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リュウ②

「それで?リュウは何の用でここに?」


「あぁ!そうだ、ハルが王都に引っ越しで、ミヤ様と悠介はどうするんだ?それが気になって。」


「それなら、ミヤさんと悠兄さんは王都のパルヴァン邸で暮らす事になったの。穢れが出やすいのがパルヴァン辺境地だけど、今はまだ穢れはない。だから、ミヤさんは今王都の修道院に通ってる。でも、いざとなったらすぐにパルヴァン辺境地に─と言う前提で、王都のパルヴァン邸に居る─って事になったみたい。それなら、ミヤさんがパルヴァン邸で暮らしていても不思議じゃないだろうからって。」


慣例では、聖女は王城住まいになるけど、ミヤさんがそれを拒否して、私と一緒に─と言ってくれたから。慣例であって、義務でも無いからね。


「それで、悠介の事なんだけど…何とかこっちの世界の言葉が解るようにできないかな?と思って。ミヤ様もハルも、ずっと悠介と一緒に居るなんて事は無理だろう?言葉が解れば、あいつも1人で動けるだろうし。」


「確かに…そうだよね…言葉か…うーん…」


ーあっちの世界でなら、スマホに翻訳機能とかあったよねー


「翻訳機能か…魔石に魔術を組み込んでみる…とか?」


それをピアスにして…うーん…と唸っていると


「翻訳の魔術って…何だ?」


少し顔を引き攣らせながらリュウに訊かれた。


「えっと…前にも言ったかもしれないけど、私の魔法は想像力でできてるの。想像すると…魔法陣も魔術も組めるんだよね。本当に、チートに感謝なの。」


「そ…そうか……流石は…規格外の魔法使いだな。」


ーうん。その何とも言えない、遠い目の顔は見慣れました!もう、気にしない!ー


「兎に角、できるかどうかは分からないけど、やってみるね!」


と、意気込む私の横で


「いや、それ、絶対できるだろ……」


と、リュウが囁いた。













*****



「こと──ハル、ありがとう!!」


悠兄さんが私の手を握ろうと手を伸ばして来た瞬間


「気安くハルに触らないでくれるかしら?」


「─っ!わ…分かった!」


一緒に居たミヤさんが、ニッコリ笑顔で釘を刺すと、悠兄さんは伸ばした手をグッと握って、そのまま手を下ろした。


はい、チートな私は“やれば出来る子”でした。翻訳機能の付いたピアスを作り上げました。と言っても、小さい魔石に、それなりの大きさの魔術を無理矢理?組み込む形になったので、何度も失敗しました。初めて苦労して、失敗を繰り返した─。


ーうん。今回は、自分で自分を誉めてあげたいー


「本当に、ハルのドヤ顔は可愛いわー。」


「─だな…。」











「──と言う事で、悠介も王都のパルヴァン邸で過ごしてもらう事になったから。ただし、“働かざる者食うべからず”よ。外で働くのは無理だから、ロンさんの手伝いをしてもらうわ。何をするのかは、直接ロンさんに聞いてね。」


「分かった。勿論、何でも手伝わせてもらう。」


「それと…最初に言ったけど、私とハルは、この世界では日本の名前は隠しているの。だから、日本の名前では絶対に呼ばないで。」


「分かった。気を付ける。」




「リュウ…何だろう…先生と生徒を見てる気分になるのは…気のせいかなぁ?」


「いや、ハルの気のせいじゃないだろう。俺にもそう見えるから。」


ー悠兄さんも、余程頑張らないと…無理じゃない?ー









「それじゃあ、俺もそろそろ隣国に戻るよ。」


「呼び出した私が言うのもなんだけど、こんなにちょくちょくこっちに来て大丈夫なの?」


「大丈夫だと思うよ?俺は、政治には関知してないから。あくまでも、陛下のお守り役だから。それに、我が国の大恩人様のお呼び出しだからな。誰も文句なんて言ってないよ。」


と、リュウは肩を竦めた。


ミヤは、そんなリュウを見た後、少し離れた所で引っ越しの準備をしているハルに視線を向けた後─


「リュウ…ありがとう。」


「え?何が?」


リュウは、何故お礼を言われたのか分からず、首を傾げる。


「聞くつもりはなかったんだけど…聞いちゃったのよ。“寂しくて浮気する奴はクズだ”って言う会話。」


「あ──…アレか…ははっ…お礼なんて言われる程の事じゃないから。」


ミヤはハルから視線を外して、リュウとしっかりと向き合う。


「私にとっては…お礼を言う程の事だったのよ。私が言いたかった事だったから。()()()に、しっかり話し合ってたら良かったって…心の何処かにあったのかも…しれないな─って。強制力が働いたのかもしれないけど…私のせいでもあるかもしれないなって。だから…悠介とも、ちゃんと話し合うわ。」


“二度と靡く事は無いけど”


と、副声音が聞こえるような気がするのは…俺の気のせい…と言う事にしておこう─


「それが…良いと思う。まー…頑張れ。モテる女は辛いな?くくっ─」


「リュウ──調子に乗らないようにね?」


「──はい…すみませんでした。」




最後は、やっぱりリュウも、しっかり釘を刺されてから隣国へと帰って行った。






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