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シャイニング・ガール   作者: 花奈よりこ
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7年

第2章


「ちょっと。立花さん」




奥のラックの服をキレイにかけ直していたあたしを、店長が呼び止めた。


「あ、はい」


手を止めて店長のいるレジに行くと、例の冷たい声で、またいつものお小言が始まった。


「立花さん。もうこの店に来て3ヶ月だよね」


「はい」


「立花さんの個人売上表。全然伸びてないんだけど」


「はぁ……」


「ハッキリ言って。立花さんが来てから、店の売り上げ下がってんの」


そう言いながら、店長が今月の売り上表をあたしに見せてきた。


「もっと真剣にやってくれないと困るんだけど」


「はぁ……」



よく言うぜ。


あたしが接客したお客さんがいざ買おうってなった時に、横から入ってきて人の売り上げ横取りしてんのは、どこの誰ですかって話だよ。


この、キツネ目の性悪インチキ店長め。


あたしはいつだって一生懸命やってますよ。


サボってんのは自分だろうが。


てやんでぇバーローちくしょー!


あたしは、頭の中で思いっ切り店長に蹴りをかましてやった。




ここは、街の中心部の大通りに面したファッションビルの3階ーーー。


その一角のショップで、あたしは販売員として働いている。





高校を卒業してから、早7年。


服が大好きだったあたしは、高校を出たあと、服飾の専門学校に入学したの。


やっと自分の好きなこと、やりたいことが見つかってさ。


服に関わる仕事につきたいと思って、専門学校で2年間ファッションについていろいろ勉強して、卒業後は念願だったショップの販売員になったんだ。


だけど。


これが、想像以上にキツイ仕事でさー。


ノルマはあるわ、人間関係も女特有のドロドロ劇があるわで、なかなか一筋縄ではいかなくてさ。


でも、あたしはやっぱり服が好きだし、オシャレも好きだし、お客さんが嬉しそうに新しい服を買って帰る姿を見るのも好きだったから。


何度か職場を変えながらも、ずっとショップの販売員の仕事を続けてるんだけど。


どうにもこうにもあたしの行くとこ行くとこ、人間関係に恵まれないというか。


店長に恵まれないというか……。


なんだか、折が合わない上に、根本的に性悪な店長ばっかでさー。


あたしもこの性格上、好きでもない性悪なヤツらにヘラヘラおべっかつかったりするのができないタチだから、それが余計鼻につくらしい。


気づくと、なんだかんだと理不尽な言いがかりをつけたがるお姉様方の標的にされている気がする。


昔は、年下の女子達から熱烈に好かれて困ってたもんだけど、今は年上の女子達(性悪店長ども)からなんだか嫌われて。


ホントあたしって極端な人生を送ってるってカンジだわ。


そんなわけで、店長からはプチ嫌がらせ&小言連発の毎日で。


さすがのあたしも、日々ストレス溜まるってなわけよ。


ここの前に働いてた店ではさ、店長よりもあたしの方が顧客も多かった上に、売り上げも多かったもんだから、店長がどうにもこうにもあたしのことを気に入らなかったみたいで。


あることないこと社長に吹き込んで、なんにも悪いことしてないあたしがいつの間にか悪者にされて、わけがわからない理由でいきなりクビにされて。


もう、理不尽なことが多すぎて頭にくるぜ。


あたしは一生懸命仕事してただけなのに。


全くひどい仕打ちだぜ。



それから。


前からけっこう好きだったここの服屋の面接を受けて、見事受かって働き出したんだけど。


ここもご覧のとおりの店長で。


ホント。なんだかなぁ……ってことばっか。


まぁ、唯一よかったことと言えば。


店長と同じくらいこの店で働いてる、2つ年上の〝菜々子さん〟がとってもいい人だったってことかな。


優しくてキレイで、ホントにいい人なんだよ。


いちばん年上の店長より、菜々子さんの方が断然ステキなお姉さんってカンジ。


性悪店長とは大違いだぜ。


むしろ、菜々子さんの方が店長にふさわしいくらいだよ。


その菜々子さんが、新人のあたしにも優しく丁寧にいろいろ教えてくれて、仕事以外の話もたくさんしてるうちにすっかり意気投合しちゃって。


今ではすっかり仲良しなんだ。


菜々子さんもあたしと同じで、この性悪店長のことは昔からずっと好きではないみたいでさ。


だから、あたしの気持ちもすごくわかってくれるの。


言いたいことも素直に言えて、そして聴いてくれる味方の先輩がいてくれるっていうのは、ホントにありがたいことだよ。


菜々子さんがいてくれるから、一緒にこのお店がんばろうって思ってるんだ。


ひとり暮らしだし、働かないとね。




20歳になってからひとり暮らしを始めて、今年でちょうど5年目。


小さな1LDKのアパート。


5年目ともなると、ひとり暮らしの生活にもすっかり慣れるものね。


大概のことは自分でできるようになって、今は不自由なく生活できてるよ。


だけど……。


夜ね。


ひとりになると、今でも思い出すんだ。



桜庭のことーーーーーーー。



この7年。


あたしの中に、桜庭はずっといたよ。


桜庭のことを考えない日はただの一度もなかったよ。



突然の別れを告げられらた、


高3のあの夜ーーーー。


その数日後、桜庭はなにも言わずに長野へと行ってしまったの。


でも、あたしはあの夜の桜庭の言葉を信じていたんだ。



〝落ち着いたら、必ず連絡するからーーー〟



そう言った桜庭の言葉を。


真っ直ぐな瞳を。


あたしは信じていたんだ。


会えなくても、ちゃんと2人の心は繋がってるって。



でも。


しばらく経っても、桜庭からの連絡は来なかったんだ。


あたしは、寂しくて、恋しくて。


桜庭に会いたくてたまらなかったんだ。



せめて、声だけでも聴きたいーーーー。



そう思って、何度も電話しようとしたよ。


だけど……事情が事情なだけに、向こうでもいろいろ大変なんだろうってことは十分わかっていたから。


だから、桜庭への電話もずっと我慢してたんだ。


たぶん、いろいろあって連絡できない理由があるんだ。


落ち着いたら、きっとそのうち桜庭の方から連絡してきてくれる。



きっとーーーーー。



あたしは、そう信じて待っていたの。


でも。


待っても待っても。


あたしのケータイに、桜庭からの電話がかかってくることはなかったんだ。


だけど、桜庭への想いは募るばかりで。


苦しくて苦しくてーーーーー。



数ヶ月経ったある日。


あたしは、思い切って震える手で桜庭のケータイに電話をかけてみたんだ。


ドキドキ高鳴る胸。


だけどーーー。


聞こえてきたのは桜庭の声ではなく、電話の音声アナウンスだった。



その日から、何度かけても。


『電波の届かないところにいるか、電源が入っていないためかかりません』の音声が聞こえてくるだけで。


桜庭とは、全く連絡が取れなくなっていたんだ。


メールを送っても返事はこない。


ちゃんと届いてるのかさえもわからないまま。



月日だけが、どんどん過ぎていったんだ。









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