ちょっと休憩・その5
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
作者の紫電です。
第五章が終わり、このコーナーもこれで最後となります。
裏設定や自分語りを書いているこの時間が予想外に楽しく、ちょっと寂しい気持ちもありますが…
では、今回の『ちょっと休憩』も楽しんで行ってください!
レースファンの読者さんはもう遥か昔にお気づきでしょうが、この作品の登場人物の名前は、実在の人物(主にレーサー)の名前をモチーフにしています。
今まで出てきたネームドキャラを列挙しておくので、ぜひ誰が誰モチーフなのか考えてみてください。
伏見瀬名
佐川琢磨
片山京一
三浦亜紀
小林可偉斗
星野義信
桑島正治
長谷部尚貴
伏見稔
中島聡
松田裕毅
松田優次
小林崇斗
富岡祐介
こうして列挙してみると、多い気もするし少ない気もしますね。
特筆すべき点としては、女性キャラが亜紀ただ一人というところでしょうか。
やっぱりまだまだモータースポーツは男の世界という印象が根強いです。
しかし、2024年からは女性レーサーが1人、スーパーフォーミュラに参戦するなど、次第にその壁のようなものが取り払われていっているような気がします。
歴史上には何人か女性F1ドライバーもいらっしゃるので、日本からも輩出されることを期待したいですね。
(本当は作者が女性の描き方が分からないからということはナイショです)
最終章についての補足説明です。
「」の中に『』が入り、カッコが二重になっているセリフが多く見られるようになります。
これは、キャラクターが英語で話していることを意味します。
外側のカッコも『』である場合は、今までと同様『無線など機械を通した音声』で、なおかつ英語で話しているときに使用されます。
ここでもう一つ。
皆さんは、第一章の『ちょっと休憩』で亜紀のイメージソングについて語った際、「後半に描く予定のとあるシーンのために瀬名と亜紀をくっつけた」と言ったことを覚えていらっしゃいますでしょうか。
そのとあるシーンとは、サブタイトル『ライク・ア・1994サンマリノ』における、瀬名と亜紀が電話をするシーンです。
実はこのシーン…というかその前後にもですが、一連の流れに元になったエピソードがありまして。
時は1994年。
F1グランプリがイタリア・イモラサーキットで行われていました。
サンマリノグランプリと題されたそのグランプリで、事故が多発したのです。
このグランプリには、アイルトン・セナも参戦していました。
予選1日目、セナの同郷・ブラジル出身の後輩、ルーベンス・バリチェロがクラッシュ。
一時意識不明となったものの、すぐに回復。
見舞いに行ったセナは、バリチェロを「石頭だな」とからかったと言います。
そう、裕毅を見舞いに行った瀬名が同じことをしていましたね。
予選2日目、またも事件が起きます。
オーストリア出身のルーキー、ローランド・ラッツェンバーガーが314キロでコンクリートウォールに激突。
そのまま彼は帰らぬ人となりました。
F1での死亡事故は1982年以降12年間無く、安全だと思われていた矢先のことでした。
この時点でセナの精神は非常に疲弊しており、5月1日の決勝レースを辞退することを打診されていました。
そんな中、その日の夜セナはホテルから恋人のアドリアーネ・ガリステウに電話をかけます。
そこでセナは「走りたくない」と胸中を明らかにしました。
ただ、やはり彼女と話している間にその気持ちは変わっていったようです。
最終的にセナは、「心配しないで、僕はとっても強いんだ」と締めくくり、電話を切りました。
決勝レースが始まりました。
ポールポジションからスタートのセナでしたが、後方でクラッシュがあり、すぐにセーフティーカーランとなります。
セーフティーカーラン明けの7周目。
セナのドライブするマシンは高速コーナー、タンブレロに差し掛かります。
その時の車速は、309キロ。
その速度でコントロールを失い、コンクリートウォールにクラッシュしました。
セナの伝説は、ここで締めくくられることとなります。
勘違いしないでいただきたいのですが、私はアイルトン・セナさんの事故や死をネタにしたり、軽々しく扱っているわけではありません。
ただ、1人でも多くの人に彼が生きた証と、どんなに素晴らしいドライバーであったかを伝えていきたい。
それだけです。
これが、私なりの『トリビュート』なのです。
さて、これから始まるF1編は、本来第六章となるべき位置づけです。
しかし私は、あえて『最終章』と表記します。
なぜならここでの結果がどうであれ、瀬名のレースキャリアはこの一年で終わるからです。
最終章のテーマは『孤高』です。
さあ、世界の頂へ参りましょう。