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*宮下香を返還する当日の朝*



「ハル、すまないが…ネージュにお願いがあるんだけど…。」


と、リュウが申し訳なさそうにやって来た。


「えっと…」


チラリとネージュを見ると─私の横にチョコンと座っているけど、尻尾がピクリとも動いていない。


「お願いって…どんな?」


「宮下香に、攻略対象者である“レフコース”が、実は女だって事を見せるんだ。それで、この世界があんたの知ってる世界じゃない─って、現実を見せつけようかと思って。あいつに─止を刺す感じ?」


『止を刺す?』


ネージュの耳がピクリと反応する。


「そう。あいつは、全く反省していないから。あっちに還す前に、なんとかあいつの気持ちを…へし折ってやろうかと思って…。」


『ふむ。我はお前は嫌いだが、あの女をへし折って止を刺せるなら…やってやろう。』


「えっと…ネージュ。分かってると思うけど、()()、文字通りの意味じゃないからね?」


『────分かっている。』


ーネージュ!その間は何!?ー


ネージュに視線を合わせるようにしゃがみこんで、両手でネージュの顔を挟む。


「ネージュの気持ちは…分かってる。でもね、だからって、ネージュが彼女を傷付けたりする事は別の話だからね?それに、ネージュは人を傷付けて…平気でいられる子じゃないよね?」


『主…』


ネージュが頭をグリグリと、私の顔に優しく擦り付ける。


「────っ!ネージュ!可愛い!!」


はい!我慢できずに、私もネージュにグリグリしました!ワシャワシャと撫で回しもしました!やっぱりモフモフは最高です!ありがとうございます!!




「えっと?俺、存在忘れられてないか?まぁ…いいか。可愛いから──許せるな…。」



そうして、相変わらず尻尾は垂れ下がったままだったけど、ネージュはリュウと共に、邸の地下へと向かった。




ーよし。私も()()…しようかなー
















“気配を消し”、その上から“認識阻害”の魔法を自身に掛ける。


()()()以来の魔法だ。


ーうん。やっぱりチートだよねー


()()()とは違って、悪戯?をしに行くみたいに、少し楽しい気持ちで歩みを進めた。
















その部屋に入ると、丁度、リュウが魔法陣を展開させるところだった。


ーん?ー


何故か視線を感じて、そちらを見れば─


エディオルさんとゼンさんが…私の方を…何となく?な感じで見ていた。


ーあれ?気配消して認識阻害掛けてても…バレてるの!?ー


それでも、動かないし、何も言わないと言う事は─私のやりたいようにやって良い─って事だよね?


ーありがとうございますー




彼女の足下で、魔法陣が展開され、淡い光が光り出す。


初めて見た時は、恐怖でしかなかった光。


2度目は還れる喜びと、還れなかった絶望を知った光。


3度目は悲しみと共にあった光。


4度目は─喜びの光だった。


5度目の今は─ただただ綺麗だなと思う。



「─っ!?」


目の前のリュウの魔力が乱れ始めた。

魔力がゴッソリ抜けて行っている感じだ。


ー絶対に…死なせないー


離れているから、うまくいくかは分からない─いや、私ならできるよね。


リュウに集中して、私の魔力をリュウに流していく。ゆっくり、且つ、正確に。足元からリュウの身体全身に行き渡るように。


そして、暫く流し続けていると


魔法陣から一気に光が溢れ出し、最後に光が弾けて消え──


そこには、もう彼女の姿はなかった。リュウも、自分の足でしっかりと立っている。


ー良かった。ちゃんと…送り還せたー


と、私はその場から転移魔法を展開させて、自分の部屋へと戻った。











*****



「ハル、体は大丈夫?」


と、エディオルさんが苦笑しながら私の部屋にやって来た。


「やっぱり、ディは気付いてたんですね。」


「ん?ハッキリと─ではないけど、何となく違和感があって。それで、ハルかな?と思って。」


エディオルさんは、そのまま私が座っている横に腰を下ろした。


ーそ…そっか…婚約者…だからアリなのかー


「それに、ゼン殿も気付いていたな。」


「ですよね。もう、私がどんな凄い魔法使いだったとしても、ゼンさんには敵わない様な気がします。」


「お互い様─ってところだと思うが…。」


ー“お互い様”?いやいや、私がゼンさんに勝てる事って……うん。無いよねー


「えっと…リュウは…あれからも大丈夫でした?」


「あぁ。魔力も安定していたし、本人も元気だった。一応、今日はこのままパルヴァン邸(ここ)に泊まって、明日隣国に帰るそうだ。」


「そうなんですね。これで、リュウも、少しは落ち着けますね。」


「そうだな─。ハル…」


「はい?──!?」


優しく名前を呼ばれたかと思ったら、そのまま優しく抱き締められた。


「心配はしていなかったが…ハルに何も無くて良かった。」


「ふふっ。あれ位なら…全然問題無しですよ?」


笑いながら、エディオルさんを見上げる。


「流石、規格外の魔法使い様─だな?」


エディオルさんも、優しく笑ってくれる。


ーあぁ、本当に、幸せだなぁー


そう思いながら、暫くの間、エディオルさんに身を預けた。







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