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それぞれの夜


❋すみません。視点がコロコロ変わります❋






「私、ディも一緒に住むって、聞いてなかったと思うんですけど?」


一緒に夕食を食べた後、エディオルさんに連れられて、エディオルさんの部屋で2人でお茶をする事になった。


今日は、ネージュをモフモフしながら、久し振りに一緒に寝ようかな─なんて思ってたけど…気が付けばやっぱりネージュは居なくなっていた。


ーいや、分かってる。ネージュはきっと、ノアの所に行ったんだろうー


「ハルは…俺と一緒に暮らすのは…嫌?」


3人掛けのソファーに、密着するように隣に座っているエディオルさんが、少し悲しげな顔をして私の顔を覗き込んできた。


「ちっ─違います!嫌じゃないんです!ビックリしただけで!いや、本当にビックリしたんです!」


「なら良かったけど…。ハル、顔、もっとよく見せてくれるか?」


また、グイッと顔を持ち上げられる。


「うぅ──ディ、そんなに私の顔を見て楽しい?楽しくないよね?」


「“楽しい”んじゃなくて、“嬉しい”んだけど?」


「はぅ──っ」


「何だかんだでお互い忙しくて、また1ヶ月も会えなかったからな。でも…これからは、いつでも会える─と言うか、一緒に居られるな。」


エディオルさんは優しく微笑むと、私にソッとキスをした。








††その頃の王都パルヴァン邸††




「え?ハルに…言ってない!?」


ハルの引っ越しに手を出すな─と、シルヴィアからニッコリと微笑まれ、王都迄来たものの、何もできなかったゼンを


ーちょっと可哀想かな…愚痴ぐらいならー


と、少し気の毒に思ったミヤが、ゼンに声を掛けてお茶をする事にした。そうして、今回の引っ越しの話を聞いてみれば─何と、今回の引っ越しがハルだけではなく、エディオルもだと言う。しかも、その事をハルには伝えていないと言う。


「え?そんな大事な事…」


「分かってますよ。ただ…本当に言えなかったんですよ。こんな提案をしたのは…シルヴィア様なんですよ。」


ゼンが、今にでも泣きそうな顔で項垂れる。


「シルヴィア様が!?」


てっきり、外堀を埋めに来たカルザイン家側だと思っていたミヤも、これには驚いた。


「実は、未だにエディオルに()()をしてくるご令嬢や、釣書を送り付けて来る貴族も居るらしくて。その牽制を込めての引っ越しだったんですけど、それを聞いたシルヴィア様が──」





『ならば、もう一層の事一緒に住めば良いだろう?もう正式に婚約はしているし、両陛下は勿論の事、王太后様も認めている二人なのだから、何の問題も無いだろう?』




「なんて言うから…カルザイン家側は諸手を挙げて受け入れて、速攻で実行したんですよ。ルイスめ…こう言う時の動きは本当に早い…たった一ヶ月で…くっ──。それでも、ハル様が知ったら、予定が崩れるかもしれないから、当日迄の秘密に─なんて…シルヴィア様に言われたら…」


ー他にも理由はあるが、それは秘密だー


と、ゼンはグッと口を噤む。


「あぁ…シルヴィア様に言われたなら仕方ない…わね?ふふっ─ハルの慌てぶりが簡単に目に浮かぶわね。」


と、ミヤは楽しそうに笑い、ゼンは更に項垂れた。








††エディオルの邸にて††



「そろそろ()()準備をしようか──」


「はいぃぃ???寝る!?」


何故か、ハルが異常な程に反応する。驚いてハルを見ると、顔を真っ赤にしながら固まっていた。


「?どうし───」


そこ迄言い掛けて、ハタと気付く。


ーあぁ…夫婦の寝室を見たのかー


それだけで狼狽えるハルは、本当に可愛いな。


「ハル、夫婦の部屋は、結婚してから使うものだから。ハルは、ハルの部屋にあるベッドで寝たら良いから。」


と言うと、ハルはホッとしたように肩の力が抜けて、ふにゃりと笑う。


ーその顔!可愛いな!!ー


と思うも、ホッとされたのは…少し気に入らない。

気が緩んでいるハルの腰に手を回して抱き寄せる。


「そんな明白(あからさま)にホッとされると…少しショックなんだが?」


「──えっ!?」


ビクッと肩を揺らして、目を見開いて、俺の腕の中から俺を見上げて来るハル───も可愛いな─じゃなくて!


そんなハルの耳元に口を寄せて


「俺はいつだって使用しても良い─と思ってるし…。使わなければ使わないで…結婚してからのお楽しみ─って事で──覚えておいてくれ。」


そのままハルの耳にキスをする。


「───っっっっ!!??」


すると、ハルが声にならない声を出し、一瞬にして顔を赤らめる。それから、俺の腕の中で可愛い抵抗をした後、やっぱり逃げられないと諦め、ペシペシと俺の背中を叩いた後、俺の胸に顔を埋めて


「ディはやっぱり意地悪だ!」


と呟いた。






ー本当に…可愛いしかないって、どう言う事だ?ー









††翌朝††



『私が目を覚ました時には、この状態だったんです。どうしますか?』


「2人とも…嬉しそうに寝てるから、目が覚めるまでこのままにしておこう。ノア、知らせてくれてありがとう。」


エディオルはそう言ってノアの首を撫で、撫でられたノアは、嬉しそうに目を細めた。





今朝早く目を覚ましたハルが、馬小屋に居るネージュの元を訪れると、元のサイズに戻ったネージュがノアと寄り添って寝ていた─のを目にすると


「はぅ──っ」


と身悶えた後


「ノア、またお邪魔して…ごめんね?」


とコソッと謝ってから、ハルはネージュのお腹のモフモフに潜り込んだ。


「ふふっ─ネージュ…モフモフ~!!」


ネージュが起きないように、軽く頭をスリスリと擦り付ける。


「ネージュ……あったかいね……」


と呟いた後、ハルはそのまま寝てしまった。


『主…』


そんなハルを、寝たフリをして窺っていたネージュは、ハルが寝てしまったのを確認すると、ハルを囲うように丸まって─


『主、おやすみ──』


嬉しそうに目を細めて、ハルの頭に鼻をスリッと刷り寄せて、ネージュもまた目を閉じたのだった。









『主、私も最近…少しだけですが、“可愛くて困る”と言う事が、少しだけ分かった気がします。』


と、ノアがネージュを見ながら言うと


「そうか──」


と、エディオルはハルを見ながら苦笑した。





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