また一緒に
3月4日。
「あ!聡さん!来てくれたんですね!」
「そりゃ、元チームメイトが二人とも出るんだ。応援にも来るさ。」
スーパーフォーミュラ開幕戦、鈴鹿。
その予選日。
「瀬名さん呼んできましょうか?」
裕毅はガレージの奥をチラリと見て、チーム監督である長谷部尚貴と話している瀬名を視認する。
「いや、取り込み中みたいだし後ででいい。これ、差し入れだ。」
そう言って聡は重そうに持っていたビニール袋を裕毅ヘ渡す。
「重…ッ…。これなんですか…?」
「エナドリだ。多分クルーの皆さんの分もあると思う。」
裕毅が袋の中を覗き込むと、青と銀の缶が袋を突き破らん勢いで敷き詰められていた。
「わざわざありがとうございます。みんなで飲みますね!」
「おう。じゃ、予選頑張って。」
袋を持つ左手をプルプルさせながら、空いた右手を振る裕毅。
それを見届けると、聡はピットエリアを出ようとする。
すると。
「聡さん!」
かなり遠くなってしまった距離から、裕毅が叫ぶ。
「またいつか、一緒に走りましょうね!!!」
その声に聡は振り返らずフッと微笑み、右手を上げた。
予選が始まった。
『まただ!またコースレコード更新!!!』
中でも異彩を放っていたのは、今シーズンから参戦のチーム・MAXWELL
『2号車伏見と、22号車松田のコースレコード合戦!!!』
青と白を基調としたその2台のマシンが、フロントローを独占した。
『3位以下は全くついてこられない!!!』
天才二人によるコンビの強さが、早くも世に知らしめられる。
「『また一緒に走りましょう』…か。」
グランドスタンドに座る、観客の一人の声。
「ハハッ。お前らと戦り合うのは二度と御免だ。バケモノめ…。」
内心嬉しそうな、満面の笑みでそう呟いた。