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モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語  作者: みん
第三章ーリスと氷の騎士ー

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ランバルトとミヤ

白色のウェディングドレスを纏ったハル殿は、本当に綺麗だった。その横には、嬉しそうに幸せそうな顔をしたエディオルが居る。


ー本当に…本当に良かった!!!!ー


アレは本当に“氷の騎士”と呼ばれている男なのだろうか?

いや。アイツは今でも“氷”のままだ。

今のように優しく微笑むのはハル殿が居る時だけなのだ。あの笑顔は、ハル殿限定なのだ。


ー私には、その1ミリ位の優しささえ向けてはくれないがー


いや、これは自業自得だから仕方が無いだろう。“王太子だから”と、簡単に赦してくれて甘やかすような者であれば、そもそも私はエディオルを側近には選ばなかっただろうし。


兎に角、本当に本当に結婚できて良かった!ハル殿が元の世界に還ったと聞かされた時は、色んな意味で「終わった」と思った。


今日の結婚式も、本当に素晴らしいものだった。

バージンロードと言う路を、父親になったゼン殿と歩いている姿を見た時は、何故だが切なくなって泣いてしまった。


「ふふっ。何故ランバルト様が…」


と、横に居たミヤ様にソッとハンカチを手渡された。そんなミヤ様の目も、少し潤んでいたが、敢えて気付かないフリをした。その、潤んだ目がとても綺麗で、見続けていると抱き締めたくなってしまうから。


本心…かもしれないが、私の参列を嫌がる様に振る舞うエディオルをよそに、この結婚式でミヤ様をエスコートする約束を取り付けた。断られる事も覚悟をしていたが─


「はい。宜しくお願いしますね。」


と、ミヤ様は私に笑顔を向けて了承してくれた。

週に2回の修道院でのお茶の時間。私の事を名前呼びしてくれるようになってからは、特にミヤ様がよく笑顔を向けてくれるようになった。それに、ついつい国について熱く語ってしまっても、嫌がるような顔をせず、寧ろミヤ様の世界の事と比較したりして一緒に考えてくれる。決して甘い空気にはならないが、それはそれで心地の良い時間となっている。





「ミヤ様も、結婚する──としたら、やはり父親とバージンロードを歩きたいのか?」


「え?」


思わず、口からポロッと出てしまった。


「あぁ!すまない!変な意味では無いんだ。その、こちらではしない事だから…その…」


そんな事を訊いてどうする!?ミヤ様だって、父親と歩きたくても不可能なのに─と、焦っている私をキョトンとした顔で見つめた後


「別に…父親とではなくても、愛する人と歩ければ…問題無いと思いますよ?」


と、私を見つめたままに微笑むミヤ様。

その微笑みに、一気に胸が高鳴った。きっと、顔だって真っ赤になっているに違いない。


「ミヤ様……それは…その相手に…私がなれる可能性は…あるのだろうか?」


ー駄目だろう!ー


言ってから、自分に盛大に突っ込みを入れる。

何だ!?そのヘタレな質問は!!違うだろう!?自分で自分の言った言葉に泣きそうになる。言ってすぐ後悔をしている間も、ミヤ様は何も言わない。その沈黙が怖くて、私はミヤ様の顔を見る事ができず、ずっと足元に視線を落としている。


「──ふふっ…」


「ん?」


何故か、ミヤ様が笑ったから、気になり顔を上げると


「相変わらず…ヘタレ…なのね…ふふっ」


そこには、呆れる訳でも馬鹿にする訳でもなく、フワリと優しく笑っているミヤ様が居た。その笑顔から視線を外す事ができず、そのまま見つめていると


「私は…国の未来を真剣に考えているランバルト様を尊敬しています。恋愛感情があるのか?と訊かれると、まだよくは分からないけど…。ただ、ランバルト様となら、信頼し合えると思っています。そして、その信頼関係から…()()()も築いていけるかもしれないな─なんて、思ったりしてますよ?」


「────え?」


私は、ピシリッと固まり、目の前で更に微笑みを深めるミヤ様を見つめる。


「ですから、今のは聞き流しておきますから、()は、もっとしっかりと…私に()()()()でお願いしますね?」


ふふっ─と笑って、ミヤ様はそのままハル殿の元へと足を向けた。


「──え??」




そこから私の頭が機能する迄時間が掛かり、ようやく理解したのは…エディオル達と挨拶をした後だった。











*****



「何?また、ランバルトが気持ち悪いんだけど?」


ここは、ランバルトの執務室。クレイルが執務室にやって来て、入室してすぐに視界に入ったランバルトの顔を見て、その部屋に居たイリスに吐いたのがその言葉だった。(因みに、エディオルは1ヶ月の休暇中の出来事である)




「エディオルの結婚式後から、ずっとあの調子なんだよ。」


ニヤニヤしたかと思えば、薄っすらと顔を赤らめたり、そうかと思えば眉間に皺を寄せて何かを考えている─と、一人百面相を繰り返しているランバルト。


「まぁ…仕方無いかもね。何でも…ミヤ様に()()()()()()()みたいだよ?」


「えっ!?そうなの!?」


「うん。後は、プロポーズ次第らしいよ。」


「プロポーズ…次第??」


不思議そうな顔をするクレイルに、イリスがミヤ様とのやり取りを説明する。


「なるほど。ランバルトは…本当に恋愛面では…ヘッポコだね。でもまぁ…これで、ようやくイリスと王女殿下の婚姻も進められるね。良かったな。」


「そうだね。ありがとう、クレイル。」










エディオルとハルの結婚式から3ヶ月。




王太子と聖女の婚約が、国中に告知されたのでした。







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