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創作お役立ち?

ヒーローランキング、これが私のヒーローだ

作者: NOMAR


 なまこ師匠こと、Gyo¥0様、ヒーローランキング企画主催、ありがとうございます。


 というわけけで、ヒーローランキング、好きなヒーローを並べて紹介してみよう。

 と、なって悩む。ヒーローってなんだ?

 いやまあ、強くてカッコ良くて正義の味方?

 しかしながら、振り返って見て心に残るヒーロー像というのが、イマイチはっきりしない。


 ヒーローとは何か? 

 記憶に残るヒーローってなんだろう? と、考えて出て来たのが以下になる。これ、ヒーローなのか? いや、これが私のヒーローです。


 まあいいや、ノマの私的なヒーローランキング、ご紹介させていただきます。


 おっと、ヒーロー紹介の中に作品のネタバレを含むので、注意して欲しい。では並べてみよう。


 私のヒーロー、虚無の前に立った男達だ。



■第五位


 物部(もののべ)(けい)


 小説『Dクラッカーズ』


 物部景は麻薬中毒の悪魔使い。カプセルと呼ばれる麻薬が蔓延する街、葛根東。そのカプセルには不思議な力があった。飲むことで悪魔を呼び出し従えるドラッグ。

 物部(もののべ)(けい)は、ウィザードと呼ばれる伝説の悪魔使い。


「僕は自分の意志でここにいる」


 七年ぶりに姫木梓と再会した物部景。姫木梓が見たのは、すっかりドラッグジャンキーとなり、カプセルにその身を蝕まれて変貌した幼なじみの物部景。

 精神をカプセルと悪魔に蝕まれながらも、物部景には決着をつかなければならない相手がいる。

 ウィザードの従える悪魔、影の騎士と無慈悲な女王、その因縁。姫木梓が忘れた過去に、物部景の戦う理由がある。

 かつての幼馴染み、姫木梓との思い出の為に、悪魔に魂をかじられながら、カプセルの乱用から麻薬中毒で身体を壊しながら、それでも物部景は影の騎士を従え悪魔と戦う。


 カプセルを飲まねば悪魔は見えず、街の闇の中でカプセルジャンキーが悪魔と踊る。物部景は過去に決着をつけるべく、カプセルを口の中で噛み潰す。カプセルのもたらす興奮と快楽と悪魔のもたらす悪夢の世界。

 社会からドロップアウトした麻薬中毒者が、悪魔に侵される街を救う。

 ドラッグデビルバトルヒーロー。



■第四位


 主人公


 ゲーム『バロック 歪んだ妄想』


 主人公に名前は無い。記憶は無い。自分が誰かもわからない。何も憶えていない。喋ることも満足にできない。

 憶えているのは『罪の意識』だけ。

 

 全てを歪める大熱波が世界を変え、ありとあらゆるものが歪んだ世界。異形の蔓延る時代。

 生きる者は全てが歪んだ妄想(バロック)に囚われている。


『神経塔へ行け』

『使え、お前が使うことに意味がある』


 上級天使が天使銃を渡す。過去の記憶の無い主人公は、胸を押し潰す罪悪感に押されて、神経塔へと向かう。


 神経塔へと向かう。異形に殺される。目覚める。神経塔に向かう。異形に殺される。また目覚める。繰り返す、繰り返す、繰り返す。

 神経塔の中で過去の記憶がフラッシュバックし、少しずつ主人公は世界を思い出していく。

 神経塔の奥で待つのは、痛みを奪われた創造維持神。わずかに思い出した記憶と重なる姿。


『狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで』

「世界を救うよりぼくはきみがたいせつだ」


 永劫の慟哭を与えられた少年。無限に続く狂気の世界の中で、一人の少女を救う為に。

 あぁ、われらの主あらざる多重神格者よ。

 歪んだ妄想(バロック)は全ての者の心の中に。



■第三位


 レメディウス


 小説『灰よ、龍に告げよ されど罪人は竜と踊る2』


 完全記憶保持者の天才咒式博士。咒式を世のため、人のために使おうという優しく高潔なる天才。

 レメディウスは反体制組織に誘拐される。

 しかし、反体制組織で過ごすうちに、独裁者の悪政と共和国の惨状を知る。

 己を拐った反体制組織の少女と恋仲になるレメディウス。

 レメディウスは少女と共に、共和国政府に誘拐され拷問を受ける。

 放逐され、飢えに苦しむ中で次々と仲間が死ぬ。少女は自分の身体を食べるようにレメディウスに言い、自殺する。


「これでナリシアのすべては僕の中だ」


 レメディウスは人喰い竜の名を名乗り、大量虐殺咒式を使う過激な革命家へと変貌する。咒式という技術を、世のため人のためにと研究していた心優しき正義の博士。

 愛が狂気に変わるとき、優しい天才はテロリストになる以外の道は、見えなかった。



■第二位


 (かすか)


 小説『猫の地球儀』


 かつては人の住んでいたスペースコロニー。今はもう人はいない。人は絶滅した。

 トルクと呼ばれるスペースコロニーに住むのは、知性を持った猫とロボットだけ。

 猫たちは地球を死者の魂の行くところと信仰していた。


 (かすか)は三十七番目のスカイウォーカー。スカイウォーカーとは、宇宙を飛び、地球儀に降り立つことを夢見る猫。生きて地球を目指す猫、(かすか)

 信仰の対象である地球儀に生きて辿り着こうとするのは禁忌。スカイウォーカーは見つかり次第、僧侶に処刑されてきた。


 強者が、天才が、その思いを貫くとき、弱者が代償となる。

 夢を見ることは罪となり、己が己であろうとすることは悪となる。

 それでも、行き詰った世界の中で生きる猫の中には、どうしようもなく強い思いがわき上がる猫がいる。

 たとえ罪悪であろうとも、(かすか)が地球儀を目指す想いは止められない。


 互いに譲れぬ信念の為に、(かすか)(ほむら)が対決するとき、ひとつの命が喪われる。


『それでも地球は回っている』


 かつての地球で、神の教えに逆らう学問を追求した男が呟いたという言葉。真理を求めて払った代償はなんだったのか。

 スカイウォーカーの三十七番、(かすか)はトルクから、宇宙に浮かぶ地球儀を見つめる。一匹の黒猫が、地球儀に降りる小さな船に乗り込む。

 あしたは、晴れるでしょう。



■第一位


 アーヴィング・ナイトウォーカー


 小説『ブラッドジャケット』 


 積層都市ケイオス・ヘキサの最下層。

 青年アーヴィーは屍体蘇生業という仕事をしていた。寝たきりの母を介護しながら、暮らしていた。

 人が人として扱われないような、混沌の都市の最下層。そこでバラバラに損壊した死体の形を、綺麗に整える仕事を毎日こなしていた。

 死体の形を綺麗に整える、そんな仕事に必要な資格を取る試験の為に、疲れた身体で勉強する。資格を取れば給料が少し上がると、社長が言ったから。

 真面目に、不器用に、ひたむきに、己にできることを、淡々と。最愛の母を介護しながら、青年アーヴィーは、貧しく慎ましく暮らしていた。


 自覚の無いままに、すり減っていく精神。知らないうちに、削られていった感情。

 職場の先輩は起き上がった死体に食い殺された。

 最愛の母は、吸血鬼に噛まれて、自分で撃ち殺した。母を殺してどこか壊れた青年アーヴィーは、最下層で殺人を犯す。


 アーヴィーは左手を失い、出血で死にかけたところを救われた。一人の少女に。そしてアーヴィーと少女は、二人組の強盗になる。

 父親に命を狙われる少女が、青年アーヴィーの唯一の心の拠り所になる。強盗で金を貯めて、街を脱出しようとする二人。

 だが、命の恩人で、唯一の心の救いであった少女は、青年アーヴィーの目の前で殺される。下半身を失った少女の死体を抱えて、青年アーヴィーはEマグナムの引き金を引き続ける。


 何もかも失っていく、消えていく。社会の底辺で、他人に振り回され、不器用に生きた真面目な青年は、生きる動機であった母をその手で殺し、街で人を殺し、左手を失い、生きる支えとなった愛する少女を失った。


 これは吸血鬼殲滅部隊(ブラッドジャケット)隊長、アーヴィング・ナイトウォーカーの誕生秘話。

 混沌の街の中で狂騒の虚無に心を食い尽くされた男の物語。



◇◇◇◇◇


 ヒーローと言うには何か違う気もするが、私の記憶に残るヒーローとは、こういうものになるらしい。


 正義を行えば世界の半分を怒らせる。

 罪人とならねば誰かを救うことはできない。

 感情の喪失が新たな思想を産み出すのなら、正義とは数多の骸の山からしか、産まれない。


 絶望の虚無の前に心を食われ、それでも前に踏み出した男。もはや、そこにしか足を進めることしかできなかった男たち。


 それが、ヒーローなのではないだろうか。


◇◇◇◇◇


1位

 アーヴィング・ナイトウォーカー

 小説『ブラッドジャケット』


2位

 (かすか)、スカイウォーカーの三十七番

 小説『猫の地球儀』


3位

 レメディウス

 小説『灰よ、龍に告げよ されど罪人は竜と踊る2』


4位

 名も無き主人公

 ゲーム『バロック 歪んだ妄想』


5位

 ウィザード、物部(もののべ)(けい)

 小説『Dクラッカーズ』



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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒーローランキングから来ました。 知らない作品ばかりでしたが、読んでるだけで目頭が熱くなるランキングですね。 影のある世界観、影のあるヒーロー。 獄炎に身を焦がしながらも、それでも前を向…
[一言] おじゃまします。 残念ながらランキングの中に私の知っている名前は無かったのですが。 彼らに感情移入すると苦しいだろうなあ。 でも、その苦しさが気持ち良いかもしれないなあ。 そんなふうに…
[良い点] 通りすがりのヒーローランク参加者が失礼します。 初めて見る作品名ですが、虚無の前に立った男達の後に綴られた解説に惹きつけられ、どの作品もとても読ませてくれる文章でした。 こんな面白い作品が…
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