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感謝の日に

「ハル、俺は別に怒ってる訳じゃないから。ただ─ハルの誕生日を祝いたかっただけなんだ。」




私の誕生日なんて…祝わないで──




私を…置いていかないで──




私は…独りぼっちになった──




暗闇にポツンと立っている。そこから動けなくなっている。


「──独りぼっちは…嫌だなぁ…」


と呟くと、フワリと温かい何かに包まれたのと同時に、あの大好きな香りがした。











「────ん─」


ゆっくりと目を開けると


「目が…覚めたか?」


「─────ん?」


「まだ起きるには、少し早い時間だけど…どうする?」


「ん???」


ーあれ?ー


「はぁ────寝惚けてるコトネが…可愛い過ぎて辛いな……」


エディオルさんが何かを呟いた後、私に軽くキスをする。


「──っ!?」


その瞬間、一気に目が覚めて思考回路も働き出し、昨日の出来事が一気に甦った。


「─っっ!!」


同時に、一気に顔が赤くなったのが分かった。


「ハル─コトネ、少し落ち着こうか。」


「──はい………。」









どうやら、私はまた、エディオルさんに抱っこされたまま…寝落ちしてしまったらしい。


「ひょっとして…ディの体には、眠りの魔法でも掛けられてるの??」


「それは──無いな。」


「え?私…また…声に出してましたか?」


ギョッとしてエディオルさんを見れば、少し困った様な顔したエディオルさんが居た。


「コトネが…嫌がるならしないけど…来年は、コトネの誕生日を…祝いたい。皆でとか、パーティーをしたりしなくても良いから。コトネが生まれて来てくれた事を…祝いたい。」


「………」


「嫌…か?」


「…ディ……」


「ん?」


目の前には、ただただ、優しく微笑むエディオルさんが居る。


「私の誕生日を祝ってから、お祖母ちゃんの所に行く─って…。それで、お父さんとお母さんが…事故に遇ったんです。私の誕生日なんか…祝ったばっかりに。あの日が、私の誕生日じゃなかったら、死んでなかったって…。」


グッと手に力を入れる。


「また、私の誕生日を祝って、誰かに何かあったら─って…。」


「コトネ」


エディオルさんは、私の名前を呼んで、その腕の中に閉じ込める。


「コトネのご両親は、コトネの事が好きだから─生まれて来てくれた事が嬉しいから祝ってくれていたんだと思う。コトネの事が大切で大好きだったんだろう。事故に遇った事は…残念だったけど、それは、コトネのせいじゃないし、最後に…ちゃんとコトネの誕生日を祝えて…良かったんじゃないかな。」


「……」


「コトネ?俺は…コトネが生まれて来てくれた事を嬉しく思っているし、コトネを生んで育ててくれたご両親に…感謝している。あぁ、そうだ。コトネが嫌と言うなら…誕生日お祝いではなくて─“親に感謝をする日”にするか?」


「感謝?」


「そう。自分を生んで育ててくれてありがとう─と、ご両親に伝えるんだ。」


「ディ……」


「直接、感謝の気持ちを伝えられない事は残念だけど…俺も、ハルのご両親に感謝したいな。」


「──っ…ディ──」


ギュッとエディオルさんに抱き付く。


「コトネ、()()()()()いっぱい…泣いて良いから。我慢しなくて良いから。」


エディオルさんが、私の背中を優しく撫でながら、もう片方の腕で私をギュッと抱き締めてくれる。


そうすると、私の大好きで…ドキドキするけど安心もする香りに包まれて、そのまま、()()で涙を流した。









「うぅ───毎回すみません。」


はい、今回も沢山泣いて、エディオルさんの服を濡らしてしまいました。


「ディの体には、安眠と安心の魔法が掛けられてるんだ。」


「──コトネ?」


「ふぁいっ!?」


何故か、背中がゾクリとする、いつもより少しトーンの低い声で名前を呼ばれて、片手を私の頬にあて、エディオルさんと顔を向き合うようにして固定された。


「昨日、ここで、俺に何をされたか…覚えてないのか?」


「─っ!?なっ…何をって……っ!?」


ーわ…忘れられる訳ないよね!?ー


と声には出せず、口だけをパクパクさせる。


「それで…安心してて良いのか?」


「う…うぇ!?」


エディオルさんが、私の唇を指でゆっくりと触れてくる。


「俺は……いつだって………」


エディオルさんの顔が、少しずつ近付いて来て──




『『主!』』



「ひゃいっっっ!!!!」

「──っ!?」


ネージュとノアに、同時に呼び掛けられた。












「ネージュ!目が覚めたんだね!えっと…体調は…どうかな?」


ノアの小屋へと向かうと、馬の姿に戻ったノアと、犬サイズになったネージュが居た。見た感じでは、ネージュは落ち着いているようだ。


『主、我を…我()を助けてくれて…ありがとう。』


嬉しそうに笑いながら、ネージュが、しゃがんでいる私の顔にスリスリと顔を擦り付けて来た。


「はぅ─っ。ネージュが可愛いっ。お母さんネージュが可愛いっ!!──はっ!モフモフは…我慢するね!」


と、モフモフは止めて、ネージュの頭をワシャワシャと撫で回した。








「ノア…今回()助かったよ…」


『?』


片手で顔を覆って、反省気味の主─エディオルにお礼?を言われ、意味が分からないノアは、主の顔を不思議そうに見つめながら首を傾げた。





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