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キングドラゴン倒してみた①

 あちぃあちぃと文句を言いながらも、バスカはどうにか第6階層の終わりまでたどり着く。

 ここを降りるとキングドラゴンがいる第7階層だ。


「またせましたわね! ここからが配信の本番、キングドラゴン倒してみたですわ!」


 ズカズカと坂を降りて、まっすぐと進んでいく。

 少し歩くと開けた空間に出た。


「一段とクソあちぃですわ! さっさと倒してシャワーを浴びてぇですわ!!!」


 そこはとても広い鍾乳洞のような空間となっていた。

 天井はかなり高く、そこには溶岩が固まったのであろう尖った黒い岩がいくつも吊り下がっている。

 さらに、壁からはところどころ溶岩が流れており危険だ。


「見るからにあいつがキングドラゴンですわね」


 そして、この空間の中央にヤツはいた。


 寝ているようだが、目測でもその巨大さが伝わってくる。

 立ち上がれば10メートルは行くのではなかろうか。

 金に輝く鱗で全身が覆われており、頭には2本の赤い大きなツノが生えている。

 少なくとも地球上に存在してはいけない怪物……ドラゴンであった。


「寝ているようですから、少し近づいてみますわ」


 全く警戒しない様子で近づいていくバスカ。

 一定の距離まで近づいたところで、ドラゴンが目を開けた。


「気づかれたようですわね」


 バスカをギロリとにらみつけるとその巨体を起こす。

 目測の通り、凄まじい巨体だ。

 バスカの身長の5倍以上はあるだろう。

 大きさだけで、おおよそ人間には勝ち得ない生き物であった。


「グルルルァァァァァ!!!!」


 ドラゴンが威嚇と言わんばかりに吠える。

 たったこれだけでも、普通の人ならば恐怖で失禁してもおかしくはないだろう。


「うっせぇですわね!」


 バスカは迷惑そうに耳を塞いだ。


「こっちはクソ暑くて迷惑してるんですわ! さっさと終わらせますわよ!」


 バスカの姿が消える。

 撮影ドローンが映した先はドラゴンの喉元!


「超パワーアッパーですわ~~~~!!!」


 ドラゴンの喉に向かって思いっきりアッパーカットを叩き込む。

 バスカは反動を利用して後方へと着地した。


 ドラゴンは少しよろけて後退(あとずさ)りをしたが、そのままバスカに怒りの視線を向けた。


「かってぇですわね~! さすがは最強とも名高いドラゴンと言ったところですわ。まあ、ワタクシよりは弱いですけれども」

「ガルガグァァァァァァ!!!」


 怒り狂ったドラゴンはバスカに向けて灼熱のブレスを吐き出した!

 岩すら溶かす超高温のブレスがバスカに襲い来る!


「やっべぇですわ!」


 バックステップで回避を試みるバスカだったが、少し遅れて右手の先がブレスに触れてしまう。


「あっつ! 火傷したらどう責任とってくれるんですの!!」


 まあ、案の定無事だった。


*


[配信へのコメント]

やべえ、マジのキングドラゴンじゃん

今ブレス当たってなかった?

岩が溶けるって800度は越えてるだろ

なんで火傷すらしてないんだ?

一応探索者の身体能力は魔力で強化されるらしいけど……さすがに異常


*


「あー、もう。ほんとあっちぃですわね。暑いのに炎のブレスを吐いてくるとか嫌がらせにもほどがありますわ!」

「グルゥゥゥゥ」


 ドラゴンはバスカへの警戒を強めていた。

 炎のブレスに当たった者で無事だったものはいない。

 にも関わらず、目の前のやつはピンピンしている。


「グガァァァァァァァ!!!!」


 立て続けに、ドラゴンはブレスを吐き出してくる。


 しかし、今度は極寒の氷のブレスだ。

 空気中の水分が凍りつき、キラキラとダイヤモンドダストが発生する。

 まともに受ければすべてが凍りついてしまうだろう。


「あ~~~~~~!!!!!!」


 それをバスカはもろに受ける。


「涼しいですわ~~~~~~!!! エアコン代わりにドラゴンを使うのも悪くないかもしれませんわね~~!!!」


 思いっきり涼んでいた。


「なんか呼吸がし辛いですわね……まぁ、涼しいから気にしないでおきますわ」


*

[配信へのコメント]

?????????

キングドラゴンのブレスって人が凍るレベルじゃなかったっけ?

寒さや氷系の耐性が最強ってこと?

やっぱ普通にフェイクだろ


*


 しばらくはブレスを吐き続けていたドラゴンも、バスカが無事な様子を見て吐くのをやめる。


「もう終わりですの? まあ、少しは涼めたしやってやりますわ~~~!!」


 バスカの姿がかき消えた。


「ハッ!」


 鈍い音が響いた。

 ドラゴンがよろけて踏みとどまる。


 ドラゴンは何が起こったのかと周囲を見渡すと、近くの壁になにやら見慣れないものが刺さっていることに気づいた。

 赤く細長い形状をしたそれは……


「横から叩けば立派なツノも大したことありませんわね」


 ドラゴン自身のツノであった。


「グルルルァァァァァァ!!!!」


 そばに立つバスカに向かって左手を思って切り振り下ろす。

 巨体から放たれるその攻撃は、ただの一振りでも致命の一撃。

 しかし……


「よっ!」


 またも衝撃を受けてドラゴンはよろめく。

 体勢を立て直してみれば、壁に刺さったツノは2本に増えていた。


「ハゲになりましたわ! ハゲドラゴンですわ! ダセェですわ~~!!!」

「ググガルゥゥァァァァァァァ!!!!」


 怒りのままに炎のブレスを吐く。

 すでにバスカの姿は消えていた。


「お(くち)チャックですわ~~~!!!」


 繰り出したのは初撃と同じアッパーカット。

 しかし、最初と違ってドラゴンはブレスを吐いている。


 突然閉じられた口にブレスは行き場をなくして逆流した!


「グッ! ブッ! グルガ! グガァァァァァァァァ!!!!」


 いくらドラゴンでも、口を閉じたままブレスを吐くことは想定されていない。

 毒を持つ生物でも自らの毒は無効化できないのと同じように、逆流したブレスは口の中を焼き尽くしていく。

 口から煙を吐いてよろめくドラゴン。


「さて……困りましたわね。かってぇ鱗のせいでどうやってとどめを刺せばいいのやら……」


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