表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/157

GT500

カシュン…カシュン…。

ガガガッ…

キュイィィィン…!


「おい瀬名。そろそろ休憩したらどうだ?」


「いや、まだターゲットタイムを出せてない。」


「ポテチ食う?」


「食べる。あー…」


瀬名はハンドルを握ったまま大口を開ける。

そこに琢磨がポテトチップスを捻じ込む。


「それにしても、なんで鈴鹿なんだ?開幕戦は岡山だろ?」


「モグモグ…鈴鹿は、日本で一番デカくてムズいコースだ。でも、マシンの挙動を知るには丁度いい。ありとあらゆるコーナーが揃ってるからな。」


琢磨の家、彼が愛用する筐体のステアリングを荒々しく左右に切る。


「コース前半のS字、ほぼ直角のデグナー。ヘアピンカーブにスプーンカーブ。GT500のダウンフォースなら全開で曲がれる130R。」


「今現在、GT500マシンが鈴鹿で出すタイムは1980年代のF1に匹敵する。それにお前は乗るん…だよな。」


「どうやらそうらしい」


わんこそばのように次から次へと口に運ばれるポテトチップスを咀嚼しながら、瀬名は走り続ける。


「お前とこのゲームでここ(鈴鹿)を走ってた頃が懐かしいよ。」


「今でも誘ってくれりゃあいいのに」


「できるか、そんな事。お前は今じゃSUPER GTドライバーだぞ?」


「でも家には入れてくれるんだな。」


マシンがコントロールラインを通過し、『ポーン』というタイム更新を示す音が鳴る。


「1分44秒131…。」


「リアルでもこのレベルで走れりゃ、間違いねえんだがな。」


ポリポリと頭を掻くと、瀬名はコックピットから降りる。


「ま、ここ(ゲーム)から這い上がった人が界隈のアタマ張ってるんだ。それに俺も場数は踏んできた。」


「前年度チャンピオンは富岡祐介さん有するチームAMT レクサスRCF…オレらゲーマーの星が、目の前に立ちはだかってくるんだな。」


挿絵(By みてみん)


カーナンバー1は、頂点の証。


「俺らが大学に入学したあの年、GT500に上がってきたあの人。今ではトップの地位を盤石のものにしている。」


「松田さんがいなくなったってのもあるだろうが、実力も超一流だ。」


瀬名は自らの手のひらと拳を合わせると。


「とにかく、先ずはゲーム(バーチャル)界の伝説を狩る。そして俺がその位置に成り代わってやる。」


「ビッグマウスは変わってねえな。実力が伴うようになったのは良い変化だが…。」


「ひと言多いわ」


対する瀬名が今シーズンドライブするマシンはLEMPEL Technologies 日産GT-R。


挿絵(By みてみん)


松田優次が引退と同時に立ち上げたモータースポーツ専門の企業、レンぺルテクノロジーズ株式会社。


「GT-Rの戦闘力は一級品だ。特に直線は伸びるから、富士なんかは強いんじゃないかな。」


「松田さんの現役時には連覇もしてる。マシン性能は心配ないな。後はお前次第だぞ、瀬名。」


「ああ、分かってる。」


瀬名はモニターから目を離さず、静かに返答した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
読書配信へのお申し込みありがとうございます! 瀬名くんと琢磨くんが二人であれこれ言いながらゲームを楽しんでいる様子。 第一章の最初の頃を懐かしく思いだしました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ