海
まだ中学に上がる前の頃、家族4人で海水浴に行った。
父親は海の家で昼間からビール、母親は日に焼けたくないと言ってパラソルの下。
必然的に、お守りもかねて僕は2つ下の妹と遊ぶことになった。
妹は僕に懐いていたので、特に不満もなかった。
妹がビーチボールで遊びたいというので、二人で沖の方に出た。
僕の腰くらいの深さの場所でキャッチボールをする。
どれくらい経っただろうか。
ただのボール遊びに飽きた僕は、ふざけて力いっぱいにボールを投げた。
ビーチボールは弧を描き、妹の頭上を越えていく。
妹の後方に落ち、水面に漂う。
追いかける妹。海に吸い込まれるように波に流されていくボール。
その日から僕はずっと、妹の帰りを待っている……。