現世では冴えない僕も遂に異世界転生!神なる者から授かったチートスキル『エッグ・クリエイト』を駆使して最強姫君と共に異世界で成り上がる
僕の名前は高砂亮太。黒髪もじゃもじゃ頭の冴えないモブ男子だ。
アニメが大好きなインキャでクラスにも頑張ってはいるものの馴染めていない。僕の優しさが伝わりにくい人種が余っているようで世知辛い世の中だなと思う日々だ。
そんな可哀想な僕に遂に人生の最大の好機が訪れた!異世界転生チャンスだ!
周りは真っ暗闇で目の前には謎のマントを身に付けた漆黒のオーラを纏ったおっさんがいる。
こういう時は美しい女神が相場だと思ってたがまぁそういう時もあるだろう。期待の眼差しを向けているとおっさんが口を開く。
「お前には異世界転生して世界を救ってもらう。そのためのぶっこわれマキシマムハイパー最強チートスキルをお前に付与する」
やったぜ!これで冴えない人生とはおさらばのイケメンモテモテハーレムハッピーライフの開演だ!僕の中からワクワクドキドキか溢れ出す。その様子がおっさんにも伝わったようでおっさんの顔にもにっこりと笑顔が浮かぶ。
「それで!どんなチートスキルなんだ!?」
「聞いて驚け。最強スキルのうちの一つ。変換をお前に授ける」
チェンジャー。なんて素晴らしい響きだ。多分物質を剣とか魔法とか相手の攻撃をチートな最強のあれに変換できる凄いやつだろと期待に胸を膨らませ僕の胸はパツパツになる。おっさんはそんな僕に対してこう言った。
「そのスキルを使えば単三電池を単二電池として使用する事ができる」
静寂が訪れる。雲行きが怪しくなったぞ。こいつ今なんて言った?僕は確認を取る。
「……え?それだけ?」
「単三電池を単二電池に変えることさえ出来れば向かう所敵なしだろう」
「そ、そうなの?異世界って単二電池さえあればどうにかなるもんなの?その電池を使って何をすればいいの?」
「それは……ほら、こうあれだ。身体のあらゆる穴に突っ込んで……」
「物理的に使うんかい!!それ単二じゃなくてもいいだろ!っていうかそもそも電池じゃなくていいから!!」
「いや穴に入れてムレた結果漏電とかするかもしれないし……」
「しねーよ!!どんな水分含んだ穴に打ち込む想定なんだよ!てかどう考えても穴に突っ込もうとする過程で襲われて死ぬわ!!」
「文句の多い奴め……プレゼントとして数本お前のポケットに既に忍ばせてある。まぁ結構電池って長持ちするし案外なんとかなると思うよ」
何故か唐突にラフない言い回しになったおっさんに苛立ちを覚える。ていうか冷静に考えて単二電池だけで異世界を渡り歩けるわけがないしこのままゴーサインを出されそうな俺は駄々をこねる事にしおっさんに怒鳴りつける。
「いや待ておっさんこのまま俺をこんなしょうもないスキルで異世界に旅立たせるつもりか!?もっと他になんかこうあるだろ!!別のにしてくれ!!」
「あ、単四の方が良い?」
「サイズ感が気に食わないじゃないんだよ!根本から変えろって言ってんの!!このままじゃ俺電池数本持って行くだけの奴だろうが!!」
「文句しか言わん奴め。仕方ない出血大サービスだ。おまけでこのチートスキルも授けてやろう」
カァッ!!
僕の身体の周りを光が包む。身体中に力が漲る。自分自身が最強の自分へ生まれ変わって行く高揚感。神なる力。全知全能の力を我が身に宿したという実感を感じ僕は閉じていた目をそっと見開く。
「覚醒したようだな少年……」
「あぁ。これがチートスキルを身に付けた感覚なんだね。今ならなんでも出来そうな気がするよ」
僕は漲る力に身を委ねてみると自分の手元に手のひらサイズの小物が現れる。
「あぁ……それがこの世に存在するチートスキルの中でも群を抜く最強マキシマムウルトラハイパーチートスキル……|味付けたまご簡単生成機《味付けエッグ・クリエイト》だ」
「いるかあああああぁぁぁぁぁ!!!!」
「ぶぼぼぉ!!」
僕は手元に現れた味付けたまごメーカーをおっさんの顔面へ全力投球した。
「なんだ!?今度は何が不満だというのだ!!?」
「不満しかないわ!!なんだよ味付け・エッグ・クリエイトって!」
「それがあれば味付けたまごを手間暇かける事なく誰でも簡単に作る事が出来る優れものだが?」
「知ってるわ!!これのどこがチートスキル!?作り方も知ってるけど割と時間かかるし!!これでどう魔物と戦えってんだよ!!」
「それは卵に下剤とか塗しといてそれを身体の穴に詰め込めば……」
「だからなんで全部穴に詰め込む前提なんだよ!!てかそんな事するくらいなら下剤直接ぶっこめばいいだろーが!何なら下剤をよこせよ!!」
「むぅ……贅沢な奴め。人の親切をここまで無碍にする奴は早々いないぞ」
「これの何処が親切なんだよ。異世界に単身乗り込む人間をバカにしてんだろ。お前のしてる事はチートスキル付与じゃないから。百均商品付与だから。超低コスパ人助けだから」
「だったらこれならどうだ。とびきり可愛い美女をお前に与えてやる。絶世の美人を携えて旅をする。異世界転生には付き物だろう?」
「わかってきたじゃないか。おっさん……」
「いでよ!!とびきり最強ガール!!はああぁぁぁ!!」
そう言いながらおっさんは天に向かって手をかかげると上空から光の柱が出現。光が晴れて行くと共に少しずつ人影が露わになって行く。
「お……おぉ……」
「これがお前と共に旅するめちゃカワパートナーの姫君。マッスルアップ・フェンドット・J・ルルチアンダルコちゃんだ」
いやでかいでかい。ごついしムキムキだしめっちゃ睨みつけて来てるし僕より髪も短いし身長とか2mくらいあるし普通に怖い。指相撲とかしたら腕ごと粉砕されてしまいそうなレベルのビルダー級のマッスル系女子が目の前に現れた。
完全に言いたいことも碌に言えず萎縮してしまっている僕を尻目に話しはどんどん進んでいく。
「姫を頼んだぞ……少年。姫と共に世界を救うのだ!!」
おっさんの手によって産み出された光の扉。俺たちは二人揃って並びその扉を開ける。
「言っとくけど、あいつに言われて仕方なく付き添ってあげるだけなんだからねっ!勘違いしないでよねっ!」
見た目に反して古のツンデレスタイルかよ……面白くなって来たじゃないか……こうして僕とマッスルアップ・フェンドット・J・ルルチアンダルコとの冒険が幕を開けた。
……向こうに着いたらまずは下剤を調達しないとな。
―――― 完――――




