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勝てないのはどっち?


*エディオル視点*







「ハル─今日のお出掛けがデートになる事…今朝気付いたみたいよ?エディオルさんからも…言ってなかったの?」




ハル殿を玄関ホールで待っていると、ミヤ様に声を掛けられた。


「そうですね。“デート”とは、言ってませんね。意識させ過ぎても…可哀想かなと…」


「……成る程。でも、デートって気付いた時のハルも可愛かったわよ?」


ーうん。それは想像できるし…可愛かっただろうなー


「ひょっとして…ゼンさんから何か言われてる?」


「……」


ミヤ様は、本当に色々と鋭いなと思う。


「ふふっ─やっぱりね。まぁ…仕方無いけど。私は、ハルが嫌がらない限りは、エディオルさんの味方だからね?今日も、ハルをよろしくね。」


ミヤ様がその場を去ると、入れ替わるようにハル殿がやって来た。


「エディオル様、すみません。お待たせしましたか?」


今日のハル殿も、以前出掛けた時のように、普段のハル殿とは違う装いをしている。いつものように後ろで一つにキュッと髪を括っていると、しっかりした印象になるが、今のようにハーフアップにしていると、少し幼く見えて“守らなければ”と思ってしまう。


ーどっちのハル殿でも、可愛い事に変わりはないがー


髪を下ろしてよくは見えないが、ハル殿は今日も、俺の瞳の色のピアスを着けてくれているようだ。


「いや─全然待ってない。それじゃあ…行こうか?」


「はい!」


と、ハル殿は嬉しそうに笑った。













髪留めを見たいと言うハル殿を、義姉上お勧めの店に連れて行った。




「わー…可愛い。それに、本当に安いんですね。平民な私にでも優しいお値段です!」


と、ハル殿が嬉しそうに笑う。本当は、一緒に見て回りたかったが、そうすると、ハル殿が俺を気にしてゆっくり見る事ができないだろう─と思って、俺は少し離れた場所にある椅子に座って待つ事にした。


離れていても、ついつい目がハル殿を追ってしまう。


そう言えば、ハル殿はどうやってこの世界に戻って来たんだろうか。もう─会えないのかと…思っていたけど。


ーあそこに居るのは…本当にハル殿なんだよな?ー


気が緩むと、ついついハル殿に触れて確めたくなってしまう。ハル殿には、いちいち触らないで下さい!と怒られてしまうが、触れていると、ここに居るんだと分かって安心するのだ。


ー怒ったハル殿も可愛いから、それはそれで問題は無いしー


と、少し─本当に気が緩んでいた。いつもなら、気配を感じて避けられたのに─。


そろそろハル殿の所に行こうと、椅子から腰を上げた時だった


「エディお義兄様!」


そう呼びながら、俺に抱き付いて来る女─は、1人しかいない。


ーエレノア=オルソレンー


兄嫁ーレイラ=カルザインーの義理の妹だ。


レイラ義姉上は、しっかりとした貴族令嬢であるのに対し、このエレノアは何もかもがレイラ義姉上とは正反対だ。礼儀もへったくれも無い。このような場所で異性に抱き付くなど、どこで習ったのか教えて欲しい位だ。

付き添いのカミラ殿も、苦労が絶えないだろうな─と、同情すらしてしまう。案の定、カミラ殿がエレノアに注意をするが、本人は反省する気配すらない。エレノアに対し、苛立たしい気持ちはあるが、これ以上エレノアに時間を取られたくなくて、カミラ殿に一言掛けてからハル殿の所に向かった。




ハル殿に、義妹は大丈夫なのか?と訊かれたが


「良いも何も、今日の俺は、ハル殿とお出掛けに来てるんだ。彼女に付き合う義理は無い。」


何故、ハル殿との時間を潰して、あの女の相手をしなければいけないのか──しなくて良いだろう。


ーそんな必要は全く無いだろうー


と思いを込めながら微笑む。


何故か、こう言う時のハル殿は、しっかりきっちり正確に空気を読む。それを、どうして恋愛の方では発揮されないのか─本当に不思議で仕方無い。


ーそれも、ハル殿の可愛い処の一つだがー


一緒に店内を回ると言い、ハル殿の腰に手を添えると、ギョッとした顔で俺を見上げて来る。何かを言われる前に、ハル殿を見ながらニッコリと微笑む。


すると、ハル殿は、「意地悪だ」と言って、ジトリとした視線を向けて来る。その顔も、可愛いだけだからな?と思いながら、手加減せずに攻めると


「勝てる気がしない」


と言うハル殿。


ーいやいや。ある意味俺はハル殿には勝てないがー


そんな風に思っている事は秘密だ。


「それは…良かった。」


と言えば、ハル殿は少し拗ねた様にプイッと俺から視線を外した。


ー本当に“プイッ”と言う効果音が聞こえそうだったなぁー


そこでハル殿の目に留まった髪留め。それに付いている飾りの花が、彼女の世界にあった花に似ているようで、懐かしいなぁ─と言う顔をするハル殿。


一度は、ハル殿への想いに蓋をして、彼女の世界へと還した。二度目は、彼女自身の意志で俺の手からスルリとすり抜けてしまった。


ー三度目なんてー


彼女の背中をポンポンと叩くと、ハル殿は俺に向かって微笑んだ。


ーあぁ…やっぱり…好きだな…愛おしいなー


ハル殿は、自分の意志でこの世界に戻って来たと言った。ならば、もう元の世界へは…還さない。この世界に戻って来て良かったと─元の世界に還りたいと思わない様に、俺がハル殿を幸せに、大切にしていこうと思う。その為には、先ずは俺の気持ちをハル殿にしっかり伝えようと思い、父と母に頼み、青の庭園にハル殿を連れて来たのに──。



「……ここは、許可制で…今日は貸し切りだった筈だろう?」



何となく…騒ぎの原因が予想できて、より一層怒りがこみ上げる。


ー仕方無い。少しでも早く()を排除しに行くかー


と思い、俺は静かに席を立った。









やっぱり、この時のハル殿は、しっかりきっちり正確に空気を読んで───気配を消していた。











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