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1/1

――林檎――

[>初投稿です!

 題名の読みは、「しにたがり ピエロの コンチェルト」です



 

 

 

 「死のうかな」



 屋上で、遠い街を見つめながら彼女は小さく、ひとりごちた。

その独り言は、下方かほうで遊ぶ生徒達の雑音ノイズに消されていく。


「死のうかな」


2回目。

彼女は先ほどと同じ言葉を、ひとりごちた。

深緑モスグリーンの眸で遥か頭上を仰ぎ、シャクっと音を立てては

艶艶の真赤な林檎をかじる。

其双ふたつのに映る景色。

下方の道を見つめ、唐突に彼女は

一口だけ齧ったそれを、原型に途轍とてつもなく近い、というか殆ど原型のそれをくうに突き出し、伸ばした手で掴んでいたそれから、手を離した。


―――落下


 落ちていく林檎は、空気摩擦音を伴いながら

彼女の視界から離れていく。

彼女が林檎を投げ捨ててから、3秒も立ってない頃だ。


ぐしゃっ


という、音。


赤い物体は目に映らぬ速さで、砕け。

それはぐしゃぐしゃで、殆ど原型を留めていない。

果汁が飛び散る道路。

その数センチ先で、教師が腰を抜かしていた。

当たらなかったのが、奇跡とでもいおう。

通行人は、先でぐしゃぐしゃになった林檎と彼女を交互に見ながら、教師は彼女に何かを叫んでいる。

口の動きと、風にのって流れてくる声から、


「なにをしている。あぶない、はやくはなれなさい」


聞き取れた声は、微かに震えていた。

それを耳に彼女は小さく溜息を付く。


「・・めんどくさい」


そう呟いて、彼女は屋上と屋上の隅とを隔てるフェンスにもたれかかると同時に、

バァンとう重い音と同時に、警官がメガホンを持って

彼女の元に足早に近づいてきた。

さっき、下方でみた教師と一緒に。

メガホン越しに、警官は言う。


はやく戻ってきなさい


しかし、「はやく戻ってきなさい」

という言葉は、彼女の耳を通り過ぎていくだけだった。

小さい口を動かしながら、彼女は呟く。


「See you again」



―――言って彼女は頭から

空を仰ぎながら

堕ちていった。

全てがスローモーションのように

ゆっくり ゆっくりと。

屋上から彼女を見て叫ぶ人達は遠く、離れていく。


窓越しの教室から、彼女を見つける人々の驚愕。

大口を開いて、彼女を指差す姿も遠い頭上だった。

ベランダが1つ、2つ、3つ

と数を減らしていく。


1秒間隔で其処を落下してく彼女の命もあと、2秒。

というところで、

彼女はゆっくり眸を閉じた。

視界が真暗に消え、空気摩擦音だけが耳と脳内に響いて


視界が本当に(・・・)真暗になった。





 

Next⇒―――道芸師が嗤う頃に―――



[>よんでくれてありがとうございます^p^

 コメントなども残していただけるとありがたい/////

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