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山童  作者: 大石次郎
8/20

8話

煤を被ったあたしと山童、バケヤマドリは大きなトゲのある植物だらけの森にいた。

ナマクラとヤキムシジョロウは追い払えたけど、山童は(すす)だけじゃすまなくて火傷だらけにされて草みたいな髪もだいぶ刈られてしまっていて、バケヤマドリはあちこち傷付いて尾羽根もたくさん失くし、飛べなくなってしまっている。ひどいよ。

山童は髪の中にしまってた小瓶の塗り薬をバケヤマドリに塗って手当てしてる。


「山童、バケヤマドリ、大丈夫?」


「おう! 化け物はしぶといんだ。死んでもその内生き返るぞ? さっきとっちめたアバタオニもその内、吹雪のソネミ岳で生き返る。次のアバタオニがどんなヤツになるかはわからないけどさっ」


「お化けってそんないい加減な生き物なの??」


よくわかんないっ。


「生き物だって! うっへっへっ。よし、こんなもんだ! あとはこれを食べてな」


山童はドングリを3つ髪から取り出して2つはバケヤマドリに食べさせて、1つは自分が食べちゃった。


「ふんっ」


山童がお腹に力を入れたら、刈られた草の髪が元通りに生えて、煤や火傷の(あと)も全部も消えた!


「すごっ」


「へっへっ、化け物は死なないぞ?」


「というかまだドングリ持ってたんだ」


「ヘソクリだ。あと5つあるっ。さてと・・」


山童はバケヤマドリに向き直って頭を撫でてやった。


「バケヤマドリ。力が戻ったら社の湖に戻って主様達に知らせてくれ。思ったより面倒になった、賢介を持ってかれちまったし」


バケヤマドリは静かに目を閉じて、また開いて、山童とあたしを見た。とても賢い目をしてる。わかってくれたみたい。

山童、うなずいて、今度はあたしを見た。


「ナツミ! ここに残ってバケヤマドリと湖に戻って」


「嫌っ! あたしも賢介を助けに行くっ」


あたしと山童はにらみ合いになった。ゆずれない!


「・・そっか。わかった。じゃあ、これとこれはお前に預けとく。あと、これは音でバレちまうからオイラが預かる!」


山童はバケヤマドリの手当てに使った塗り薬と、氷の睡蓮をあたしに渡して、代わりに熊避けの鈴をちょっと触っただけで簡単に私の腰から取ってしまって、草の髪の中に隠してちゃった。

中に入れると音はしない、っというかあの中どうなってんの??


「行くぞ? ナツミ! オンジイの城に乗り込んで、賢介を取り返して、まとめてとっちめてやるぞぉっ?!」


「やってやろうじゃないのっ! じゃあね、バケヤマドリ」


私は保健室の臭いを煮詰めたみたいな臭いの塗り薬と、氷の睡蓮はハンカチで包んで、ウェストバッグにしまい、さっさと歩きだした山童のあとに続いた。


「トゲトゲども! そこのけそこのけっ。山童が通るぞ? のかず、オイラ達のことをオンジイ達に知らせたら、来年は芽吹かせないからな? そこのけそこのけっ!」


山童はそう言うと、おおきなトゲの植物達は、恐れたみたいにギリギリバリバリ音を立てて道を開けていった。


「あんた植物に命令できるんだ」


「化け物以外の野山のモノは、オイラに逆らえないのさっ」


威張る山童。でも、ホントにすごい! あたしと山童はトゲの森にどんどんできてゆく歩き易い道を歩いていった。

待っててね、賢介。きっと怖い思いをしてるだろうけど、絶対に助けるから!



僕は豪華なベッドでヤヨイに膝枕(ひざまくら)をしてもらって、金の耳かきで耳の掃除をしてもらっていました。ヤヨイは女の子と、桜並木の通りみたいな匂いがして、温かくて柔らかいです。それに、


「うひゃ~っっ、ヤヨイ! くすぐったいよぉ~!!」


「ダ~メっ。賢介君、動かないで! 危ないよぉ?」


「うう~っ。ふぁー。・・この指輪、嵌めて月の印にしたら狼のお化けになっちゃうでしょ?」


僕はイヌガミの指輪を嵌めずに持って、太陽と月の印をカチャカチャと変え続けてイジっていました。この指輪、大き過ぎる気もするけど?


「そうだよ」


「今、ちょっと使ってみよっか? 練習!」


「ダメだよ。3回しか使えないんだから」


「ヤヨイ、狼になっちゃうぞ? ガウガウっ」


「うふふふっ、ダメだよ?」


「ガウガウっ」


僕は僕の耳かきをしてくれてるヤヨイにちょっかいを出しました。ヤヨイ、超優しいから!


「や~だ、もうっ。しょうがないわんこちゃんね! うふふふっ」


「へへへっ」


ヤヨイ、超優しい。美味しいお菓子もあるし、僕、ここに住んでもいいかも?

その時、


ズン! ズン! ズン! ズン!!


大きな揺れが部屋に近付いてきますっ。


「いけないっ。お父様だ! 賢介君っ、ちゃんとしてっ。指輪は・・靴の中に隠してっ!」


「靴? ポーチじゃなくて?」


僕達は慌ててベッドから降りて、指輪は靴の隙間に入れて、お茶を飲んでいたテーブルにきちんと向かい合って座りました。

靴に石が入ったみたいで気持ち悪いですっ。


「ヤヨイのお父さんってどんな人?」


「・・オンジイって呼ばれてる」


「え?」


「君達が退治しようとしてるオンジイが、私のお父様だよ」


「・・えーーーっっっ??!!!」


僕は椅子からひっくり返りそうですっ。


ズン!! ズン!! ズン!! ズン!!!


オンジイが、来るっ!

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