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もう1人のポンコツ?

「アクラス侯爵の娘が、エディオル=カルザインと結婚したいと言うておるらしくてのう。それを断られた侯爵は色々調べたらしく、ハル殿を見付けたようじゃ。それで、ハル殿を何とかしようとしておるらしい。」


国王執務室に呼び出された、ルイス第一騎士団長とゼン。それを聞いた瞬間に、一気に殺気が溢れだした。


「グレン殿、ルイス、流石に母上の身体には良くない。気持ちは解るが…その殺気は収めろ。」


国王が、少し呆れた様に言うと、2人は慌てて殺気を収めた。


「「すみませんでした。」」


「ははっ。先代陛下の殺気で馴れておるわ。懐かしい位じゃ。気にするな。」


と、王太后は苦笑した。


「それでのう、そのアクラス侯爵の実母─私の再従姉妹でもあるが、アクラス侯爵家に泥を塗ったと怒り心頭で、その上の今回のコレじゃ。止を刺すことにした。その娘なり、侯爵なり、ハル殿に手を出した時点でアウトじゃ。」


「それでしたら、近々、我々第一騎士団と近衛との合同訓練がありますから…そこにハル殿に見学でもしに来てもらいましょう。おそらく、アクラスの娘も見学に来るでしょうから。」


「そうじゃな。おそらく、その娘は意気揚々と手を出して来そうだのう。」


と、王太后はニンマリと笑み、ルイスとゼンも綺麗な笑顔を浮かべた。






国王()は…ここに居ても良かったのか?」


と、国王は顔を引きつらせた。









「そんな感じで王太后様からゴーサインが出たから、サクッとやったって感じかな?でも、本当に想像通りの動きをしてくれたよね?」


父は愉快そうに笑うが─


「でも、アクラス侯爵がどう出て来るかは、まだ分かりませんよね?」


俺の周りを調べてハルに辿り着いたなら、ハルのバックにパルヴァンが居る事は分かった筈だ。それなのに、さっきの()()。おまけに、あの女はパルヴァンの持つ意味も解っていなかった。きっと、アクラス侯爵自身も……。


「確かに、ハル殿に手を出そうとした段階で馬鹿だと─丸出しだからね。先代のアクラス侯爵は、とても立派な方だったのに…。ま、兎に角、アクラス侯爵が動いたら、彼はそこで終わるだけだよ。勿論、ハル殿には掠り傷一つも付けるつもりはないからね。」


父の黒い笑顔は、本当に久し振りに見た。相当キレているのだろう。


「俺が動くと、ハルが敏感に反応するかもしれないから、俺は…知らないフリをしておきます。」


ハルは、恋愛事以外に関しては敏感で、先を読み理解して動けるからなぁ。本当に、そのスキルを恋愛に向けて欲しい。


ーまぁ、ポンコツなのも可愛いけどー


と、結局は“可愛いから、ハルなら何でも良いか”で、片付いてしまうのだ。



「あぁ。エディも今回は何もしなくて良いから。大人達に任せておきなさい。」


父に改めてそう言われ、それから少しこれからの話をしながら時間をつぶした。








いい時間を見計らい、王女殿下の部屋へとハルを迎えに行くと


「あら?少し早過ぎない?」


「えぇ、早過ぎますわ─と言いたいところですけど、ハル様が嬉しそうな顔をしてるから許してあげますわ。ふふっ。」


王女殿下がハルを見ながらニッコリ笑う。


「ふぇっ!?」


またまたハルらしい声を上げて、ハルが両手で自身の頬をおさえる。


「はいはい。ハル、エディオルさんと気を付けて帰るのよ。」


と、ミヤはニヤニヤしながらハルを見送った。









「ノア、今日はヨロシクね?」


『私の方こそ、また乗りたいと言ってもらえて、嬉しです。』


ハルが、嬉しそうにノアの鼻筋を撫でる。


「あ!ネージュ!今日はネージュも一緒にお(うち)に帰るんだからね!?消えて何処かに行かないでね!?私、泣くからね!?」


ハルが握り拳を作ってネージュ殿に訴えている。


ー“お(うち)”やら、“泣くからね”やら─いちいち可愛いな!ー


『ふっ─主、分かっている。我だって、主と一緒に居たいし…ノアも居る故な。』


「ぐふっ─ネージュが素直で可愛い!!ネージュ、やっぱり好き!!」


と、今度はネージュ殿に抱きついてモフモフしている。勿論、ネージュ殿も嬉しそうに笑い、ハルにされるがままになっている。いつもの見慣れた光景だが─


『主、コレもですよね?“可愛くて困る”のうちの…一つ…ですよね?』


ノアが目を細めながら首を傾げる。


「そう…だな。」


俺にはどうやら、()()ができたようだ。







「ノアの上から見る景色が好きなんです。」


今日のハルはワンピースだから、ノアには横向きに乗っている。こう言う時のハルは、恥ずかしいから─だろうが、あまり俺の方に顔を向ける事がない。そんなハルを見ていると…苛めたくなってしまう。


ハルの背中からお腹に回した腕にグッと力を入れて、ハルの耳元に口を寄せて


「景色だけじゃなくて、たまには俺の方も…見て欲しいな─。」


と囁けば、バッとその耳をおさえながら俺を見上げて来るその顔は、やっぱり真っ赤になっている。


「だっ──だから!それ!わざわざ耳元で囁く必要ありますか?無いよね!?」


少し半泣きで訴えて来るハルが可愛い。


本当に、ハルに対して“可愛い”しか出て来ない俺も、ひょっとしたら、ある意味ポンコツなのかもしれない──。









『主達が仲良く、幸せそうで良かったね、ネージュ。』


『ふむ。我も…幸せだ。』


と、ノアとネージュも微笑んだ。






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