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食わず好き  作者: 忘西 いお。
1/1

1、日記

…シャッ シャッシャ シャッ シャッ シャッ シャッ

シャ____________________________________







2018年6月22日(金)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


私が初めて“それ“を自覚したのは、中学一年生の時だった。

だいぶんと暑さを増してきた太陽が、取り残された木々の赤みを描き変えていく。


そんな夏休みを目前にした学校で、

私はあの日の給食時間、教室中に妙な賑わいがあったのを今もぼんやりと思い出す。


妙な、というと、耳障りかもしれないが。

盛大とも旺盛とも言えないあのざわつきようを表現するには、今の私にはこれが一番的確だろうと思うのでそのまま素直に書き残しておくことにする。


それに、私にとってはその(あと)の事が何より

重要だろう。


それは起きることが決まっていたのか、それともそうではなかったのか…


あれから数年間、幾度も考える機会はあったけれど、結局はっきりした答えは見つからない。


あの日の私は、周囲から聞こえてくる話題に耳を傾けては、一人その情景を想像したり。はたまた全く関係のないことに考えを潜らせてみたり。

ときたま周りの子たちが楽しそうに話す言葉に相づちを打って、頷いて。


いつもと何か変わった事があるわけでもなかったはずだ


………




「「 ゆっちゃんは、何か夏休み予定あるの? 」」





だから、


いつも。


私は毎度毎度、この言葉にやはり戻ってきてしまうんだ。



この友達の何気ない問が、珍しくもあの日だけは私に向けられてしまったこと。

そして、本当にそれが予兆もなく突然に出現したということも。


何が、誰が。


こんな瞬間を夢見たのか。



はっと気づいて横を向く私と、それを待っていたであろう隣で少し首をかしげる彼女、


私は口ごもった。あの居たたまれない状況と慣れない急な問いかけのせいだと決めつけた。


本当は、目の前にあるこの空っぽな私を見つめたくなかっただけだったのに


どんなに考えても、過去を思い返しても。


ただ彼女の言葉が渦を巻いて、響いてくるだけ。

あの抑揚が、あの声色(こわいろ)が、


今も離れない




その瞬間から、私の頭は真っ黒に染まっていた。 夏休み が私の中から滑り落ちていった。


私には、 夏休み なんてものは無かった。私にだけ、元から存在すらもしなかったみたいだった。



ぼやけた給食の映像が突然再生されて、気持ちの悪さが私を優しく包みこむ。



皆食べていたから、こんなに楽しそうに食べているから、

私もきっと。


勝手に食べた気になっていたんだよね。

何も知らない(から)のお皿を前にして、


最初から、私のお皿に()()なんて乗ってなかったんだよね。






最後までお読み頂きありがとうございました。


突然ですが、皆さんは日記などお付けになられますか?

主のイメージでは、完全に几帳面な方しか書かれないようなものかと思う代物ですが…


たまにちょっと書いて読み返すとこんなこと書いたっけ?って自分でもびっくりするようなものも多くて、結構面白かったり。笑


*今後も後書きにはこんな感じで主の呟きやらを書いていこうかなと思います。主ペースでですが、良かったら次回もお楽しみ頂けたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほんの短い教室の中での主人公の心の情景が文章を読んでいて自分の感覚のように伝わりました。まるで自分もその教室にいて主人公達の近くにいるような。素敵な文章で好きです。 [気になる点] 友達の…
2020/11/24 03:57 退会済み
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