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重なった不運

「3日!?」


驚いた事に、熱を出して風邪だと言われてベッドの住人になってから、私は3日眠り続けたらしい。その間にも、少し意識がある時にポーションを飲ませてくれていたそうだけど、一向に治る気配がしなかった為、パルヴァン辺境地に保管してある、私の作ったポーションを飲ませよう!となったそうだ。そうして、直ぐにルナさんが(王都パルヴァン邸から、魔法陣を使って)辺境地へ向かい、リディさんはカルザイン邸から呼ばれて、現状の報告に行ったと言う。


そこで、私に何かあってはいけないと言う事で、私の部屋全体に(何かあればすぐ分かるように)結界の様な魔術を展開させていたらしい─のだけど…


「あー…私、やらかしてますね。私…魔法陣を展開させて、ネージュの所まで転移しました。」


「だろうな。普通に扉から出入りしていれば、結界が反応して、邸の者達が直ぐに気付いた筈だから。」


そう。私の為に結界まで張ってくれていたのに、私が魔法を使って転移した為に、その結界が反応しなかったのだ。


「自業自得…ですね…。」


「いや…コトネは何も悪くないだろう。運が悪かったと言うか…ルナ殿とリディ殿が不在の上、カルザイン側がコトネが魔法使いだと言う事を知らなかったから…」


そう。実は、バートさんを始め、カルザイン家側の使用人の人達は、私が魔法使いだと言う事を知らないのだ。




「カルザイン侯爵家を信用してない訳ではないが、その使用人達一人一人の人となりを見ながら、信用できうるかどうかを見極めてから、契約を交わしたい。」


と、ゼンさんは勿論の事、グレン様もこの意見に同調したからだ。





「不運が重なったとしか…言いようがないですね。でも…どうしてネージュが魔獣で、しかも妊娠してる─なんて分かったのかなぁ?ネージュ、見た目は犬ですよね?それとも、分かる人には分かるものなんですか?」


ネージュは、殆どを犬サイズで過ごしている。元の大きさに戻るとしても…小屋の中だけだ。


「詳しくはまだ分からないが…業者として出入りしていた男─あの場に居た細身の男が、使用人から聞いたそうだ。蒼の邸(ここ)に居る魔獣が妊娠した─と。」


「そんな……」


貴族の使用人には、色んな義務やルールなどが沢山ある。“守秘義務”も、そのうちの一つだ。どんな些細な事でも、そこから何が起こるか分からない。何て事のない情報でも、悪用される事もある為、高位の貴族になればなる程、使用人達の義務やルールが多くなる。


「この邸に居る者達が、ネージュ殿やノアの事を外部に漏らしたとは…考えられないんだけどね。それでも、今は一人一人に話を訊いているところだ。」


「……」


還れなくなってから、私とずっと一緒に居たパルヴァンの人達が漏らした─と言う事はないと思うし、カルザイン側だって、ルイス様が選んだ人達だ。そんな使用人は居ないと思うけど…。


「コトネ」


うーんうーん…と色々考えていると、ふいに名前を呼ばれた。


「はい?」


エディオルさんの方に振り向けば、塗り薬を塗ってガーゼをあてている頬にソッと触れられる。


「まだ…痛むか?」


「見た目は赤く腫れてますけど、それ程痛みは無いんですよ?」


と笑うと


「俺が…もう少し早く来れていたら…」


不運な事は重なるもので、エディオルさんは王太子の護衛として、昨日から地方へ視察に行っていたそうだ。私に何かあってもすぐ帰って来れるように─と、足の速いノアと一緒に。ノアも、ネージュの事が心配だったようだけど──


『我は、自分の仕事に誇りを持たぬ者は嫌いだ。それに、主に何かあった時、すぐに帰って来てもらうには、ノアの足が一番故な。』


と言われれば、行くしかなかったそうだ。


「─って!ネージュ!!ネージュは!?ネージュは大丈夫なんですか!?」


ー何で今の今迄気付かなかったの!?ー


「コトネ、落ち着こうか。ネージュ殿なら大丈夫。勿論、お腹の子も問題無い。リュウが、しっかりネージュ殿を診てくれてるから。」


「リュウが?」


「あぁ。あれから、リュウがすぐに来てくれてな。乱れた魔力を整えてくれたから、それからすぐに元気になって……」



『クズ魔法使いに助けられるとは…』


「なんて、悪態を吐いていたらしい。それでも、今も付き添ってくれているから。」


ーネージュ…ブレないな…ー


「それと…コトネにまた、辛い思いをさせた、()()()()()の事なんだが…アレは、形は色々あるが、本来魔力を持つ罪人に科せられる為に作られた物なんだ。前の事件の時に、裏で出回っていた物を探し、見付ければ回収していたんだが…仕切れていなかったんだろう。本当に…すまない。」


「謝らないで下さい。ディのせいじゃないですから。それに、私、今回もディに助けてもらえましたから。ありがとうございます。」


ニコリと笑ってお礼を言うと、エディオルさんは少し困った顔をしたけど


「コトネ…ありがとう。」


と、エディオルさんも笑ってくれた。



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