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6.結婚式の花嫁と花婿



観花会のアルフレッド様は黒を基調としてポイントに紫色をあしらった衣装が、引き締まった体躯にとても格好良かったですわ。

私の瞳と同じ紫色が彼を彩っているのがこんなに嬉しいなんて初めてですわ。

第二王子の時?

忘れましたわ。そんな昔の事は。

そんな事よりも、アルフレッド様を見て驚く皆の姿に胸がすく思いでしたわ。

そうでしょう。

そうでしょう。

アルフレッド様はカッコイイのよ。

王太子殿下やカルバン殿下のような華やかな美形ではないけれど、穏やかで優しげで、そう、癒し系ですわ!

痩せた上に鍛えられているので以前よりも精悍になりましたけれど、性格の優しさが滲み出ていて、もう本当に大型犬のような可愛らしさとカッコ良さがありますの。

親バカ陛下は元より、側妃様とカルバン殿下の顔は見ものでしたわ。扇子の裏で、笑みが止まりませんでしたわ。

外見だけではなく中身は更に素敵ですのよ!


その日、アルフレッド様が空に放った魔法はキラキラと光が煌きながら空から降り注ぎ、夢のように綺麗でした。

コッソリと「マグノリアをイメージしてみた」なんて囁くんですもの。

もう。照れてしまいますわ。


素敵な旦那様(予定)のお披露目も終わりましたし、カルバン殿下を結婚式に招待しなくても良いのですが、結婚式のアルフレッド様は更に素敵になっているはずですもの。仕方ないから見せて差し上げますわ。

ご自分の参考になさったら?

まぁ、でも元が元ですもの。足元にも及びませんわね。



結婚式の当日は晴れ渡るような秋晴れとなりました。

私は早朝から大聖堂にて支度をしています。

純白のウエディングドレスを身に纏い、化粧も終えてヴェールとティアラを身に付けるだけなのですが、心配な事が一つ。


アルフレッド様がまだお着きにならないのです。

出立が遅れそうだけど、ちゃんと間に合わせるからと事前に連絡は頂きましたが当日になってもまだいらしてないなんて。

何かあったのかしら。

昨日から心配で食事も喉を通らないし、なんとか睡眠だけは取りましたが、今朝になってもまだ到着されておりません。

シャーリーや他の侍女が気を紛らわそうとしてくれますが、ため息ばかりがでてしまいます。

やはり外に出て待っていようかと思っていたら、バタバタと騒がしい音と共に侍女の一人が入室しシャーリーに話しかけました。

二、三言葉を交わすと、シャーリーが笑顔で「辺境伯様が到着されたそうですわ」と伝えてくれました。

心から安堵して準備を続けたのですが、まさか予想外の事態が起こっているとは思ってもみませんでしたわ。



――――――――――――――――――――――――



結婚式に間に合うように余裕を見て4日前には出発するはずだったのに、魔獣が発生したり、盗賊団が出たり、温泉が湧き出したり、ちょと忙しい事が続いて、やっと2日前に片付いたと思ったら来客があった。


「なにしてんの……」


おっと、思わず素が出た。

頭の痛い来客を説得しようにも時間はないし、両親は先に王都に行ってるし、クラウドは「諦めが肝心だよ」なんてアドバイスにならない事を言うし。

もう、なるようになる!と出発した。


開き直って、王都に着いたのが当日の朝。

まぁ、予想通りに大聖堂付近を大混乱させたよ。

ごめんね、としか言いようがない。一緒に来た来客は楽し気に笑ってたけど、笑い事じゃないからね。


「アルフレッド。これはなんの騒ぎ…だ…」


招待客の王太子が大聖堂から出てきた途端に驚いて固まった。

あー、うん。説明いるよね。

ぶっちゃけると、来客があって遅刻しそうだったから一緒に来ちゃったって感じなんだけど。納得してくれるかな。


「よう小倅。親父は息災か?」


原因の方は僕の心情なんてお構いなしに話し始めるし…。

ほら王太子も驚いてるじゃん。


「アルフ。何をしている、サッサっと嫁のとこに案内せぬか」

「しませんよ。式の前まで会えない決まりなんです」

「なんじゃ、つまらぬな。仕方ない。小倅、至急に我の席を用意せよ。主らは待機じゃ、手筈通りに、な」

「はっ!滞りなく」

「だから、勝手に〜」


宥めようとしたら、大聖堂の神官に着替えないと時間がないと急かされる。

あー、もう!いいや。なんとかなるだろ。


「王太子殿下。すみません。言い出したら聞かない人なんで、席お願いします。後、陛下への報告とか諸々お願いしますね」


視界の端でうちの両親が来てるのが見えたからなんとかなるだろうと、王太子殿下に丸投げして控え室に急いだ。

後ろで何か色々言ってるけど、ごめんね。マグノリアとの結婚式の方が大事です。王太子は有能だから大丈夫だよ、うん。


なんとか準備を終えて、時間には間に合った。ギリギリの一歩手前ぐらい?え?違う?ごめん。

神官に急かされて控え室を出て、大聖堂の大扉の前で待機。

ここでようやく花嫁に会える。大扉から二人して入場して神の祝福を貰い、出席者に祝福されて大聖堂の大階段を降りて馬車で新居に帰るのが普通の流れ。

今回は、侯爵家で披露宴をするので、侯爵家に帰って後日うちの王都の屋敷によってから領地に帰る予定。

予定なんだけど、イレギュラーが多すぎて無事に終わるかすごい不安。

久々に悩んでいると靴音が聞こえたので顔を向けると、純白のウエディングドレスを着たマグノリアが歩いてきた。


「…………………」


可愛いとか、綺麗とか、なんだろう、言葉が出ない。

ただ、近づいてくるマグノリアを茫然と見ている事しかできなかった。

ようやく隣に来るとヴェール越しに目を丸くして驚いた顔をしている。その後、くすりと笑ってハンカチを差し出してくれた。


「もぅ。どうしてアルフレッド様が泣くんですか」


ハンカチで軽く押さえられて、初めて自分が泣いているのが分かった。


「ごめん。なんか、幸せすぎて、嬉しくて、マグノリアが、とても綺麗で…」

「もぅ。私が泣けないじゃありませんか。仕方のない人ね」

「う〜、ごめん」


なんとか気合で涙を止める。

情けないなぁ。と凹んでたら「そんな可愛らしいところも好きですわ」と笑ってくれた。

もう泣かすのやめて欲しい。


「マグノリア。愛してる。この先もずっと僕と幸せになって」


キスはできないから、手袋越しに手の甲に誓いのキスを贈る。


「ええ、一緒に幸せになりましょう。私も愛してますわ」


取っていた手をくるりと返し、僕の手を捧げ持つようにして軽く自分の額に当てて宣誓してくれた。

目が合って二人で微笑んでいると、後ろにいた神官から「誓いは神の御前でお願いします」と空咳の後に言われた。

ごめーん。

姿勢を正して、大扉に二人で向き直る。

あ、そうだ。言い忘れてた。


「言い忘れてたけど、魔王陛下が参列する事になったんだけど、驚かないでね」









「……………………は?」




そして、大扉が静かに開き、僕たちの結婚式が始まった。





まぁ、その後、式は無事に終了。式はね。

大聖堂の大階段の前にずらっと並んだドラゴンと乗り手の魔人さんたちがお祝いの飛行を見せてくれたり、大階段を横抱きにして降りて馬車ならぬ友達のドラゴンに乗って王都を一回りして侯爵家に帰ったり、魔王陛下が披露宴にまでやってくるから、陛下たちも参加する事になったりして大騒ぎだった。

王太子から自分の時よりも派手じゃないかと文句を言われたけど、僕のせいじゃないよ?

そんな賑やかで楽しかった結婚式を終えて、夫婦になった僕らは幸せに暮らしてる。

大変な事もあるけど、マグノリアと一緒にいる事が幸せだから大丈夫。



家族の増えた幸せな僕らの話、聞きたい?

お茶菓子を用意して待ってるからまたおいで。

その時は貴方の幸せな話も聞かせてね。




※終わり*

これで、一応2人の話は終わりです。


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