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誕生日と思い出と


「お誕生日、おめでとうございます。」


「皆、今年もありがとう。」



今日はエディオルさんの誕生日。婚約して、同棲をしてから初めての誕生日です。お料理は、エディオルさんが好きな物がズラリと並んでいる。


ーこれ、全部食べ切れるの?ー


「大丈夫ですよ。エディオル様でしたら、これ位は平気で食べれます。」


と、バートさんに言われた。どうやら、バートさんにも私の考えている事が…バレバレのようです。







「エディオル様、今年のお祝いのケーキは、ハル様がお作りになりました。」


はい!私、頑張って作りました!エディオルさんが、好きだと言っていた紅茶のシフォンケーキを作りました。それに、トッピングに甘さ控えめのクリームとフルーツを添えただけだけど…。


「ディが甘い物は苦手だと言っていたから、紅茶のシフォンケーキにしたんです。でも、誕生日のケーキとしては…ちょっと、シンプル過ぎましたね?」


ーもう少し派手?なトッピングでもすれば良かったかな?ー


と、ムウッと考えていると


「シンプルでも派手でも、どんなケーキでも、ハルが俺の為に作ってくれた─と言う事が大切だし、嬉しいから。」


フワリと優しく笑うエディオルさん。


「そう言ってもらえると…嬉しいです。」


私も素直に気持ちを伝えた。






「そう言えば…ディは、今日で30歳でしたか?」


「あぁ、そうだよ。ハルは…22歳だったか?止まっていた3年を合わせると25歳だろうけど。」


「あ─いえ。その…自分でも忘れてたんですけど、止まっていた時間を省いて…23歳になりましま。」


「「「「「えっ!?」」」」」


「え?」


何故か、エディオルさんだけではなく、部屋に控えていたルナさんとリディさんや、バートさんとヘレナさんまでもが驚き反応した。


「え?ハル?()()()()()って…いつ?」


「え?あ──っと…引っ越して来た日…ですね。」


「「「「「え!?」」」」」


「あのですね?還れなくなってからは、本当に色々あったので、自分の誕生日なんて、全く気にしていなかったんですよね。でも、私の世界とこの世界は、暦は同じ?感じなので、同じように当て嵌めると、引っ越しをして来た日だったなぁ─と、1ヶ月前…ディの誕生日の話を聞いた時に気付いたんです。」


「ハル…ちょっと…今から俺の部屋で、お茶でも飲みながら、()()()()話そうか。」


「え!?」


何故か、エディオルさんは綺麗な微笑みを湛え、バートさん達は流れるような早さで食卓を片付けて、ルナさん達はエディオルさんの部屋の準備に取り掛かった。










「何故、自分の誕生日に気付いた時に言わなかったんだ?」


「えっと…もう過ぎてたから─ですね。すみません?」


あれから速攻でエディオルさんの部屋へと連れて来られて、今は…エディオルさんにお姫様抱っこ宜しく!な感じでソファーに座らされている。逃げたいけど、ガッシリ捕まれていて、逃げられません。


「ハル、俺は別に怒ってる訳じゃないから。ただ─ハルの誕生日を祝いたかっただけなんだ。」


エディオルさんは、少し困ったように笑う。そんな顔を見ると、胸がキュンとなる。


「あの…私…。両親が事故で亡くなってから…そう言うイベント事に気を向ける事が…なくなってしまって…。」





『琴音、誕生日おめでとう。琴音もいよいよ大学生か。早いわね。』


『琴音、イギリスから帰って来たら、旅行でも行こうな。』


優しく笑っていたお父さんとお母さん。


『琴音』


優しく名前を呼ぶお父さんとお母さん。





「私の誕生日を祝ってくれた次の日に…事故に遇って…それで…」


ギュッとエディオルさんの服を握る。


「ハル──」


名前を呼ばれて、優しい力と優しい香りに包まれた。


「泣いて…良いから。我慢なんて、しなくて良いんだ。」


「────っ……ね……なんです……」


「ん?」


エディオルさんの腕の中で、エディオルさんの服を握り締めたまま、ソロソロと顔を上げる。


「私……“琴音(ことね)”なんです。」


ヒュッ─と、エディオルさんが息を呑む音が聞こえた。


「私、春ノ宮(はるのみや)琴音(ことね)なんです。」


エディオルさんが、少し目を見開いた後、まるで眩しいモノを見るかの様に目を細めて私に視線を合わせる。そのまま両手で私の顔を包み込んだ。


「──コトネ?」


「はい。」


「コトネ──」


フワリと微笑んだ後、近付いて来るエディオルさんの顔に合わせて目を瞑ると、優しいキスをされた。


オデコをくっつけた状態で目が合う。


「コトネ…名前も可愛いんだな。」


「ディ…2人だけの時だけでも良いので……その名前で…呼んでくれますか?」


「勿論。寧ろ、呼ばせて欲しいと、お願いしようと思っていたところだから。コトネ、愛してる。コトネだけを愛してる。」


「ディ…ありがとうございます。」


ふにゃりと笑うと、グイッと抱き寄せられて、今度は啄む様なキスをされる。それはどんどん深くなっていき、苦しくなって口を開くと、エディオルさんが更に私の中に入って来た。


「──っ!んん─っ!?」


空気を求めて口を開けても離そうとしても、直ぐに塞がれる。時折


「コトネ──」


と、切なそうに名前を呼ばれて、その声を耳にすると胸がギュッと締め付けられる。繰り返される深いキスに、頭がクラクラして体に力が入らなくなって




そのまま、ソファーに押し倒されて────








『主!ハル様!ネージュが!!』







と、ノアの焦った声が響いた。





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