一緒に飲みませんか?
真琴の視線に気づいた男性が、グラスを持ってこっちへ寄ってきた。
「初めまして。お隣、よろしいですか。」
「え、ああ、どうぞ。」
「失礼します」
男性が座ったあと緊張で何も話せなくなった。
こうやってお誘いいただくのは初めてだ。
私はいつも仕事帰りに来るからスーツを着ている。
今までを思い返せば、誘われていた人は私服の人が多かった。
じゃあ、なんで私なんかと…?
「…。」
「ここの常連客ですか?」
男性はしっかり私と目を合わせて話してきた。
あまり男性経験がない私は恥ずかしくて目を逸らしてしまう。
「常連客ってほどはないですけど、まあよく来ているほうだと思います。」
「へ〜、意外です。あまり飲まないタイプの人だと思っていました。」
そう言って男性は柔らかく微笑む。
そんな笑顔が眩しくて顔が火照っている感覚がする。
男性はテーブルの上にあったメニュー表を広げて、見つめている。
「僕初めてここに来たんですけど、何かオススメのカクテルありますか?」
「え〜と、24トニックの炭酸割りですかね…。このお店のおすすめなんですよ。」
「じゃあそれを頼もうかなぁ。」
「すみません、24トニックの炭酸割りひとつお願いします!」
シャカシャカシャカシャカシャカ…
「お待たせいたしました。24トニックの炭酸割りでございます。」
会話の沈黙を破ったのはバーテンダーだった。
(たっ、助かったぁ〜。このままずっと沈黙状態なのは流石に気まずいよ。)
男性がお酒に口をつけたところで、ずっと気になっていたことを勇気を出して聞いてみることにした。
「あの…。なんで私に紅茶クッキーをくれたんですか?」
「んー、単純に興味があったから?かな。」
その男性はグラスに見惚れながら言う。
「僕もお酒好きだからさ、同士を見つけようと思って。あわよくば仲良くなりたいなーって。…リア友も結婚し始めてるし、僕もそういう出会いが欲しいなーっていうのもある笑」
そう言って私の顔を見た。