3話
ん? なんだろう? 凄く、凄くっ
・・動物の臭いがするっ?!
「何っ?!」
熊? ベス?? 僕は慌てて起きました。熊だったらもうダメかも?
「わっ」
目の前に鳥の頭がありました。それも熊の何倍もの大きさの!
それは、身体も大きくて、立派な尾羽根を何本も持っていて・・え? 僕、高い場所にいる?? この大きな身体を見下ろしていますっ。
僕は、船みたいに大きな平たい岩の上にいました。見渡すと周りの木々もとんでもない大きさです!
「えーーーっっ???」
「うるさいぞ?」
変な声がして、何か小さな物を横からぶつけられました。ドングリです。
「痛っ?」
そっちを見ると石でできた家が建っていて、その屋根に子供みたいな鬼みたいな? 植物みたいな?? 変な生き物がいました。
夏実のヨレヨレのタワーレコードの袋からドングリを取り出してボリボリ食べています!
あ、夏実。横を見るとよだれを垂らして寝てました。よかった。
「オイっ 泥棒! 2人してオイラの寝床を盗りやがったな?」
変な生き物は怒ってます。なんか、見たことあるような?
「キミ 何? この大きな鳥は??」
「オイラは山童! そいつはバケヤマドリっ! この辺りの山の主様の一番弟子だっ。お前達は泥棒だから罰としてコイツと、このお洒落な袋はオイラがもらうっ」
山童? 確かにシバさんの木像そっくりです! そして僕のネブライザーまで持ってます!
「あ、僕のネブライザーっ、返して!」
「嫌だね~っ」
タワーレコードの袋を置いて、右手でネブライザーを持って左手てだけで逆立ちして 舌を出しててくるヤマワラ! ひどいっ。
「ダメだよっ それがないと僕は、ごほごほっ」
また咳が出てきました。
「あ~ん? そんな強い病気じゃないみたいだったけどな?」
山童は逆立ちをやめて、タワーレコードの袋を拾って自分の長い草みたいな髪の中に入れてしまうと、ぴょんっと飛んでバケヤマドリ? の頭の上まで飛び乗りました。凄いジャンプ力!
「どれ」
屈んで僕の喉や胸を見透かすみたいに見て、すぐにフンっと鼻で笑いました。
「悪いことは悪いが、アレだろ? お前、さては弱虫だな?」
「弱虫じゃないよっ。ごほ、ごほっ」
山童は酷いこと言ってきます!
「よし、わかった。お前はコレを食え。2、3日は持つだろ?」
山童は何かを僕の方に投げ渡してきました。それは苔や蓬みたいなニオイの、仏壇にお供えす落雁とか 江戸時代の小判みたいな物でした。
「ごほっ、食べ物? なんで? 薬??」
「シンザンヘイだ 死人も半日くらい生き返る。それくらいの病気なら鎮まる」
「ええ? ホントかなぁ、ごほっ」
呼吸を整えて咳を抑えながら、シンザンヘイ? を見ました。茶色っぽい緑です。美容にいい、母さんが使う石鹸にも見えてきました。
「ん~? 何ぃ?? ・・えーっ?! 何ここ? って、鳥デカぁっ?! あっ、山童! 山童?? 本物??」
夏実が起きました。
「これシンザンヘイだって、ごほ、全部はちょっと・・だから夏実、半分食べる?」
「いいの? 何これ?」
僕はシンザンヘイを半分こして夏実に渡しました
「ふぅ、せ~ので食べよう」
「いいけど 何これ?」
「せ~の!」
僕達は半分のシンザンヘイを一口で食べてしまいました。
「?!」
「?!」
すごい味っ。
「出すなよぉ? 1個作るのに20年くらいかかるんだからな」
山童が言うので僕達は冷や汗をかいて噛んで飲み込みました。
じゅわ~~っと体の奥がなってきて、僕達は震え上がりましたっ。
「うっへっへっ 効くだろ?」
「う~っっっ」
「農協に売ってない味!」
でも、震えがなくなると咳がすっかり収まってました!
「え? え??」
僕がよくわからなくなっていると、
「ふぁーっ?!」
夏実が立ち上がって石の上で駆け足を始めて、そのまま平たい大岩の壁を駆け降りてっ、ものすごい速さで辺りを走り回りだしました!
「止まらないんだけど~~っっ??」
「病気でもないヤツが食べるからだ。しばらくしたら収まるだろうよ、うっへっへっ」
ちっとも鳴かないバケヤマドリは、夏実を踏まないように少し困ってるようでしたけど、山童はその頭の上で大笑いしてます。
これは夢? 本当に不思議な所に来てしまったの?? 周りを夏実が走り回る船のような大きな平たい岩の上で、僕は途方に暮れてしまいました。