙織姉さん、お兄ちゃんが風邪っぽくて。」

ー沙織

「風邪?!」

沙織は驚きながらも、すぐに薬を取り出し、熱冷ましのシートも取り出した。

私はそれを見て、タオルを取って再びお兄ちゃんの部屋へ向かった。

ー沙織

「琉海くん、大丈夫?」

ー未怜

「今は眠ってるけど、ちょっとしんどそうなんだよね。」

お兄ちゃんの額に熱冷ましのシートを貼り付け、私からタオルを受け取ると、汗を拭ってあげた。

ー未怜

「…お兄ちゃん、無理してたのかな?」

ー沙織

「…どうだろう、でも、もし無理をしていても私たちにはバレないようにすると思うから…。」

ー未怜

「う〜ん…、もしずっと無理をしていたのなら、ちょっとだけ寂しいな…。」

ー沙織

「そうね…、やっぱり三年前の事を、今でも気にしているのかも…。」

ー未怜

「もしそうなら…、私たちで何とかできないかな…」

私は頭を悩ませた。


ーーー

ー雫

『ルカイ、私も同じ大学行けるって!』

雫が電話の先でそう言った。

その声は非常に嬉しそうで、こっちまで嬉しくなった。

ー雫

『信じられないなぁ…、まさか私も、ルカイと同じ所へ行けるなんて…。』

それは雫の努力の成果だ。

僕はなにもしてやっていない。

ー雫

『はぁ…、本当に、一緒に行けたらよかったなぁ…』

何言ってんだよ…、僕らは一緒に…

ー雫

『ごめんね…、約束したのに…。』

僕らは…

ー雫

『ねぇ、…後少しだけでいいからさ…、付き合って?』


ーーー

ー琉海

「……あ…」

すでに太陽は沈んでしまったのか、僕の部屋、そして廊下は真っ暗だった。

少し楽になった身体を起こし、僕は廊下へ出る。

廊下から見える空は、星がよく見える。

僕は喉が渇いたため、台所へ向かった。

台所へ着くと、冷蔵庫からお茶を取り出し、コップにそれを注ぐ。

ー琉海

「…変な夢だった…。」

先ほどの事を思い出しながら、僕はお茶を飲み干す。

コップをシンクに置き、水を入れる。

なんとなく外へ出たくなった僕は、部屋へは戻らず、玄関へ向かった。

靴を履き、玄関を開き外へ出た僕は、夜空を眺めた。

そして、ゆっくりと歩き出した。

ほとんど無意識だった。

気づいた時には、雫の家の方へ歩いていた。

ー琉海

「あ…。」

雫の家の前で、僕は彼女を見つけた。

ー雫

「…え。」

彼女はこちらを見て、少し驚いているようだった。

僕はそんな彼女の元へ、躊躇わず歩き、近づいた。

ー琉海

「…まだ、一緒に居たいよ、僕は…」

そしてそう告げた。

彼女は困惑したように、目を点にしていた。

ー雫

「…どうして、どうして私を…?」

ー琉海

「……僕は、後少しだけでいいから、君と思い出を作りたいよ。」

彼女の質問へは答えず、僕は僕の言葉を続けた。

ー琉海

「…もう失いたくない…、僕には、君しかいないんだ…、だから…」

そこまで伝え、僕は謎の眠気に襲われた。

体中の力が抜け、その場で倒れる。

ー雫

「…ルカイ…」

ー琉海

「ぼく、は……、ずっと……ずっ…と…」

最後まで伝える前に、僕は完全に意識を失ってしまったのだった。


ーーー

ーミラ

「…驚いたな…、そこまでの精神力があるのか…」

ー巫女

「だから言ったでしょ?…これはもう、私らの踏み入れれるような事案じゃないのさ。」

あたしは口に手を当てながら、彼らの事を見守った。

ーミラ

「なぁ、あの少年の名前はなんだ?」

ー巫女

「は?そんなんも知らないで助けようとしてたの?」 

ーミラ

「正直、名前なんて仕事には関係ないことだけどな…。

だけど、あの少年はどこかで見たことがあんだよ。でも名前が出てこなくてな。」

ー巫女

「なにそれ…。んまいいや、あの子は増田琉海ますだるかいだよ。」

ーミラ

「増田、琉海…だと?」

ー巫女

「とりあえずもう寝ない?…私眠いわ。…ふわぁ~。

ーミラ

(…そうか、あたしはなんで忘れていたんだろうな…、あんなにも大切だったのに…。)

そしてようやく納得がいった。

彼がなぜここに居るのかの、その理由が。

つまり、彼の"力"はまだ残っていた。

ずっと不思議でならなかった。

こことはまったく関係のないはずの少年が、なぜ雫と接触していたのか。

ーミラ

(そうか…、琉海、君だったんだね。…この世界の…は。)

確信をようやく得たあたしは、早速仕事を終わらせるために準備を始めるのだった。


ーーー

僕は、もう失いたくない…。

意識が失っていても、それだけが、僕の頭の中を駆け巡る。

僕は、今度こそ救わないといけないのだから…。

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