3NとおまけのR
☆3N☆
『あーじ、きれーだったの!』
きゃっきゃっと、嬉しそうにはしゃぐネロ。
『そうだな。今日の主は、今迄で一番綺麗だったな。』
ネージュも嬉しそうに笑いながら、はしゃぐネロの顔に自身の鼻先を擦り付ける。
『それにしても…あのクレイル様には驚きましたね。』
と、ノアが苦笑する。
『あぁ、あの魔導士か…。アレは、ネロに似た姿の主の時から、主の事を気に掛けたりしてくれていたな。我を捕獲したのもあの魔導士だが、アレは良い奴ではあるな。きっと、ネロの姿と昔の主が重なったのだろう。』
『クレイル様も…ハル様が好きだった─と?』
『いや、アレは恋愛感情ではないな。勿論、ネロに対してもな。妹や、姪を可愛がる─愛でる?ようなモノだろう。』
『あぁ…なるほどね。そんな感じ…ですね。』
ネージュとノアが、クスクスと笑い合う。
『ねろ、あーじもきしもまどーしも、すきなのー』
『そうか…』
ネロの尻尾はフリフリと揺れていた。
それからと言うもの、週に3日はクレイルがネロ達に果物を持って遊びに来るようになった。
『魔導士は…暇なのか?』
今日もクレイルがやって来て、ネロは喜んではしゃぎ回り、今はクレイルの足の上で昼寝をしている。
「暇ではないよ。しっかりやるべき事をやってから来てるからね。誰にも文句は言わせないよ。」
そう言いながら、クレイルは寝ているネロをもふもふと撫でている。
『主と一緒で、ネロに癒しを求めているのか?』
「それ!本当に、ネロは癒しだよね!ハル殿が、ネージュ殿をもふもふしている理由がよく分かるよ!」
『……魔導士にも…早く番が見付かれば良いな…』
と、ネージュは生温かい目をしながら呟いた。
☆R☆
「人間とフェンリル?それは、有り得ないね。」
「そうなの!?」
久し振りにハルの元に遊びに来ると、ハルはネージュとネロに挟まれていた。
そして、開口一番──
「乙女ゲーム?みたいに、擬人化した魔獣─ネロと、クレイル様が恋人になるって事はあるの?」
と、ハルに訊かれて、それは有り得ないと即答した。
「それは、あくまでゲームの世界だからな。ご都合主義ってやつ?実際は、擬人化したところで魔獣だからね。喩えその人間が強い魔力持ちだったとしても、自身より弱い立場の人間に惚れる事は絶対に無い。だよな?」
と、俺は言い切った後、ネージュに視線を向けた。
そのネージュは、俺の視線を受けた後、嫌そうに眉間に皺を寄せて一呼吸置いてから
『───魔法使いの言う通りだ。魔獣と人間が番う事は無い。』
「そうなんだね。それじゃあ、ネロがクレイル様に懐いているのは──」
「ただ単に、ハルとエディオルと仲が良くて、母親のネージュがクレイルに対して良い印象を持っていると言うのと…」
『美味しい物をくれて、遊んでくれる故─だろうな。』
「………やっぱり魔獣であって、本能に従ってるだけなんだね…。」
と、ハルは少し残念そう?な顔をして笑った。
*****
「あぁ、そうか!!」
その日の夜、王城内にある自室で寝る前に寛いでいる時にふと思い出した。
俺は、ゲームのヒロインの設定を
“日本で不幸だった分、聖女としてのレベルが上がるようにしていた”
その設定が、巻き込まれただけのハルに作用したのかもしれない。しかも、ハルはこの世界に来てから、更に不幸に見舞われた。
「───それらが作用したなら…あのチートも頷けるな…。」
チラリと、部屋の机の上に置いてある魔石に視線を向ける。その魔石は、以前ハルに溜めてもらった魔力が少しだけ残っている。
本当に、もともとハルの魔力には興味があった。強い魔力なのに、歪さが無く優しい温かさを持っている。何とも不思議な魔力だ。それに──
「やたらと、この世界に馴染んでいるんだよな…」
ハルは、異世界から来た筈なのに、この世界での魔力ととても馴染んでいる。
「これも、チート故か?」
と、自然と笑みが零れた。
❋これにて、続編も完結とさせていただきます。拙い文章でありましたが、最後迄読んで下さった方々、本当にありがとうございました。続けて、続々編“氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす”を投稿します。そちらも読んでいただければ、幸いです。❋
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