表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光速の貴公子 ~30年目のトリビュート~  作者: 紫電
第二章 スーパー耐久
56/157

煌めき

午後2時。

徐々に雨が弱まっていく。


しかし、残り1時間でドライタイヤが使用できるまでに乾くとは思えない。


瀬名の勢いは止まらず、後方を引き離し続ける。


既に傾き始めた太陽を遮る雲は、もうほとんどない。

濡れた路面が、キラキラと陽光を反射する。


挿絵(By みてみん)


その煌めきをかき消すように、各マシンがコーナーを駆け抜けていく。


シャーッという水切り音が辺りにこだまし、レコードラインが徐々に乾いてゆく。


マシンが一番多く通るラインであるため、タイヤによって水捌けがなされるのだ。


瀬名のペースアップが止まらない。


彼は路面状況に応じて限界領域ギリギリまで寄せることが得意だ。

その道理なら、雨上がりが一番輝けるシチュエーションとなる。


もはや、勝負は決した。






午後3時、戦いの終わりを意味するチェッカーフラッグが振られる。


この時点で走っていた周回が、各車のファイナルラップとなる。

最終的に光岡大は632周を走り切り、トップチェッカーを受けることとなった。


チームメイトの待つピットへとマシンが帰ってくる。


『OK、瀬名。P1(ポジションワン)、P1。お疲れー。』


「おいおい、こんな時までカッコつけんなって。もっと喜べよ」


「いや、いま喜びを爆発させたら別のスイッチ入っちゃって泣きそう」


『なんだそりゃ』


珍しく感極まっている琢磨が少しツボに入ったのか、瀬名は笑う。


「それにしても、みんなよく戦ってくれたよ。お疲れ様でーす!!!」


光岡大のピットガレージから歓声が上がる。


「お前がなー!!!」


「Foooo!!!」


「ありがとー!!!!」


最終スティントからは全員が無線を繋ぎ、瀬名の一挙手一投足を見守っていた。

マシンから出てきた瀬名は、チームメイトから手荒い祝福を受ける。


「おい!!!水は良くない!めっぽう良くない!!!風邪引いちゃう!!!」


11月9日である。

15時にはもう太陽は傾いており、少し肌寒い。


そんな中、琢磨はバケツ満杯の水を頭からぶっかけた。


もちろん、大笑いしながら。

その目に浮かんだ涙は、笑いすぎてのものか。


それとも別の意味を持つのか。


1つ確かなのは、そんなことはどうでもいいという事である。


彼らは勝ったのだ。


幾度の逆風も、神からの寵愛も同時に受けて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
優勝おめでとーーーー!! 雨が降ってきたタイミングが神がかっていたし、雨上がりのコースで前を誰も走っていない画像がすごく綺麗で、走っていてとっても気持ちよさそう!(*'ω'*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ