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君がいる街  作者: 文記佐輝
決断
25/26

四十六日目:後編『もう一人じゃないよ』

残り時間は二十七分とちょっと。

僕はソウルイーターと向き合っていた。

琉海

「…スーパーで会ったばかりだね。」

「……」

それはじっとこちらを見続ける。

ただ見るだけで、なぜか襲ってこない。

琉海

「……サクラさんから聞いたよ。

…お前、元はかおるって言う、僕と同じ人間だったんだってね。」

「……」

そいつは姿を変え、ホテルで見た姿に変えた。

琉海

「その姿が、薫さんってことかな?」

「……ワタシは、ただ帰りたいだけ。」

琉海

「…なんだ、しゃべれるんだ。」

突然話し始めた彼女に驚きつつ、冷静さを欠くことはなかった。

もちろん、彼女に対しての警戒はずっとしている。

「ワタシはここにたどり着けなかった…。

けど、貴方は到着してしまった。それは素晴らしいこと。

だけど、ワタシはそんな貴方たちが羨ましくて、とても憎い。」

彼女は首を血が出るぐらいの力でかきはじめる。

「でもね、理解はしているんだ。ワタシはソウルイーターで、君らとはもう違う存在だってことぐらい。

…それでもね、嫉妬しちゃうんだ。」

彼女はゆっくりと近づき始めた。

一歩、また一歩と僕の方へと近づく彼女は、徐々に姿を別の女性へと変えた。

琉海

「…お前、なんで舞菜さんに…?!」

それは東雲舞菜しののめまいなだった。

薫&舞菜

「「ワタシは、貴方を気に入ったと同時に、消失感を感じた。

あの日、私の前に貴方が現れて、なんと言えばいいかもわからない欲に襲われたの…。

だけど、ワタシがソウルイーターとしてあなたに会った時、ワタシは貴方を欲してしまった。

…お願い、わたしに、貴方の一部をちょうだい。

くれたら、わたしは寂しくないから。」」

彼女は手を僕の方に差し出した。

僕は彼女が一体何を言っているのか分からなかった。

きっと誰にも理解はできないと思う。

だが、彼女は至って真剣だった。

琉海

「…一部ってのは、一体何だ…?」

僕は彼女を睨みながら、聞いた。

すると、彼女は嫌な笑みを浮かべた。

薫&舞菜

「「…知ってる?

魂が欠けるとね…、その人は復活しても、植物の状態になるんだよ。」」

「だから」と続け、彼女は姿をソウルイーターに変えた。

「アナタの全てがホシイィィィッ!!!!」

本性を現した彼女に、僕は隠し持っていたソウルイーター用のノイジーボールを大きく開いた口に投げ入れた。

琉海

「…もういいんだ。

…疲れたろ。もう休んで良いんだよ。薫さん…。」

僕は彼女を体全体で押し飛ばし、ノイジーボールが体内で炸裂し、その音に大量のソウルイーターが集まってきた。

「イヤァァァァァアッ!!!痛いッ!痛いよぉッ!」

彼女の悲痛な叫びは、僕の耳によく聞こえた。

「痛いよっ…!助けてよっ…。助けて…、ミオ……ごめんなさい……」

そして、大量のソウルイーターによって、彼女はようやく解放されることになった。

僕は残っていた最後のノイジーボールを、店に投げ入れた。

ソウルイーターは全てそちらに引き寄せられた。

僕は薫の亡骸に近づき、サクラさんが言っていた、大切な"お守り"を手に取り、背を向けて歩き始めた。

「…ありがとう…。」

改札を超えた時、僕の耳元でその声は鮮明に聞こえた。

琉海

「…一人ぼっちは、辛いですから…。」

そう返し、僕は光の先へと進むのだった。

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