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君がいる街  作者: 文記佐輝
少女とまだ深い謎
18/26

十八日目:前編『何か』

時間は午前0時ちょうど。

僕とサクラさんは、ミラさんと合流した。

ミラ

「おう、よく来たな。」

琉海

「わざわざこんな時間に呼び出したんです。…何か手がかりが?」

僕は逸る気持ちを抑え、ミラさんに質問をした。

その質問に対し、ミラさんは「ついてくれば分かる」とだけ伝え、僕らの前を歩いた。

釈然としないまま、僕は黙ってついて行く。

サクラ

「…ミラ、これだけは聞かせてほしいな。」

ミラ

「なんだ?」

サクラ

「謎の空間に行ってしまった雫たちは無事なの?」

その質問に対しては、少し悩むような素振りを見せた。

ミラ

「…正直な話、あたしにもまだ分からない。

もしかしたらもう消えてしまったかもしれないし、まだスクランブル交差点で助けを持っているかもしれない。

そればかりは、行かなきゃなんとも…」

どうやら本当らしい。

ミラさんは珍しく、不安そうな顔をしている。

それ以降は、話すこともなく、約十分ほどかけて交差点へやって来た。

人通りはそこそこ多い。

ミラ

「…人は多いが、もうじき来るぞ。」

何が来るのかと聞こうとしたが、ミラさんに口を指で抑えられた。

そして…

ミラ

「…3、2、1…。」

ミラさんは数を数えた途端、何が起きたのか、見える限りの全てのものが止まった。

琉海

「こ、これはいったい…?」

僕は初めて見た現象に、驚きと恐怖がやって来た。

サクラ

「大丈夫だよ。この時間帯は、いつもこうだからさ。」

僕の肩をポンと叩き、サクラさんは笑った。

ミラ

「今の時間帯のことを、あたしらはスリープタイムと呼んでる。」

琉海

「スリープタイム?…皆寝てるってこと?」

ミラ

「寝てるとはちげぇ。…以前も言ったが、この世界はお前のために用意された世界だ。

だから、お前周辺の人物以外の奴らはこうして固まっちまうんだ。」

ミラさんは説明をしながら、邪魔な者たちを退かしながらスクランブル交差点の中心まで歩いていった。

中心までくると、ミラさんは鞄から何か取り出し、それで地面に何か描き始めた。

集中しているようで、話しかけづらい。

琉海

「…これは何をしているんですか?」

サクラ

「これは、雫のいる空間と無理矢理繋げるためのものだよ。」

ミラさんから少し離れたところで、サクラさんから話を聞いた。

琉海

「無理矢理って、何か影響とかはないんですか?」

サクラ

「この世界への影響か〜…、これは例えだけどね、親しかった子がいるとして、その子との関係性が変化したりするよ。」

琉海

「もしそれが本当になったら結構まずくないですか?」

僕の心配をよそに、ミラさんは準備を終えたようで僕らのことを呼んだ。

サクラ

「まぁ、その時はその時だよ!」

琉海

「…嘘でしょ…」

そして僕らは、時空に無理矢理干渉し、雫たちの待つ空間へと入るのだった。


ーーー

この空間に迷い込んでから、どのくらい時間が経ったのだろう。

スマホで時間を確認しようにも、充電が切れてしまい、琉海に連絡することもできない。

この空間にいると、なんだか気分が悪くなってくる。

それに加え、私と智恵理は昼から何も食べていない。

水も無くなってしまったし、何もない空間で、いったいどう過ごせばよいのだろうか…。

智恵理

「……自販機、動かないのかな?」

「…どうだろ、でもここを動くのは危ないよ。」

私は智恵理の頭を撫でながら、そう言った。

しかし、智恵理はお腹が空いてしまったのか、近くにあるお店を見ながらウズウズしていた。

お腹が空いているのは私も同じだ。

だが身体の大きさを考えると、智恵理は私なんかよりもお腹は空いているのかもしれない。

辺りを見渡してから、何か目印になりそうなものを見つけ、それを私達の行く方に向けて矢印のようにした。

「…智恵理、絶対に私から離れないでね?」

手を差し出し、伝えた。

智恵理は頷き、その手を強く握って、私のそばに近寄った。

矢印の方向に私達は歩き始めた。

そして最初に寄ったのは、スイーツ店のようなところだった。

智恵理を外のショーケース前に待たせて、私は店内へ入る。

相変わらず音は一切しない。

誰もいないことを確認すると、私はショーケース内にあるケーキなどに手を伸ばしてみる。

「……一応、取れそう…。」

ショーケースから一つだけ取り出し、クリームを指ですくい匂いを嗅いでみた。

しかし、匂いも存在しないようだった。

私はそれを、舐めてみようとした。

その時だった。

智恵理

「あれ、なに?」

智恵理が、ハチ公前広場の方面を見ながらそう言った。

私もそちらに目を向けてみたが、智恵理の言う『何か』は見えなかった。

怖くなった私は、念の為に智恵理を連れその場から離れた。

次に寄ったのは、一分ほど真っ直ぐ行ったところにあった、ファストフード店だった。

店内に入ると、厨房まで行った。

冷蔵庫を開き、中には入っているものを取り出す。

「…どうやったら食えるようになるかな…」

私は適当に、それらを近くにあった物で温めようとした。

その時、智恵理に腕を引っ張られた。

「わっ?!」

智恵理

「静かに…!何かいるよ…!」

驚く私に、智恵理が小さな声で伝えてきた。

『何か』を見ていない私は、一目姿を見ようと思い、隠れながら店内を見る。

だが店内には居なかった。

智恵理は私を制止するが、私は「大丈夫」とだけ伝え、一人で入り口へと向かった。

そして私は見てしまった。

「…っ!!」

『何か』はこちらへと近づいて来ており、私は急いで厨房のほうへ隠れる。

私が厨房へ入ったタイミングで、店の扉が開かれた。

息を殺し、その『何か』にバレないように少しずつ移動する。

智恵理はカウンターの後ろにおり、いつバレてもおかしくない。

私は厨房でできそうなことを探し、先ほどの機械を見る。

(…あれが何かわからないけど、音が聞こえたらこっちに来るはず!)

私はその機械の中に色々と突っ込み、機械を始動させる。

機械は音を立て始め、その音に気づいたのか、『何か』はこちらへと歩いてきた。

私は機械とは反対の方へ移動し、『何か』が機械へ近づくのを待った。

そして、厨房へ入ってきた『何か』は、真っ直ぐ機械の方へ歩いていく。

それを見た私は、急いで厨房を出て、智恵理をカウンターから呼び出した。

カウンターから顔を覗かせた智恵理は、カウンターを乗り越えようとした。

カウンターから降りる時に小さな音が鳴った。

その時だった。

???

「ッ!!!!」

声にならない音を、その『何か』は出した。

「うっ!?」

智恵理

「アタマ…、痛い…!」

その音は、私達を苦しめた。

私は智恵理に耳を塞ぐようにジェスチャーし、耳を塞いだ智恵理を抱き上げ、走って店を出た。

『何か』は言ってくる気配がなかったが、まだ頭の中にあの音が響いている。

ズキズキと痛みが増していく頭は、まるで内側から膨張しているかのような痛さに変わる。

ある程度離れた私は、智恵理を降ろし、頭の痛みを和らげるために必死に頭を押さえた。

しかし痛みは消えない。

「…ッ……!!智恵理、もし何かあったら、一人で逃げてね?」

痛みに耐えながら、私は智恵理にお願いした。

智恵理は必死に頭を振って、何か言っているが、聞こえなかった。

身体から力が抜け、私は地面に伏せる。

「…ぐぅッ…!」

意識が朦朧としてきた私は、ポケットに入れておいたイルカのキーホルダーを握りしめ、最後に願った。

(琉海…、助けて…)

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