あちらのお客様からです
「はぁ。」
そう大きなため息を吐き、私星合真琴は一人でバーでお酒を飲んでいた。
店内は比較的暗く、手元は明るく見えるようライトが照らされていた。
カウンターには他にも何人か人が座っていて、知らない人に話しかけている人もいた。
(まぁ、私には関係ないけど。)
バーテンダーの後ろにはたくさんの種類のお酒が置いてあり、強いものから弱いものまで置いてある。
この店の定番はその場で作る炭酸割りの24トニックだ。
仕事で嫌なことがあった日の夜はいつもここに訪れる。
まあ、今日は気を取り直して飲もう。
そんで、明日も仕事あるし、早めに帰ろう。
「すみません、ジンフィズ水割りで」
シャカシャカシャカシャカ…
店内に澄んだ音が静かに響き渡る。
「お待たせいたしました。ジンフィズの水割りでございます。」
「ありがとう。」
「そして、あちらのお客様からの紅茶クッキーでございます。」
そう言って、目の前の机に10枚ほどのクッキーが置かれた。
(10枚…?一人で食べる分には多いんだけど。)
バーテンダーの視線の方へ向くと紺色の服に黒の軽いジャケットを着た男性がいた。
首にはネックレスや、そして腕には級そうな時計をつけている。
かっこいいとは言い難いが、綺麗な男性だった。
(人生うまくいってそうでいいなぁ。もっと勉強して良い大学入るべきだった。)
そんな真琴の視線に気づいた男性が、グラスを持ってこっちへ寄ってきた。
「初めまして。お隣、よろしいですか。」
ジンフィスのカクテル言葉は「あるがままに」