何度でも
ー彼女は日本に還ったー
私とは会えないのに、彼女と一緒に居るエディオルさん。今でも覚えている。物語のワンシーンの様な2人を。ゲーム通りにならなくて良かった。エディオルさんは…私を選んでくれた──んだよね?もう、何処かに行ったりしないんだよね?
ーディは…何処に居るんだろう?ー
エディオルさんを探していると、何かが手に触れた感覚がした。
ー何だろう?温かい?ー
そこから少し気持ちが落ち着いて来て─
「─────ん…」
あれ?何だろう…身動きが取れない??
「──っ!!??」
ーひぃぃぃぃ────っ!!!!ー
さ…叫ばなかった私を褒めてあげたい!!じゃなくて!!いや、本当に褒めたいけど!!
え!?何がどうなってるの!?え?何で??え??
目が覚めると─何故か、エディオルさんにお姫様抱っこされた状態で抱き締められていた。いやいやいや、私自身も、ガッシリとエディオルさんに抱き付いている。
ー何で!!??ー
あれ?宴会で、ミヤさん達と食べながら話をしてた─筈だよね?それでそれで─ミヤさんが飲んでたお酒を、私が間違って飲んじゃって────
ーあれ?それからの記憶が…全く無いー
ジワジワと背中に嫌な汗が流れる。
「──え?まさか…私…ディを…襲った?」
「ぷっ──」
「ひぃ──って、ディ!?起きてる!??」
「“襲った”って…くくくっ……」
至近距離で、エディオルさんと目があって、軽くキスをされた。
「な─っ!?寝起きに!?うぅ─」
「ハルが言ったんだが……俺とのキスが好きだと。」
「ふぁいっ!!??キスが……好き!?」
「あぁ。それに、俺と離れたくないから、一緒に寝るとも言っていたな。それで、ハルが全然俺を離してくれないから─この状態になってる。」
「───────」
驚き過ぎて…声が出ません!!
「───なっ…え?…え?」
「ハル、ちょっと落ち着こうか?」
ーそれ、ルイス第一騎士団長様が、よくルーチェ様に言ってる言葉ですね!ー
「──うぅ…すみません。全く覚えてません。」
素直に謝って、そのままエディオルさんの肩に顔を埋める。
「ははっ…それは…残念だ。甘えて来るハルは可愛かったけど。」
「甘える!?」
ーうぇ!?私、一体何をー
「ハル。まだ夜中なんだが…眠い?」
「いえ…今ので一気に目が…覚めました。」
そう言うと、エディオルさんは腕の力を緩めて体を離して、私と視線を合わせて
「少し話をしても良いか?」
「はい!大丈夫です!どんな話しでも聞かせていただきます!なので、ここから下りま─」
「下りなくて良いし、このままで良い。」
「……はい……。」
それから聞かされたのは─私が酔っていた間の話と、あの時の気持ちを引き摺っているのではないか?と言う事だった。
「……」
「ハル。俺は、何度だって言うけど、あの時だけじゃなくて、俺は5年前からずっとハルしか見てない。5年前からずっと、俺の心はハルにしか反応しない。ハルしか要らない。俺は…どうしたって、ハルが良いんだ。」
エディオルさんは、私に気持ちを伝えてくれている。なら、私も…ちゃんと伝えないと…
「私……あの時、ディに会いたくて…さっきみたいに、気配と姿を隠して…王城に行ったんです。そうしたら…ディが…庭園で彼女と寄り添うように座ってて……それで…」
ギュッとエディオルさんの服を握る。
「あの…もう分かってるんですよ?アレは…演技?だったって。ディが、私の事をちゃんと思ってくれてるって。多分…彼女を久し振りに見て、少し気持ちが、あの時の記憶に引き摺られた…んだと思います。」
「俺も明日か明後日には王都に帰るし…近衛にも復帰して、今みたいに一緒に居られる時間は減るけど、俺は、いつだってハルを想ってるから。ハルだけを─愛してる。」
フワリと優しく微笑んで、私に優しい─触れるだけのキスをする。
「もしまた、不安になったら言って欲しい。俺は、何度だって、その不安を無くすようにするから。」
「…ディ……ありがとう…ございます。私も…ディが…大好きです。これからは、ちゃんと…頑張って気持ちを伝えます。」
頑張って…私からも…触れるだけのキスをした。
「──え?」
キョトンと固まるエディオルさん。
ーえ?何?私からするのは…駄目だった?ー
「あの─すみません!もしかして、イヤ──っ!?」
グイッと顔を持ち上げられて、今迄とは全く違う─深いキスをされた。
「──っ!?ん──っ!?」
バシバシと遠慮無くエディオルさんの背中を叩く。
「──今のは…ハルが悪い…」
エディオルさんが、そう呟きながらようやく唇を離した。
「ぷはっ──!?苦しっ──」
うまく息ができなくて、グッタリとエディオルさんに凭れ掛かる。
「はぁ─。本当に、可愛いのも天然なのも限度があるからな?」
ーげ…限…度っ…て…何ですか??ー