初夜
コンコン
「入るぞ?」
その声と共に、ディがこの部屋に入って来た。
ーうわぁ─私、どうしたら良い!?ー
頭の中は軽く…いや、かなりパニクっているのに、体は石像のようにピクリとも動かない上、言葉もうまく出てこない。
そんな私に構う事なく、ディは歩みを進めて、私の横に座った。
「コトネ、お疲れ様。今日の式は…楽しめたか?」
私の態度を気にする事なく優しく声を掛けてくれる。
「はい。」
「そうか。」
ディが私の両手をギュッと握って来る。
「コトネ。」
名を呼ばれて、ソロソロとディの方に顔を向ける。
「俺の名前は─エディオル=リアム=カルザイだ。」
「……リアム?」
「そう。その名前は、親と結婚相手しか知らない…知らせない─真名だ。覚えておいて欲しい。」
そう言って、ディは、私の指先にキスをした後フワリと微笑む。
「それで…コレが、聖女様達からのお祝いか?」
と、先程迄の優しい笑顔から一転し、ニヤリと笑うディ。
「はっ!忘れてました!!」
ー私、スケスケでディと向き合ってる!!ー
「そそそそうです!すみません!」
「何故謝る?」
「いや、あの、えっと…恥ずかしいからあまり見ないで下さい!!」
恥ずかしくて隠したいのに、ディに両手を掴まれているままなので、それもできない。
「見ない─と言う選択肢は無いからな。それに…今からもっと恥ずかしい事を…するしな。」
「なっ!!?」
ボンッと、爆発しそうな勢いで、更に顔…だけじゃなくて体全身が熱くなる。
「それに…白色のナイトドレスか…どうやって…俺の色に染めようか…」
「う…うぇっ……あのっ…おっお手柔らかに…お願いします!」
「…すまないが…それは約束は…でき兼ねる…。」
ーふぁいっ!?ー
スルリと、ディの指が私の頬を撫でる。そのディの目は、いつもよりも熱を持っているように見える。そのまま顔が近付いて来るのに合わせて、私も目蓋を閉じると触れるだけのキスをされた。
至近距離のままディが、両手で私の顔を包み込んで
「ようやく…コトネの全部を俺のモノにできる。もう、何があっても逃さないし、離してやらないからな。俺の全てをコトネにあげるから…俺もコトネの全てが欲しい。」
ギュウッ─と、心臓を鷲掴みにされたように痛くなる程、心臓がバクバクと騒ぎ出す。鼻の奥がツンとして、何故だが泣きたくなる程に…ディが愛おしい─と思った。
ディの手に、私の手を重ねて
「はい。私を…ディ─リアム…の色に…して下さい。」
ふにゃりと笑うと、そのまま引き寄せられて一気に深いキスをされた。いつもよりも激しくて、直ぐに力が抜ける。そうすると、ディが唇を離して、間を空けずに私をお姫様抱っこをしてベットへと移動して、私をソッとベットにおろして、また深いキスを繰り返しながら私を押し倒した。
時折、「コトネ」と、切なそうに名を呼ばれる。それに答えたくても、まともに息さえできなくて…答える代わりに、力の入らない手でディに必死にしがみつく。そんな私に
「はぁ─コトネ…可愛い──」
と囁き、どんどん私を追い詰めていく。
それでも、あくまでも、ディの手は優しい。私の反応を確かめながら、もう触れていない処は無いよね?─と言う位触れられて、最早恥ずかしがる暇も隙もない程に翻弄される。もう、何がなんだか…自分がどうなっているのかも分からなくなる。
「コトネ…もう…嫌がっても…止められないから…」
と、横たわっている私に覆い被さったまま、熱を帯びた青い瞳に見つめられて…既にグッタリしている私は、何とか片手をのばしてディの頬にソッと触れて
「止めなくて…良い…です…と言うか…止めないで…下さい…」
恥ずかしい気持ちを我慢して告げると
「──っ!バっ…コトネ……」
少し切羽詰まったようなディ。
そのままディの熱が、私をゆっくりと割り開いていく。
「──っ!」
あまりの痛みに唇をグッ噛み締めると「コトネ」と囁きながら、深いキスを繰り返す。そうすると口に力を入れられない分、ディにしがみついている手に更に力が入る。そうしているうちに、ディの動きが止まる。
「コトネ…大丈夫…じゃないよな?」
痛いやら嬉しいやら…何だか分からないけど、ポロポロと零れる涙をディが唇や指で拭ってくれる。時折優しく啄むようなキスを繰り返し、私の力が抜けたのを確認すると
「…もう…良いか?」
と尋ねられて、コクリと頷くと
「コトネ…愛してる──」
と囁かれると同時に、ディがゆっくりと動き出した。
最初こそ痛みを我慢するのに必死だった。
でも…その痛みより快感を拾える様になってからが……大変だった。抑えようとしても口から漏れる声や私の反応で、ディにも“もう大丈夫だ”と分かったんだろう。
「大丈夫…そうだな?」
と、微笑んだ───
何度も意識を失いそうになるのを耐えて、必死にディにしがみついて
「待って!!もう…ムリ……だから!」
と言ったところで─
「コトネ、可愛い。もっと、声を聞かせてくれ─」
と、嬉しそうに囁かれるだけだった。
そうして、私が意識を失う前─最後に目にしたのは、ディの未だに熱の篭った青い目と、カーテンの隙間から差し込んだ薄っすらとした光だった。