プロローグ
初めまして
マイペース投稿です┏○┓
今日、私シャーロット・ウォレスは親子ほど年の離れた男の元に売られる。
今日は朝から使用人達に男から送られてきたという、実に手触りの良いドレスを着せられ、顔には肌を白く見せる為に白粉を厚く塗られた。
他にもたくさん、肋が出た腹を隠すためや平らな胸を出す為に布を敷き詰め、血色の悪い手や足などの肌には顔同様白粉を塗った。
これら全ての準備が整う頃にはもう昼を過ぎていた。
外にはとっくに男の元からやって来たであろう豪華な馬車がいた。
親は一応見送りには来た。
『決して粗相をするな。お前は言うことだけを聞いていればいい』
と言うためだけに。
私はその言葉を聞いてもなんの感情も現れなかった。
ただ無機質な人形のように首を縦に降り馬車に乗り込んだ。
誰も居ない馬車の中でふと、自分の右腕に触れた。
とても、とても滑らかで触れる度に光輝く。
綺麗なその布に一瞬惚けてしまった。
今までこんな綺麗な布は触れた事がなかった。
いつもは着古し、汚れが目立ち、穴がいくつも開いたドレスとはかけ離れた服とは呼べない服を着ていた。
そう言えば今日初めてだった。
今日は一度も母に叩かれなかったし、父にも蔑むような目で見られなかった。
今日だけじゃない。これからずっと、もう二度とあの人達に会うことはない。顔も見ることはないし、声を聞くことも無い。
それだけでもう十分と言えるほどに幸せ。
私はもうこれ以上の幸せを何も望まない。
お金も、綺麗なドレスも、美味しいご飯も、綺麗な水も、立派な家も、家族も、友人も、愛情も。
だからどうか、誰からも大切にされませんように。