庭園
「ハル殿は、何にする?」
最初に行ったお店で髪留めを買った後、以前にも行ったエディオル様行きつけのお店に行き、その後は、ブラブラと街を歩きながら色々なお店を見て回った。
そして、お昼頃になり、エディオル様が予約してくれていたお店にやって来ました。入店して案内されたのは…やっぱり個室でした。以前と同じで、店内に居た人達からの視線をひしひしと感じたけど、皆微笑ましいと言う感じだったから、個室でも問題ない─んだよね?と、思う事にしました。
「うーん…どうしようかな?あ、ここもお勧めはありますか?」
「ここは、チキンのソテーがお勧めだ。ビーフシチューも美味しかったけど。」
「チキン…ビーフ……じゃあ、今日はチキンにしてみます。」
「デザートはどうする?」
「デザート…今日も頼んでも良いんですか?」
「勿論。その為と言うか、ゆっくりできる為に個室の予約をしているから、時間は気にしなくて良い。それに…ハル殿は甘い物が好きだろう?この店も、ケーキが美味しいと評判だから、遠慮なく食べれば良いよ。」
「うっ…バレていたんですね?」
「目の前で…あんなに美味しそうに、嬉しそうにケーキを食べられたら、誰だって分かると思うよ?」
ーマジですか!?そんなに顔に出てましたか!?ー
「本当に、ハル殿は何でも顔に出るよね?そこが可愛いところの一つだけど。」
「………一つ?」
「そう、一つ。他も一つ一つ言っていこうか?」
「ふぁい!?」
ー何だ!?私に可愛いところがいっぱいある!みたいな言い方は!!!ー
「ん?いっぱいあるからね。」
「──っ!!わっ私の心を読まないで下さい!可愛いとこなんて言わなくていいし、ないと思います!」
「ははっ─」
ーっ!!本当に心臓に悪いです!ギブ寸前です!ー
それから食べた、お店お勧めのチキンのソテーは美味しかったです。日本に居た時からチキンが好きだったので、きっと、この時の私の顔も笑顔だったと思います。
食後に頼んだのは、パンケーキ。これが、このお店の一押しメニューらしい。パンケーキはフワフワで、生クリームがたっぷり掛かっているけど、甘さ控えめで食べやすかった。思ったより量は多かったけど─甘味は別腹─なので、ペロリと食べれました!食い意地張ってます!
「エディオル様は、甘い物は大丈夫なんですか?」
私は食後にホットケーキを食べたけど、エディオル様はコーヒーだけだった。
「どちらかと言えば、甘い物は苦手だな。シフォンケーキのような、シンプルな物なら食べられるけどね。」
ー食文化も、欧米に近くて良かったなぁー
「そうなんですね。」
シフォンケーキか…そう聞くと、紅茶のシフォンケーキが食べたくなって来た。作り方なんて覚えてないけど、料理長さんに訊けば分かるかなぁ?久し振りに作ってみるのもいいかも─。
「この後、何処か行きたい所はある?」
「いえ、特には─。」
「なら、ハル殿を連れて行きたい所があるんだが…そこへ行っても?」
「どんな所ですか?」
「それは、行ってからのお楽しみって事で─」
と、エディオル様はフワリと微笑んだ。
連れて来られたのは、先程のお店が立ち並ぶ通りからは少し外れていて、王都の中心にしては比較的自然が多く、静かな場所だった。
その一角に、一般的にも公開されている庭園があった。何でも、カルザイン侯爵家所有の庭園なんだそうです。
ー流石は侯爵様。色々と次元が違いますねー
その庭園へと入って行くと、色んな花が植えられていてとても綺麗だった。カルザイン様は更に奥へと足を進めるが、私が花に気を取られてゆっくりになったり立ち止まったりするのに、嫌な顔をせず合わせてくれている。
「あ、すみません。ついつい花が綺麗で見惚れてしまって」
「気にする事はない。我が家の庭園の花を気に入ってくれたなら、嬉しいしね。時間もゆっくりあるから、好きなだけ見て良いよ。」
「もしかして、ここが目的地ですか?」
「いや─目的地は、もう少し先になる。」
「じゃあ、先に目的地に行きましょう。この庭園は、またいつでも見に来れるので。」
「分かった。それじゃあ…こっちに来て。」
「──っ!?」
と、これまた流れるような動きで腰に手を回されて、エスコートされるハルです。叫んだり、変な声を出さなかった事を誉めて欲しいです。
エスコートされて辿り着いたのが─
「立入禁止?」
そう、ピシャッと大きな門が閉じられていて、そこに“関係者以外立入禁止”と書かれた札が掛けられていた。
「そう。ここからは、カルザイン家が許可を出した者や出した時にしか入れない場所なんだ。今日は、父と母からも許可をもらってあるんだ。」
そう言って、エディオル様が自身の指に付けていた指輪を、その門にかざすと─音を立てる事もなく、その門がゆっくりと開いていった。
ー魔法って、本当に凄いですねー