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君がいる街  作者: 文記佐輝
謎集い
13/26

十三日目『謎は散らばる。』

僕は目を覚ました。

ー琉海

「…ここは…。」

体を起こし、辺りを見渡す。

そして、立ち上がろうとした時、手に柔らかいものが当たった。

ー琉海

「…ん?なんだ…?」

僕は何かに当たった右手を、少し動かしてみた。

ー???

「…ん」

ー琉海

「ん?」

少し上の方へ手を動かすと、何かに手を噛まれた。

ー琉海

「いでっ?!」

僕は急いでベッドから離れ、カーテンを開けた。

ー琉海

「…え?!」

カーテンを開けてあらわになった部屋は、見覚えがあり。

ベッドから起き上がったその人物も、よく知っている者だった。

ー雫

「んもー、朝から元気だねぇ。ふあ〜…。」

ー琉海

「し、雫ぅ!?」

なぜか僕は、下着姿の雫と同じベッドで寝ていた。

その事に今さら気づき、鼻から血がたれてきた。

ー雫

「……、ルカイのエッチ…。」

ー琉海

「……ッ!!」

小悪魔のように笑う彼女は、いつもの元気なものではなく、どこか妖艶な雰囲気を漂わせていた。

そんな彼女を見て僕は、顔を背け、かがむことしか出来なかった。


ーーー

ー雫

「いやぁ〜、朝のルカイ、可愛かったなぁ〜。」

朝食を作りながら、雫がからかうように言ってきた。

僕は恥ずかしくなり、雫とは反対の方向に顔を向ける。

ついでにテレビも付け、今朝のニュースを確認する。

ー琉海

「…殺人事件だってさ。」

ー雫

「ウソ?…怖い世の中になったもんだねぇ。」

僕はなぜか、そのニュースの内容に興味を持った。

ニュースの内容は、強盗殺人に関するものだった。

亡くなったのは…

ー琉海

「は?」

僕は唖然とした。

なぜなら、そこに書いてあった名前はよく知っている。

いや、今もここにいる人の名前だったからだ。

ー雫

「どうしたの?」

朝食を作り終えた雫が、僕の方へと近づいてきた。

僕は咄嗟にテレビのチャンネルを変えた。

ー雫

「何でそんなに焦ってるの?」

ー琉海

「い、いや?何でもないよ。

それより、うまそうな匂いだなぁ!」

僕は必死に誤魔化した。

雫は不思議そうな顔をしていたが、テーブルに食器を並べ始めた。

ー雫

「今日の朝食はハニートーストだよ〜!」

ー琉海

「へ、へぇ~…、ハニートーストね。」

話題を変えることができ、僕はホッとした。

ひとまずお腹が空いていた僕は、「いただきます」と言い、朝食を食べようとした。

ー雫

「…ん?」

ー琉海

「どうしたの雫?」

雫がテレビを見て固まった。

僕もテレビに視線を移し、内容を確認した。

ー琉海

「…行方不明?」

ー雫

「この場所ってさ、お祭りがあった場所だよね?

…それに、今写ってる場所、私たちがいた神社だよ…。」

雫の言う通り、僕らがいた神社がテレビに映っていた。

そして僕らは、その名前を見た。

ー雫

「…増田智恵理ますだちえり、だって…。」

ー琉海

「……」

ー雫

「……ま、増田って名前は、どこにでもいるよね!」

雫は必死にそう言ってくれているが、僕はその少女の事をなぜか知っているような気がした。

それはきっと、雫も同じで、彼女の顔もいつもの笑顔ではなく、どこか引きつったようなものだった。

なぜそんな気持ちになるのか、僕らにはわからなかった。


ーーー

私はとある村に来ていた。

隣には、祭りで出会った女性がいる。

ーミラ

「…おう、ここではあたしのことをミラと呼んでくれな。」

ー智恵理

「ミラ?どうして?」

ーミラ

「ここではその名前でやってんだよ。」

ー智恵理

「ふぅん…、変なの。」

私はそう言いながらも、ミラの手をしっかり握って歩いていた。

ーミラ

「智恵理、あそこがお前の、あたしらの家だぜ。」

そう言ったミラは、ある場所に指さした。

私はその場所を見て、ミラに尋ねた。

ー智恵理

「…あそこ神社だよ?あそこに住むの…?」

ミラは微笑み、私の頭をポンポンとやってきた。

ーミラ

「そうだぜ、あたしらはあそこに住むんだぜ。」

ー智恵理

「…へぇ~。」

私は長い階段を見ながら、軽く震えた。


一時間ほどかけて上がり、ようやく本殿前まで来た私とミラは、小屋のようなところに行きチャイムを鳴らした。

ー女性

「はーい。」

中からドタドタという音を立てながら、扉を開けに来た。

ーミラ

「よ!元気にしてたか?」

ー巫女

「ミラ!戻ってきたの?」

巫女姿の女性は、私たちを中へいれるとお茶の間に通した。

ー智恵理

「あの人は誰なの?」

ーミラ

「あの巫女は、ここの神社の管理をしているんだぜ。

名前は確か〜…」

ー巫女

「…友達の名前も忘れちゃったわけ?」

呆れたような声でそう言いながら、お茶を出してくれた。

ー巫女

「私はね、この村では一応、『サクラ』って言う名前でやってるよ。

よろしくね。」

サクラは優しく微笑み、手を差し出してきた。

私は彼女の手を握り、握手した。

ー智恵理

「増田智恵理です。よろしく…。」

そう名乗ると、サクラは少し驚いたように目を見開き、すぐにミラを見た。

ミラはお茶を飲みながら、「フッ」と笑った。

ーサクラ

「アンタねぇ…、テレビでやってたよ。」

そう言うと、サクラはテレビを付けて、とあるニュースを見せてくれた。

その内容は、昨日の祭りで私、『増田智恵理』が行方不明になったという内容だった。

ミラは興味なさそうにそれを見ながら、鼻で笑っていた。

ーサクラ

「この子が例の子なのはわかってるけど、さすがに誘拐は駄目だよ。」

ーミラ

「人聞きが悪いぜ。あたしは智恵理を保護してやったんだ。」

ー智恵理

「…そう、保護してもらってるの。」

ーサクラ

「智恵理ちゃんまで…。」

頭を抱えながら、サクラは私のことを撫でてくれた。

ーサクラ

「とりあえず、ご飯でも食べますか…。」

サクラは台所へ行った。


サクラが台所で料理を始めたタイミングで、ミラが口を開いた。

ーミラ

「智恵理、お前にはやってもらわにゃならんことがある。

手伝ってくれるか?」

ミラは真剣な表情で、私のことを見ている。

私は小さく頷く。

ーミラ

「…やってもらいたいことはな、そんなに難しいもんじゃねえ。

いいか、お前にはとある男女に接触してもらうだけだ。」

ー智恵理

「……それだけ?」

ーミラ

「あぁ、難しくないだろ?」

ー智恵理

「ん、簡単すぎておもろしくなさそう。」

ーサクラ

「面白さはないけど、実はかなり重要なことなんだよ。」

料理を持って戻ってきたサクラは、テーブルにそれらを置いていく。

ー智恵理

「重要なこと?」

ーミラ

「あぁ、めちゃんこ重要なことなんだぜ。」

ーサクラ

「でもまだ早いんじゃないの?

…そんなに急がなくてもいいと思うけど…。」

サクラは心配そうにミラに尋ねた。

ミラはサクラの心配をよそに、話を続ける。

ーミラ

「…まぁなんだ。会ってからやってもらうことは、適当に仲良くなってくれるだけでいい。」

ーサクラ

「相変わらず適当な人ね。」

私はあまりにも簡単なその内容に、少しだけ拍子抜けしていた。

テーブルに出された美味しそうな料理を見ながら、私は我慢ができず、それらを食べ始める。

二人は何やら話をしている。

あまり興味がないので、私はテレビを見ながら食事をする。

ー智恵理

「…あれ?」

私はテレビでやっていたニュースに驚いた。

ー智恵理

「…このニュース、この前やっていたニュースと同じ内容だ…」

ただ同じだけではない、このニュースでは、"今日"起きた事件だと紹介されていた。

そこには以前と同じ名前、"東雲雫しののめしずく"という女子高生の事がやっていた。

ー智恵理

「…東雲雫、…なんだか、懐かしい名前…」

私はその名前を、テレビで見るよりも前に、知っている気がする。


ーーー

ー舞菜

「……この世界は…、彼が作り出している…?」

ー???

「そうだ。…お前の娘を見捨てたアイツが、再び自身だけ助かろうとしている。

…それはあってはならないことだ。

お前も、…まだ奴のことを許していないだろう?」

ー舞菜

「……許せるはずがない…」

私は、ずっと我慢してきたんだ。

私から、大切な娘を奪った奴と同様に、娘を見捨てた彼が…

ー舞菜

「…憎くてたまらないわ…」

謎が散らばり、そしてその謎は、再び一つになる。

琉海は皆を救うか、東雲雫を救うか、自身を救うか。

選択を迫られるだろう。

そしてその時、物語は動き始める。

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