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光速の貴公子 ~30年目のトリビュート~  作者: 紫電
第五章 スーパーフォーミュラ
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強みと弱点

裕毅の強みは分かってきた。

一発の速さは元より分かっていたことだが、そこに忍耐力もプラスされている。


思えば開幕戦、瀬名の後ろに我慢強く張り付いていられたのはそれが要因なのかもしれない。


「なんでまた、突然東京に来たいって言い出したんだ?」


「もんじゃ焼き食べたいんです」


「はい?」


夏真っ盛り、お盆休みの浅草はかなりの人でごった返していた。


「前に聡さんと、瀬名さんと3人でここに来た時、美味しそうな匂いがしてたので。あの時はご飯の時間じゃなかったし…」


現在時刻は丁度正午。

お昼時だ。


東京を代表するグルメであるもんじゃ焼き。

発祥は江戸時代で、月島と浅草を中心に広がっていった。


小麦粉を出汁で溶き、鉄板で具材やソースと共に焼いて食す。


2人はスマホで適当な店を見繕い、席につく。

掘りごたつ式のテーブルに鉄板が備え付けられており、店員がその鉄板に熱を入れていった。


この店での調理はセルフサービスで、客が自ら具材を鉄板で焼く。

アクティビティー性があり、アツアツを食べられる一石二鳥の方式である。


「いやー。久々に来たけどこんなにいっぱい種類あるのか。」


「迷いますね」


王道の明太もちチーズから、意外なカレーもんじゃまで。


「それにしても…楽しそうだな、お前」


「え?ああ、美味しいもの食べるの大好きなので…」


少し恥ずかしそうにメニュー表で顔を隠す裕毅。


「いや、いい事だと思うよ。世のスポーツ選手はストイックすぎて塩しか味をつけてないパスタを食い始めるような人もいるからな…それ幸せなのか?と俺は思う。」


「頼まれても食べたくないです。塩パスタ」


眉間にしわを寄せて顔をしかめる。


「よし、決めました。明太もちチーズにします」


「お、正統派なやつだな」


「やっぱり初めて食べるものって王道のものから行きたいじゃないですか」


裕毅のモットーに通ずるところがある人も多いのではないだろうか。


「せっかく2人で来たんだから2種類頼んでシェアしようぜ」


「いいですねそれ」


「ソース味だけだと飽きるだろうから…俺はこの塩だれ魚介系のにするわ」


それと、忘れてはいけないのが。


「あと生ジョッキ。」


「やると思いました」


笑顔で瀬名を指差す裕毅。

今日は機嫌がいいらしいので、飲み過ぎても怒られないかもしれない。


次々に具材が運ばれてくる。


今回はもんじゃ焼き経験者ということで、瀬名がヘラを握る。


まずは野菜等具材を炒め、その具材でドーナツ型の土手を作る。

その土手の中に小麦粉を解いた出汁を2回に分けて流し込む。

少々煮立たせた後、具材と出汁を混ぜ合わせたら完成である。


「手際いいですね。」


「そう見えるだけだよ。内心焦りまくりで…あっ土手が決壊する」


二本のヘラをカンカン鳴らしながらキャベツやその他を切り混ぜていく瀬名。


「これね、ウチの父さんはめっちゃ作るの上手いのよ。」


「稔さんの意外な特技が…」


出汁を入れて勢いよく混ぜる。

汁気がなくなるまで煮詰めれば…。


「はい、見栄えは悪いけど味は変わらんよ」


「もんじゃ焼きの特性上見栄えが悪いのかどうかも分からないので大丈夫だと思います!」


完成だ。


「焦げ目がつき始めたころが一番美味いんだ。食べ進めてるうちにカリカリになってくるぞ」


「わーい」


食べながらも進化する食べ物・もんじゃ焼きである。

裕毅は食器である小さなヘラを手に取ると、もんじゃをすくい取って勢いよく口に入れた。


「バカお前そんないきなり食ったら」


「あっつ!!!!!!」


「ほら言わんこっちゃない」


涙目で悶絶する裕毅。


「口の中の皮全部剥けまひた…」


「まあ、この料理食ってたら遅かれ早かれ火傷はするから。むしろそれが醍醐味まである」


ゆっくり息を吹きかけ、よく冷ましてから口に入れる瀬名。

実は彼は常軌を逸するほどの猫舌である。


「お前、怖いもの知らずなのはメリットもあるかもしれないけどさ。考えなしに行動するの気を付けないといつか本当に死ぬぜ?」


「気を付けま…あっつ!!!!!!」


「話聞こうぜ」


毎口叫ぶ裕毅。


3口目あたりから瀬名はツッコミを放棄し、ジョッキに口を付けた。

裕毅の弱点、なんか分かった気がする。


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― 新着の感想 ―
ほのぼのもんじゃエピソード、ご馳走様です(笑) 無防備に思いっきり食べちゃって熱ってなってるとことか、すごく可愛い(*'ω'*) やっぱり裕毅くん、私の推しキャラです! でも159cmから170cmは…
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