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君がいる街  作者: 文記佐輝
少女とまだ深い謎
17/26

十七日目『何もない世界』

「東京にー…、来たぞー!!!」

昨日到着した僕らは、東京を適当に歩き、ホテルで一泊した。

そして今日、遊園地へ行くはずだったのだが…

「いや〜!まさか今日は閉園になるなんてねぇ!」

琉海

「いきなりだったね…。まさか改装中だったなんて。」

智恵理

「しかも、明日が再開日だったなんて。驚いた。」

そう言いつつも、智恵理はスマホですでにその事を知っていたらしく、ホテルに着いた時に伝えてくれた。

沙織

「でもよかったわね。明日の予約も何とか取れて。」

サクラ

「そうですね。運良く三部屋残ってましたもんね、このホテル。」

サクラさんは僕のことをチラッと見て微笑んだ。

どうやらこの運の良さも、この世界が僕らに合わせてくれたようだ。

それには感謝しつつ、元気に先導する雫のあとについて行く。

琉海

「雫、あまり離れちゃ駄目だよ。」

「子供じゃないんだから、大丈夫だよ〜!」

僕の中学を無視し、ルンルンで前を歩く。

智恵理も雫の側へ行き、同じ動きで歩く。

裕介

「ほんとの姉妹みたいだな。」

沙織

「そうだね、見てるだけで癒されちゃう。」

兄さん達はゆっくりと僕の後ろを歩いており、サクラさんは僕の左後ろにいる。

サクラ

「最初はどこに行くんだっけ?」

「最初は八丁堀にある蕎麦食いにいくぞ〜ぅ!」

どうやら朝飯を食いに行くらしい。

確かにまだ朝食を取っていなかったことを思い出し、僕はその蕎麦を楽しみにするのだった。


ーーーミラ…

意外にも簡単に、こっちの世界へ来ることができることに気づいた。

ミラ

「なるほどな…、わざわざメールを送る意味なんて無かったわけか…」

ほんの少しだけ誤算が生じたが、それはうれしい誤算だった。

あたしは布団から出て、適当に境内の掃除を始めた。

始める前に、あたしはサクラが置いて行った巫女服を見つけた。

ミラ

「…着るか、バレなきゃ大丈夫だろ。」

そして、巫女服に着替えたあたしは、箒を持って外へ出た。

未怜

「…あ。」

ミラ

「……」

扉を閉めた。

軽く深呼吸をして、掃除をするのを止めようとした。その時…

未怜

「どうして閉めるんですか?」

ミラ

「うぎゃあ!?」

いつの間にかあたしの後ろにいた彼女は、あたしのことをジトッと見てきている。

ミラ

「お前!どこから入った?!」

未怜

「普通に裏口があいてましたよ。」

裏口を開けった放しで遊びに行くなんて、サクラも不用心なもんだ。

あたしは一度大きく咳払いをし、未怜を見た。

ミラ

「まぁなんだ、せっかく来たんだから、お茶でも出してやるぜ。」

気を使ったつもりで言ったが、未怜はそれをきっぱりと断った。

未怜は家から出ると、改めて話し始めた。

未怜

「ミラさんは遊園地へ行かなかったんですね。」

ミラ

「遊園地?」

聞いてなかったのかと、未怜が少し驚いている。

しかし、遊園地か…。

未怜

「実は私、その遊園地のチケットを持ってるんですよね。」

ミラ

「……なるほどな。」

最初からこれが目的だったらしい。

未怜はそのチケットを懐から取り出して、見せてくれた。

あたしは笑い、彼女の事を見て言ってやった。

ミラ

「…いいだろ、お前が何を企んでいるのかはしらないが、あたしはお前の企みに協力してやるよ。」

その応えに、未怜は少し微笑して、「よろしくお願いします」と言ってきた。


ーーー

蕎麦を食い終わった僕たちは、電車を乗り換えつつ渋谷へ来ていた。

裕介

「俺と沙織は、ちょっと行ってみたいところがあるから、ホテルでまた会おう。」

沙織

「迷子にならないように気をつけてね〜。」

二人は電車に乗り、新宿の方へと向かって行った。

残った僕ら四人は、適当に渋谷を歩きながら、何をしようかと話した。

サクラ

「ん?」

ゲーセンで智恵理と雫がアーケードゲームをしている時に、サクラさんのスマホにメールが届いた。

サクラさんは少しその場を離れ、何やら電話をしていた。

僕は少し気になったが、楽しんでいる雫をずっと見ていたかったため、僕は二人の方に集中することにした。

ゲームを終えた二人は、とてもかわいらしい笑顔で笑い合っている。

そこでサクラさんが戻ってきた。

サクラ

「ごめん琉海くん、ちょっと行きたいところが開いたから、智恵理ちゃんと一緒に行ってきてもいいかな?」

琉海

「え?良いですけど…、僕らも一緒に行きますよ?」

サクラ

「う〜ん…、ちょっと野暮用があってね…。」

そして僕にしか聞こえない声で、サクラさんが耳元で本当のことを言ってくれた。

サクラ

「…ミラがこっちに向かってきているから、一度だけ合流しようと思うんだ。」

琉海

「え!?」

驚きすぎて、結構大きな声が出てしまった。

雫と智恵理がこちらを見てきたので、僕は適当に笑顔を作り、二人には別のゲームへ行かせた。

二人が別のゲームを始め、僕とサクラは一旦外へ出て話すことにした。

琉海

「…ミラさんから昨日、こんなメールが届いてたんですけど…、ミラさんこの世界にいるんですか?」

サクラさんにメールを見せながら、僕は確認した。

サクラ

「そうだね、私もミラからは、『もう戻ってこれないかも』とだけ聞いてたからさ、よくわからないんだよね。」

困ったというように、自身の髪を撫でる。

サクラさんは困っているようだが、その話を聞いて、正直うれしく思っていた。

まだミラさんには、教えてもらいたいことがいっぱいあるから、早く会いたく思う。

しかし、それはできない。

サクラ

「…でも、なんだか様子がおかしいような気がするんだよね。」

琉海

「様子がおかしい?…大丈夫そうなんですか?」

サクラ

「さぁ?分からないけど、智恵理と一緒に来てほしいって頼まれたからさ、とりあえず行ってみようと思うんだ。」

琉海

「…そうだったんですね。じゃあ仕方がないですね。僕らのことは心配せずに、智恵理と一緒に行って大丈夫ですよ。」

サクラ

「ごめんね、後は二人で楽しんで。」

話し合いを終えた僕ら二人は、雫たちの下へ戻った。

だが、そこには二人の姿がなかった。

琉海

「……どこに行ったんだ?」

すぐにスマホを確認してみたが、何の連絡も来ていなかった。

さらに不安が募った僕は、店員に二人のことを尋ねた。

店員

「先ほど外へ出ていきましたよ。…なんだか後ろを気にしていたような…」

店員に伝えられたそれは、僕をさらに不安にさせた。

サクラ

「外へ行ってみよう!」

サクラさんの声で、真っ白になりかけていた頭を再び復活させた。

僕はそれに頷き、とりあえず雫にメッセージを送っておいた。

そして、僕とサクラさんは店を出るのだった。


ーーー

私と智恵理は辺りを見渡しながら、現状の把握を急いだ。

智恵理

「……雫…。」

不安そうな声を出した智恵理は、しっかりと私の手を握って離さない。

「大丈夫。すぐに琉海たちが見つけてくれるから!だから安心して!」

私は自身の恐怖心を抑え込みながら、智恵理のことだけを考えて行動することにした。

そうすることで、少しだけ気が落ち着ける。

その時、スマホから通知音が聞こえた。

私はすぐに琉海からだと分かり、メッセージを見る。

ルカイ

『迎えに行くから、どこにいる教えてほしい。』

シズク

『今スクランブル交差点にいるんだけど…。』

私は説明し難い状況をどう伝えるか悩んだ。

シズク

『……人が、居ない。』

そう、私と智恵理は今、スクランブル交差点のちょうどど真ん中に立っているのだ。

まったく人気のない渋谷駅前にいるのだった。

ルカイ

『…?』

『どういうこと?…人がいない?』

やはり琉海も、私に置かれている状況について何も知っていないようだ。

ルカイ

『とりあえず…、サクラさんと交差点まで行くから、そこでしばらく待ってくれる?』

シズク

『了解。』

と返事はしたものの、環境音も何も無い空間で、気が滅入りそうになっているのは事実。

人はもちろんのこと、他の生物も存在せず、風すら無い謎の空間。

もしこの空間に、何も知らない子が来ていたら、きっと正気では居られなかっただろう。

私はある程度この世界について聞かされていたからか、意外にも冷静で居られる自分が居た。

冷静でいることはできているが、やはり無機質で少し不気味な空間にずっといるのはさすがにこたえる。

「…大丈夫…、理解が来る、琉海が来てくれるから。」

そう信じ、私は智恵理と共にその空間で待つのだった。


ーーー

ミラ

「……なるほどな、そんな事が起きているのか…。」

謎の空間に雫が飛ばされたと、東京へ着いたあたしに、サクラから連絡をもらった。

隣りにいる未怜は、すでに何か察しているようで、スマホでルート検索をしていた。

あたしは未怜に、ホテルへ行くように伝え、雫のスマホに電話をかけてみた。

『ミラさんですか?』

ミラ

「おう、あたしだぜ。」

そう返事をすると、電話の先で雫が安心したように息を吐いた。

そして、現状の報告をしっかりとしてくれた。

報告を聞き終えたあたしは、時間を見ながら一つだけお願いをした。

ミラ

「すまないが、今日一日はそっちで過ごしてくれないか?」

『え…?どうしてですか?』

ミラ

「…今日はもう時間が遅い。明日の早朝、あたしがスクランブル交差点まで行き、お前たちのことを救い出す。」

おそらくあたしにはそんな事は出来ない。

『……、ミラさんのこと、信じますよ?』

ミラ

「あぁ、信じてくれ。…明日の遊園地までにはお前たちを、その空間から救い出してやる。だから今日は、そこで寝れそうな場所まで行ってくれ。」

雫はしばらく示唆沈黙したち、「分かりました」と言ってもらった。

雫との電話を終えたあたしは、琉海の電話をかけた。

ミラ

「よぉ琉海。今日は寝れないかもしれないが、アタシの手伝いをしてもらうぞ。

…もちろんサクラも一緒にな。」

そして、すぐに雫を救うための作戦を実行するのだった。

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