天然タラシ?
「ねぇ。魔獣って言うのは、そう簡単に擬人化するものなの?」
「しませんよ。そもそも、名を交わせるようなレアな魔獣が、ここに2頭も居る事事態が異例なんです。名を交わせたところで、擬人化なんて、聞いた事ありませんから…。」
あれから、邸内に戻って来て、ミヤさん、ゼンさん、ロンさん、ルナさん、リディさんに、ノアの事を話した。そして、今、皆の目の前に、ネージュとノアが美魔女&イケオジバージョンで立っています。眼福以外のなにものでもありません!
「はぅ──っ」
思わず声が出てしまい、慌てて両手で口を押さえる。
『主、どうした?』
ムギュッ
ノアと並び立っていたネージュが、私の発した声に心配?して、また私に抱き付いてきた。
「ネージュ…私は多分大丈夫だから…。」
『人の姿になった時は、主に抱き付くものなんですか?』
「…… ノア、俺はいらないからな?ハルとネージュ殿は…特別なだけだからな?」
ノアの純粋?な質問に、エディオルさんは真剣に答えている─のが可愛く見える…のは、絶対口に出して言いません!言ったらきっと…ブーメランです!!
『我が主は小さくて可愛いだろう?ついつい抱き付いてしまうのだ。』
と、ネージュが私の頭に頬を擦り付けながら言うと
『成る程。では、私がネージュ様を抱き締めたい─と思ってしまうのは、私がネージュ様を“可愛い”と思っているから…でしょうか?』
「はぅ─────っ(ハル)」
「あら──(ミヤ)」
「「──っ!!!(ルナ、リディ)」」
ーえ?何?ノア、そうだったの!?え?ノアって、天然タラシなの!?ー
「ミ…ミヤさん!どうしよう!?胸がドキドキします!どうしたら─」
と、ネージュの腕からすり抜けて、ミヤさんに抱き付こうとしたら
「はい、ハルはこっちだろう?」
と言いながら、エディオルさんに腰を捕まれて後ろから抱き締められた。
「ひゃいっ!?」
ーえっ!?ちょっ…ちょっと待って!?皆が居るんですけど!?見られてますけど!?ー
「あらあら─」
「「──っ!!!」」
「……上等じゃないか…」
「……面白くなって来たなぁ…」
『ノアが我に─か?いいぞ?ハグ?するか?』
『喜んで。』
私と違って、ネージュは余裕で、両手を軽く広げてノアを受け入れて、ノアも嬉しそうにネージュを…ハグして…
「うぅ…ネージュにも…良い人?魔獣?ができて良かったね─。美男美女過ぎて、見ていてドキドキして辛いけど。ありがとうございます!」
「何にお礼を言っているか分からないが…ハルは可愛いな。」
ーひぃっ!一瞬忘れてました!エディオルさんに抱き締められたままだった!!ー
「あっあの!…ディ!離してくれませ──って…あぁっ!!??」
「「「「「“ディ”?」」」」」
テンパり過ぎて、思わず“ディ”と呼んでしまい、それに反応したゼンさんが、何故か地を這うような声を出した。
「……エディオル…どの…ちょっと…昼からも手合わせしようか?」
ーふぁいっ!?ゼンさん!?ちょっと圧が凄くないですか!?何があったんですか!?ー
「ゼンさん…大人気ないわよ?嫌われるわよ?」
「…本当に、父さんはハル様が絡むと…面しろ…人が変わるよな。」
「「何?今日はご褒美デイなの!?」」
と、皆がワチャワチャしている中、魔獣である美魔女&イケオジは
『?』
と、首を傾げたのでした。
「明後日なんだが、俺の家─カルザイン邸に来てもらえるか?」
皆でワチャワチャになった後、何とか昼食を取り、そのままサロンに移動した。そこに、丁度、カルザイン邸からエディオルさんへと手紙が飛ばされて来た。
「え?私が、カルザイン邸にですか?」
「あぁ。昨日の小む─エレノア達の行いについて、親であり当主であるオルソレン伯爵が、俺とハルにも直接謝罪がしたいと言っているらしいんだ。」
「別に、私は謝罪とかはいいんですけど…」
ーもう二度と関わらなければ、問題ないだろうしー
「勿論、もう二度と関わる事は無いと思うが、オルソレン伯爵は、どうしてもハルには直接会って謝罪したいそうだ。」
ーえ?何?私に?あれ?私、何かやらかした?ー
「ハル様、直接会って謝罪したいと言っているなら、会ってさしあげてはどうですか?その方が、オルソレン伯爵もスッキリするでしょうから。」
と、ゼンさんがニッコリ微笑む。
「そうだ、ゼン殿。ゼン殿も、ハルの付き添いとして一緒に来ませんか?」
と、エディオルさんもニッコリ微笑む。
ー何だろ…2人ともがゾワゾワする微笑みですー
「それは…良いですね?ご一緒させて頂きます。」
ーえっと…ちょっと分からないけど…オルソレン伯爵?様は、ちょっとヤバい?のかもしれないー
「えっと…それじゃあ、私も行きます…ね。」
「分かった。ゼン殿も、明後日は宜しく頼みます。」
そう言えば、ネージュとノアは─
と思いながら、ふとサロンの窓から中庭の方へと目を向けると
「ふわぁ──」
「どうしたの!?ハル!」
「ミヤさん、アレ、見て下さい!!」
ミヤさんが、私が指を指した方を見ると、そこには
元の大きさに戻り転がっているフェンリルのネージュのお腹に、そっと(見た目)馬のノアが寄り添ってお昼寝していた。
「癒しだわ──。」
「ですね!?」
性別で言うと
「逆だよね?ネージュ、犬サイズのままで良くない?」
と、突っ込みたい気持ちもあるけど…これはこれで癒しかな─と言う事で。
あぁ、またネージュにモフモフしてお昼寝したいです!!