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もう一つのチャンス

『何を言っているか解らない!頼む!日本語で喋ってくれ!!』


悠兄さんに土下座の勢いでお願いされたのだけど、ミヤさんはそんな悠兄さんを一瞥した後、私の方にまた視線を戻して


「で、ハルは、どうしてコイツの事を知ってるの?」


と、この世界の言葉で話し続ける。勿論、私とリュウも、そんなミヤさんに従うまでです!


「えっと…私が男性恐怖だった事…覚えてますか?」


「勿論覚えているわよ?」


「それの原因が…私、中学生の時にストーカーされて、誘拐されそうになった事があって…」


「えっ!?ハル、大丈夫だったのか!?」


何故か、リュウが私の肩をガッシリ掴んで怒ったように聞いてくる。


「う…うん。未遂だったから。それで、その時に助けてくれたのが、近所に住んでたこの悠兄さんのお父さんだったの。」


「えっ!?コイツのお父さんって…()()眞島さん!?顔の厳つい?警察の!?」


「厳つい…そうです。その眞島さんです。警察官の。」


「あー成る程!あの眞島さんに慣れてる?なら、グレン様も平気ね。私もね、警察官として、眞島さんには色々お世話になってたのよ。」


ーおお─、まさかの眞島さん繋がり!世間って、狭いですね?ー


「はぁ─。ハルが無事で良かったけど…」


と、リュウは苦笑しながら私の頭を優しくポンポンと叩いた。


ーあれ?私の保護者…また増えた?ー












『それで?私を探して、どうするつもりだったの?』


『どうするって──さ…ミヤに謝って、もう一度やり直したいって…。』


悠兄さんはそのまま口を噤み、ミヤさんはそんな悠兄さんを暫く見つめた後、溜め息を吐いた。


『悠介、私は自分でこの世界で生きて行くと決めてここに来たの。そして、私とハルは…二度と日本に還る事はできない。でも、あなたは還れる。』


『え?俺は…還れる?ミヤは還れない?』


『そう。だから、私はあなたと復縁する気なんてないわ。まぁ、折角ここで会えたんだから、謝罪だけは受け取ってあげるわ。それで?いつ還る?今?』


ミヤさんがまたまた綺麗な笑顔で、悠兄さんを追い詰めて行く。


ーはい!私はいつでもOKです!今でも大丈夫です!ー


悠兄さんはギュッと手を握り締めた後


『少し─少しだけ俺に時間をくれないか!?』


『………』


『俺、やっぱり今でもミヤが好きなんだ。だから、少しだけ俺にチャンスをくれないか?それでも駄目なら…その時は日本に還るから…。』


ーえ?もし─もし、ミヤさんが悠兄さんを選んだら…悠兄さんもこの世界で生きて行く─って事!?ー


ギョッとして、横に居るリュウに視線を向ける。


「あ─…まぁ…何だ。もしそうなったとしても、コイツもいい大人だし、あっちの世界では都合良く回ってくれるだろう。」


苦笑しながらリュウは言うけど…


ーえっと?何で、皆、私の思ってる事が分かるんだろう??ー


むうっ─と唸っていると


「ハルはすぐに顔に出るからな。」


ー一体、私はどんな顔をしてるの!?ー


それは置いといて─また、ミヤさんに視線を戻す。



『はぁ─。チャンスって…悠介、解ってる?ここに居る間の時間は…多分日本ででも同じように過ぎて行ってる。と言う事は、悠介は“行方不明”扱いになるのよ?』


『分かってる。それでも、俺はチャンスが欲しいし、少しでもミヤの側に…居たいと思ってる。』


ーこの悠兄さんだけを見てると、二股してたなんて人には見えないのにー


『……分かったわ。悠介の事()…もう一度、ちゃんと向き合って考えるわ。』


ミヤさんは、少し疲れたような顔をして答えた。


『─!ありがとう!』


対しての悠兄さんは、満面の笑顔だ。


悠兄さんが、暫くの間この世界に居る─となると


「この事は一応、報告した方が良いですよね?」


「そうね。丁度、明日登城するから、ついでに報告するわ。」




「モテる女性は大変だね?」


「…ハルも他人(ひと)の事は言えないと思うけどな。」










取り敢えず、悠兄さんの事をロンさんとルナさんとリディさんに説明して、部屋を用意してもらった。


そして、その日の夜に、魔法陣で転移して来たゼンさんにも説明した。





「…ハル様を助けた方の…ご子息??」


何故か、ゼンさんの雰囲気がピリッとなる。


「はい、そうです。私を助けてくれたのは、彼の父親なんですけどね。まぁ…私にとっては、優しいお兄さん─でした。」


ーミヤさんにとっては微妙なんだろうけどー


「ハル様─“助けてもらった”とは?」


「ん?」


「いえ。言いたくない事なら、無理にとは言いませんが…。その…助けられたと言う事は、その時、ハル様はどんな危険な目にあっていたのか─と、気になりまして。」


「えっと…昔、誘拐されそうになった事があって…。その時に──」


「…誘拐?」


ーえ?何で?ゼンさんの威圧感が半端無いー


「あの…助けてもらった…ので、未遂でしたから!」


「…そうですか。それなら良かったのですが───」


最後の方は、声が小さ過ぎて聞こえなかった。













「──違う世界に居るのが残念だな。この世界に居たなら…なぁ……」


と、ゼンは目を細めたのだった。










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