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ノア②

「訓練中にすみません。」


ペコリと頭を下げて謝る。


「大丈夫ですよ。丁度今、一区切りついた所でしたから。」


「それなら…良かったです。それでなんですけど、あの…エディオルさんにお願いがあって…」


と、チラリとエディオルさんに視線を向ける。


「…エディオル─殿に“お願い”ですか?」


ーん?何となく…ゾワッとする?ー


「えっと…ノアの事でちょっと…」


「ノア?ノアに何かあったのか?」


ゼンさんの前で、ノアが魔獣だって言っても良いのか、喋れると言っても良いのか─分からないから、ついつい言葉を濁してしまうし、上手く説明ができない。


「エディオル殿、今日の訓練はこれで終わりにしますから、ハル様と一緒にノアの所に行って下さい。」


ゼンさんが少し困ったように言ってくれた。


「ゼン殿、ご指導、ありがとうございました。それでは、お言葉に甘えて、これで失礼します。ハル、行こうか?」


「はい。あの、ゼンさん、ありがとうございます。」


私からもゼンさんにお礼を言ってから、エディオルさんと一緒にノアの元に向かった。







「はぁ─。2人を送り出すとか…何となく寂しい気持ちになるなぁ─。」


2人の背中を見つめながら、ゼンは呟いた。









*****



「あぁ、ノアが魔獣なのは知っていた。魔力はあまり感じなかったが…何年経っても衰える感じが無かったし、体力も普通の馬とは全く違ったから。」


「そうなんですね。ネージュ曰く…“天馬”の魔力が極僅かに流れているそうです。」


「……天馬!?」


ーそう、天馬って、やっぱりレアだよね?ー


ネージュが、あまりにもサラッと“何て事ない”みたいに言うから、あれ?レアじゃない?と流したけど。エディオルさんの反応を見る限り、やっぱりレアだったんだ。


「天馬とは…思わなかったな…。」


それから、さっきまでの流れを話しながらノアの所まで戻って来た。






「よし。じゃあ─ノア、私とエディオルさんに向かって、何か…話してみてくれる?」


ノアの前に、エディオルさんと私と2人で立ち、ノアにお願いをする。


『ハル様、ありがとうございます。主、お疲れ様です。』


と、ノアは軽く頭を下げる。


「やっぱり、私は聞こえるんですけど…」


「残念ながら、俺には聞こえないみたいだ。」


どうやら、エディオルさんには聞こえなかったようだ。


「そうなんですね…ノア、ごめんね?」


と、よしよしとノアの首を撫でる。


『ハル様、謝らないで下さい。私の魔力が…少な過ぎるから─ですから。』


「……」


ノアの目が哀しそうに見てえ─下がっていたノアの顔に手を当ててギュッと抱き付いた─そんな私に、エディオルさんが後ろから抱き付いてきた。


「えっ!?」


「…俺よりノアなのか?それと…今は2人だけなんだけど?」


「え?」


ー“俺よりノアなの?”って、ノアは馬だよ?2人だけだから何!?ー


『我が主は、ハル様の事が好きで仕方無いようですね。ハル様、私は…雄ですから。』


「はい?雄だから?」


「…今喋ったのが…ノアなのか?」


「えっ!?」


何故か、エディオルさんにも、今のノアの声は聞こえたようだ。


『ふむ。騎士よ。一度主から離れてくれぬか?それで、ノア、もう一度話してみてくれぬか?』


ネージュにそう言われて、エディオルさんが私から離れて


『主は、ハル様の事が好きなんですね。』


ーノア!そんな恥ずかしい事を何度も言わないで下さい!!ー


叫びたくなるのをグッと我慢して、エディオルさんを見る。


「うん。今?のは聞こえなかった。」


『成る程。主は…()()()聞こえて、騎士は主に触れていると聞こえる─と言う事だな。』


ーやっぱり、()()()()だったんですねー


『ならば、2人が望むのであれば、名を交わせるぞ?名を交わしさえすれば、主を介せずとも会話もできるようになる。』


『勿論、私はそれを望みますが…』


と、ノアは心配そうに主であるエディオルさんを窺い見る。


「勿論、俺も、それが可能なら喜んで。」


エディオルさんが笑顔でそう言うと、ノアも嬉しそうに目を細めた。


「では、私、ハルがキッチリお手伝いさせて頂きます!」


ーエディオルさんと手を繋ぐだけだけどね!ー


と、エディオルさんに手を差し出すと、その手を握って─グイッと引き寄せられて背中からお腹に手を回された。


「何で!?」


触れてれば良いんだよね!?手を繋ぐだけでも良いよね!?後ろから抱き付かなくても良いよね!?


必死にもがいてみるけど─敵うわけが無い訳で…。


「そんな抵抗されても、可愛いだけだからな?」


と、耳元で囁かれて…諦めました。


「遠慮も手加減も無いですよね?」


「しているから、これで済んでる─と言わなかったか?」


ーだから、済んでない場合、私はどうなってるんですか!?ー


何て、怖くて訊けません!もう、黙ってます。黙っているので、早く名を交わして下さい!


『こんな主を見る事ができるなんて…ハル様、ありがとうございます。』


『主が嬉しいと、我も嬉しい。』


2人?2頭?の事スッカリ忘れてたよ!恥ずかしい!!



そうして、わちゃわちゃしながらも、エディオルさんとノアは無事名を交わす事が出来て─







肩に届くか届かないか位の長さの黒い髪。

くっきり二重の青みがかった黒い瞳。




『ふむ。主の魔力を少し感じる故…その()()だな─』


『成る程。ハル様を介して名を交わしたので、ハル様の魔力を取り込んでしまったんですね。ハル様の魔力は大きいのに、とても優しいんですね?』


『そうであろう?我は、この主の魔力が大好きなんだ。』


「「………」」


はい。私の意思とは関係無く、またやらかした様です。私を介して名を交わした為に、ノアが無意識に私の魔力を取り込んでしまったようで…


ノアも擬人化した─


はい。ノアは…見た目はイケメン…おそらく、年齢的に言うと“イケオジ”だろう。


はい。今、私とエディオルさんの目の前に、美魔女とイケオジが立っています。


「エディオルさん。私、胸がドキドキしてます。」


「分からなくも…ないな─。」


ーですよね!?これは、ミヤさんに報告案件です!ー


と、ルンルン気分で居ると、エディオルさんが私の耳元に顔を寄せて


「その前に─ハル?今、2人きりだよな?」


「はい!?」


()()()─」


「っ!!!」


逃げても良いですか?駄目…ですよね…。物凄い笑顔だ。


「────ディさ……ディ……ノアとの事…おめでとうございます…」


「よくできました。」


「ふぐうっ─」


エディオルさんは、嬉しそう笑うと、またまた私をギュウッと抱き締めた。







『お互い、主が幸せそうで何よりですね?』


『そうだな。ノア、これからもよろしく頼むぞ?』


『こちらこそ、宜しくお願いします。』








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