No.0001
それはいきなり、透き通るような、まるで楽器の音色でも聞いているかのような深い安心感のある声だった。
その声が、少年の首筋に……今、投げかけられたのだ。
「えっ?」
彼はあまりの驚きと興奮に全身の毛が逆立った。
背中に冷や水を掛けられ、血液が逆流するような感覚に陥ったが、すぐに声をかけてきた人物が自分の後ろにいる事に気づき素早く振り向いた。
立っていたのは少女であった。
「ねえ、そんなに魅力的なの? 絵の中の私って」
そこで少年は息を飲んだ。
今、目の前にいる少女は確かにその絵の人物と同一人物であった訳だが、絵で見るよりも格段にその勿体ないほどの美貌を放っていた。
「うん。とっても可愛いよ」
少年は恥じらうように、照れ笑いをしながらそう答えた。
「ふふ、うれしい……その絵ね、前にも君みたいにこの場所を訪れた子がいたの。その子に描いてもらったんだ」
少女はどこか遠い目をしながら、囁くようにそう言った。
「へえ、前にも……その子は、どういう人だったの? 絵を見る限り、とても才能に溢れた子だったんだろうね」
「そうだよ。とても純粋で、才能に満ち溢れていて、おしとやかで、強くて、優し人」
うっとりとしながら語る少女の目には、いささかその人物の面影が浮き出ているように感じられた。
「ねえ」
少年は言葉を発した。
その声に反応した少女は少年の瞳をジッっと見つめる。
そのあまりにもあどけなく、純粋な瞳に見つめられた少年の胸はドクリと脈を強く打った。
熱い血液は彼の全身にふつふつと送り出されて、それがたまらなく心地よかった。
「なあに?」
「……ここ、どこなの?」